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『パラサイト 半地下の家族』レビュー
今回はポン•ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』(2019)のレビュー。
韓国の映画を見たのは今回が初めてだった。最初から最後まで衝撃な映画で、かなり深く共感してしまった。半地下に住む貧困な家族が、とても緻密で巧みな計画を立てて、裕福な家で働き、ある意味住み着くのだが、その家の地下には自分たちと同じ境遇の家族が住んでいた。後で調べたのだが、韓国は朝鮮戦争の影響で裕福な家には一時的に避難する核
『ドライブ•マイ•カー』レビュー
濱口竜介監督の『ドライブ•マイ•カー』(2021)を見た。原作は村上春樹『女のいない男たち』である。
私が最近考えていた問題が、他人の心という問題である。その中には統合失調症やサイコパスも含まれる。特殊な事例を考えることで、典型的な我々の意識や心が分かってくると思うからだ。この映画に登場する、ドライバーのワタリ•ミサキの母親は多重人格な傾向が見られる。ワタリは虐待をした母親を憎んでいたが、もう
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』レビュー
レジス•ロワンサル監督『9人の翻訳家 囚われたベストセラー(Les traducteurs)』 (2019)のレビュー。
この映画は、複雑で美しいミステリー映画だ。
文学を愛する者と金儲けが全ての出版社との闘い。本が燃えるシーンは心が苦しい。トリックが複雑なミステリー映画であるが、いくつかの文学作品が背景に重なり合い、この映画を成り立たせている。
単に作家と出版社の関係に留めずに翻訳家の立場を入
ウィトゲンシュタイン 語りえぬもの
星川啓慈『宗教者ウィトゲンシュタイン』(法蔵館文庫 2020)を読んだ。特に印象的だったのは、ウィトゲンシュタインの語りえぬものは、神であると言っているところだ。自分が神に語ることと、他人に神について語ることを区別し、神については沈黙しなければいけないというウィトゲンシュタインの考えを草稿や日記から読み解いている。この日記は大変興味深くまた読みたいと思う。
『Derry Girls 』レビュー
90年代北アイルランドの高校生たちの青春を描くコメディドラマで、とにかく素晴らしい。題名に「デリーガールズ」とあるが、5人のメンバーのうち、イギリスの男の子が1人いる。日本のドラマではそのような部分をシリアスに描いてしまうが、そこをコメディとして表現する文化が良い。この高校生たちは毎回何かをやらかしてしまうのだが、最終的にはそのことを通して、学校の勉強だけでは得られない、人生の大切なことを見つける
もっとみるCODA あいのうた レビュー
これは最高に素晴らしい映画だ。絶対に見た方がいい。
主人公ルビーは家族で1人耳が聞こえる。漁師の家に生まれた彼女は、歌が大好きだが、家族はそれを知らなかった。ルビーはいつも通訳係となり、漁師の経営を支えていたが、歌手としての才能を発揮したルビーは音楽大学へ行きたいと願う。しかし、漁師の経営が困難に陥り、音楽大学への進学を閉ざされるが、ルビーの歌を初めてきいた家族は、彼女を突然オーディションへ連れ