むぎ光葉

20代。エッセイや詩を書いています。 好奇心旺盛な、のんびりした人間です。

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  • 自由なエッセイ

    思うままにつらつら書いたエッセイです。

  • 漢字エッセイ

    漢字一字から溢れるイメージで書いたエッセイです。

記事一覧

詩 そらのびる

もわっとした空気に うとうとうと 慌てて非常階段へ 都会の空は 狭いはずだった けれど今日は ビルとビルの間に 空(そら)のビルがある 狭い空間を突っ切って どんなビル…

むぎ光葉
2週間前
15

詩 ガラスの向こうの

雨降り 駐車場 わたしのもうひとつの部屋 雨から守ってくれる ガラスの向こうの景色がゆがむ 昨日の人の顔を思い出す わたしたちと喋ってたけど ほとんどもうひとりの方見…

むぎ光葉
1か月前
15

詩 浮かぶ教室

窓ガラスの向こう 机ならべて椅子に座って 浮かぶわたしたち 鏡みたいな ふたつの教室 ぼーっとしていると 皆がどこかに 引いている蛍光ペン 慌てて隣を盗み見て 本当の教…

むぎ光葉
2か月前
16

詩 イントロ

イントロのギターリフ 聞こえてきたよ 揺れる波は 鼓動と共鳴する ライブの音源 思い出したい記憶は はじめから無くて はじめからある 何もない記憶 前にも後ろにも どこ…

むぎ光葉
3か月前
18

詩 窓

窓の外には 海が広がる 光が水面を キラキラに化粧する 窓の中には 部屋が広がる 仕方なく使ってる 小さめの古い棚に 埃が今も積もってる 窓の額の中は外 窓の額の外は中…

むぎ光葉
4か月前
21

詩 揺らめき

朝の光 雑貨屋さんで 見つけた指輪 わたしの指で きらきらひかる 冬の間の 低い日差しを 集めるように わたしに届く 光の届く場所に いれば傷んでくるけれど お気に入り…

むぎ光葉
5か月前
20

詩 雨雲と傘

晴れた空に 油断していた 振り向くと 向こう側で雷雨 雲はもうそこにあり 子どもたちは 公園からいなくなった わたしは近くの カフェで雨宿り ティーラテひとつに ガレッ…

むぎ光葉
6か月前
19

詩 ひつじ雲

ファミレスの 窓の隙間から のぞくひつじ雲が 美しかった すぐに忘れてしまいそうな パーツを綴り 生活の手触りを 確かめている 心地よいものを 長く共にしたい みんな…

むぎ光葉
8か月前
27

詩 おめかし

駐輪場のハンガーが おめかしする日 髪についた水滴 振り払いながら いつもの場所へ 急ぎ足は 水たまりの水しぶき ステップ軽やかに 水滴が乾いた頃には くるくると 踊…

むぎ光葉
9か月前
19

詩 朝の海

誰もいない砂浜に ござを敷く 今日買った ジェノベーゼパン 昨日買った りんごジュース 海を見ながら 朝ごはん 貝殻 飛行機 灯台 太陽 ほんとうに 素敵なものは 教えら…

むぎ光葉
9か月前
26

詩 日の出と

太陽はひとつ 今日も顔を出す じわーっ 「どこで見ても同じだよ」 そうかもしれないけれど その地で 顔を見た瞬間に 感じたものは いつも初めてで 思いがけない 気持ち …

むぎ光葉
9か月前
20

詩 庭園

形のちがう石を 渡って歩く 向こう岸までは もうすぐか 鯉にえさを あげる人 楽しそうにしてる ひとつずつ ひとつずつ 途切れながらも 次がある よく出来た橋よりも 趣…

むぎ光葉
9か月前
20

詩 追い越していく

貨物列車を 追い越していく ピンク色の 空があたりを 包むころ 今が記憶を 追い越していく 電車の窓から 馴染んだ文字 見えるころ あの子が働くビルを 追い越していく 灯…

むぎ光葉
10か月前
12

詩 対話

視線の先 助けを求める 彼女はもう いつかの時代の人 生きることは 苦しさとともに 名前もない 時代背景を 語る多くの中の ひとり いつかどこかのまちで 照らされ誰かの…

むぎ光葉
10か月前
15

詩 幻と

書店の隅で 読んでた雑誌は もう消えた 在ったもの 辿ると わたしだけの時間 パッケージされてるような いつのまにか 変わっていた 世の中に 気付かなかったのは わたし…

むぎ光葉
10か月前
22

詩 言えなかったら

あの日先生に 言えなかった言葉 あの日友達に 言えなかった言葉 あの日教室で 言えなかった言葉 今日をもって 笑顔に変わる あの日の言葉 わ になって話すと色がつき い…

むぎ光葉
10か月前
18
詩 そらのびる

詩 そらのびる

もわっとした空気に
うとうとうと
慌てて非常階段へ

都会の空は
狭いはずだった
けれど今日は
ビルとビルの間に
空(そら)のビルがある
狭い空間を突っ切って
どんなビルより高い

こうして
都会のなかで
大きな自然を
くりぬいた

詩 ガラスの向こうの

詩 ガラスの向こうの

雨降り
駐車場
わたしのもうひとつの部屋
雨から守ってくれる
ガラスの向こうの景色がゆがむ

昨日の人の顔を思い出す
わたしたちと喋ってたけど
ほとんどもうひとりの方見てた

合わない目線を追いかけて
合わない空気に笑みを浮かべて
合わない温度設定が
わたしの頭ボーッとさせてく

今日はエアコン
入れなくても
ちょうどいい温度
まだまだ居場所を探せるね
雨よ
どんどん降ってくれ
薄い車体に打ち付け

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詩 浮かぶ教室

詩 浮かぶ教室

窓ガラスの向こう
机ならべて椅子に座って
浮かぶわたしたち
鏡みたいな
ふたつの教室

ぼーっとしていると
皆がどこかに
引いている蛍光ペン
慌てて隣を盗み見て
本当の教室に
世界は戻る

先生の言葉ひとつから
想像の蜘蛛の巣は
どこまでも広がった

どこにも行けなくても
教室で旅をし続けた

豊かな時間は
小さな机に
いつもこうして
はりついている

詩 イントロ

詩 イントロ

イントロのギターリフ
聞こえてきたよ
揺れる波は
鼓動と共鳴する
ライブの音源

思い出したい記憶は
はじめから無くて
はじめからある
何もない記憶

前にも後ろにも
どこにも行かず
ここにいることを
揺らぎの中で
寂しく知る

気持ちだけが
ゆらりゆらり
いまの位置を高めて
いつしか大人に
なっていった

寂しいと思う
記憶があってよかった
そんな風に
思う日を
待ちながら

歩いている
音の波

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詩 窓

詩 窓

窓の外には
海が広がる
光が水面を
キラキラに化粧する

窓の中には
部屋が広がる
仕方なく使ってる
小さめの古い棚に
埃が今も積もってる

窓の額の中は外
窓の額の外は中

遠くの美しさに
気がついているのなら
遠くの美しさも
眺めているようだ
こちらの絵を

誰かの憧れがあって
夢があって
時間だけが紡ぐ
物語があって

泣き笑いのなかの
キラキラに化粧した
窓辺に今も
佇んでいる

詩 揺らめき

詩 揺らめき

朝の光
雑貨屋さんで
見つけた指輪
わたしの指で
きらきらひかる

冬の間の
低い日差しを
集めるように
わたしに届く

光の届く場所に
いれば傷んでくるけれど
お気に入りを
身につけていたい
日の当たる場所
傷ついても
探している

きらきら
とても
美しい
色には
あらわせない
心のなかの色が
また揺れて

詩 雨雲と傘

詩 雨雲と傘

晴れた空に
油断していた
振り向くと
向こう側で雷雨

雲はもうそこにあり
子どもたちは
公園からいなくなった

わたしは近くの
カフェで雨宿り
ティーラテひとつに
ガレットひとつ

窓辺のソファ席
深く腰かけ
外を見ながら
大人の贅沢
味わってる

今こうして
雨を避ける
屋根を買った
甘いものを口にする
権利を買った
リラックスした時間を過ごす
ソファを買った

避けるもの
たくさん買えるのも

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詩 ひつじ雲

詩 ひつじ雲

ファミレスの
窓の隙間から
のぞくひつじ雲が
美しかった

すぐに忘れてしまいそうな
パーツを綴り
生活の手触りを
確かめている

心地よいものを
長く共にしたい

みんなが違うもの
好んでいるから
いろんな素材に
溢れている

いつも変わる
美しい組み合わせ
揺れ動きを楽しむ
心がぽわんと
浮いてる空

詩 おめかし

詩 おめかし

駐輪場のハンガーが
おめかしする日

髪についた水滴
振り払いながら
いつもの場所へ

急ぎ足は
水たまりの水しぶき
ステップ軽やかに

水滴が乾いた頃には
くるくると
踊っている毛先

部屋の外
静かに騒がしく
音楽は続いている

おめかしして
ステップ
踊っている
音楽と

今度はいつだろう
どうせまた
踊るのだから
おめかししなくちゃと
ハンガーと約束する

詩 朝の海

詩 朝の海

誰もいない砂浜に
ござを敷く
今日買った
ジェノベーゼパン
昨日買った
りんごジュース

海を見ながら
朝ごはん

貝殻
飛行機
灯台
太陽

ほんとうに
素敵なものは
教えられない

素敵なままで
わたしのこころを
まもるのだ

詩 日の出と

詩 日の出と

太陽はひとつ
今日も顔を出す
じわーっ

「どこで見ても同じだよ」
そうかもしれないけれど

その地で
顔を見た瞬間に
感じたものは

いつも初めてで
思いがけない
気持ち

胸の中にひろがる
宇宙にいま
きらりと想いを巡らせる

壮大で繊細な
ひとりであること
思い出し
日の出としばらく佇むころ

詩 庭園

詩 庭園

形のちがう石を
渡って歩く
向こう岸までは
もうすぐか

鯉にえさを
あげる人
楽しそうにしてる

ひとつずつ
ひとつずつ
途切れながらも
次がある

よく出来た橋よりも
趣のある形を
渡りたい
楽しそうだからと
選べるうちは
選んでる

向こう岸に
辿り着くまでは
不安定の美しい
調べにのせて
軽やかに

詩 追い越していく

詩 追い越していく

貨物列車を
追い越していく
ピンク色の
空があたりを
包むころ

今が記憶を
追い越していく
電車の窓から
馴染んだ文字
見えるころ

あの子が働くビルを
追い越していく
灯りがついてること
確認したころ

貨物列車が
追い越していく
空の光が
奪われたころ

生活は進む
誰かがどこかで
今日もまた
やさしい色を
分け合いながら

詩 対話

詩 対話

視線の先
助けを求める
彼女はもう
いつかの時代の人

生きることは
苦しさとともに

名前もない
時代背景を
語る多くの中の
ひとり

いつかどこかのまちで
照らされ誰かの目に
とまったとき
彼女はまた
生きている

いつかどこかの
わたしもまた
何かの名前をもって
存在すること
理解する

多くの画家は
もういない
絵のなかで出会う
市井の人と
目を合わせ

いつまでも過去と
対話していよう

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詩 幻と

詩 幻と

書店の隅で
読んでた雑誌は
もう消えた

在ったもの
辿ると
わたしだけの時間
パッケージされてるような

いつのまにか
変わっていた
世の中に
気付かなかったのは
わたしが
いつのまにか
変わっていたから

幻と消えた時間に
重ねながら
別人みたいな
私を迎える
同じ書店

分かってくれると
信じてる
変わっていくと
知ったことで
大人になっていったこと

詩 言えなかったら

詩 言えなかったら

あの日先生に
言えなかった言葉
あの日友達に
言えなかった言葉
あの日教室で
言えなかった言葉

今日をもって
笑顔に変わる

あの日の言葉
わ になって話すと色がつき
いつのまにか
覚えのない約束を果たす
大人たち

話したいような気がして
話したくないような気がして
つっかえてしまった記憶は
つっかえたまま大切に

言葉を少しずつ
貼り合わせて
不格好ながら
温かい今を
ふんわりとただ
噛みし

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