土筆 怜右

実話のようで、実話でない、現実のようで、現実でない。 それが、夢。

土筆 怜右

実話のようで、実話でない、現実のようで、現実でない。 それが、夢。

記事一覧

流れ行く景色と共に

 一つのことに集中する事が苦手だった。  今だってそうだ。文字を起こしている最中でも、動画を再生したり、ゲームをしたり、すぐ他の事に意識が向いてしまう。そのため…

土筆 怜右
1年前
3

どっち?

 心霊スポットに行くほどの気は持ち合わせていないが、心霊動画を観ることが好きな俺は、今日もベッドの上で動画を視聴している。 「どっちなんだろうな」  俺は動画を…

土筆 怜右
1年前

夢の音

 外の空気を吸いたくて。  僕は外へ出た。  夜道はとても暗く、目の前ですら認識できないほどだ。  そこへ、黒一色に包まれた僕が外界へ飛び出した。  わいわいがや…

土筆 怜右
1年前
2

『泣きたい私は猫をかぶる』を観ました🐱

 アニメーション映画にハマってしまった私が、気づいたら再生していた作品です。  このブログでは、感想、妄想、考察等を書き並べていきます🌀 1.ムゲの部屋にある絵本…

土筆 怜右
1年前

黒に抗うような白

 2022年8月8日、愛犬が遠くへ旅立った。  家に来た時は、体を黒い毛で包んでいたのに、年月とともに、白い毛が目立つようになってきた。  僕の髪も同じだ。  黒い髪に…

土筆 怜右
1年前
1

 鬱陶しいアラームを止め、重い瞼を上げると、何かが降っているのが見えた。 「雪だ!」  勢いよく起き上がると、それは雪ではなく、埃であると認識した。  掃除が嫌…

土筆 怜右
1年前
2

『天気の子』を観ました☁️

 流行前線に乗れなかった私は、今更ながら、映画『天気の子』を視聴しました。  このブログでは、私の感想、妄想、考察等を書き連ねていきます。 1.光の水溜まり めっ…

土筆 怜右
1年前
3

ボタン

 先日、トイレの調子が悪く、変な音を出し始めたため、新しく買い換えることにした。  20年と少しを共に過ごしたトイレだったが、特に情は湧かなかった。  お気に入りの…

土筆 怜右
1年前
2

隣、いいですか?

「もう、死のう」  俺は深夜、家を出て山奥へ向かった。  どうせ死ぬのだから、どこへ向かったのかバレてもいいだろうと思い、車で向かった。  都会に住んでいるため、…

土筆 怜右
1年前
1

アラーム

「ジリリリリ」  僕は、はっとして目覚めた。  嫌な夢を見たからだ。  今日は自宅が火災被害に遭う夢。  妹とともに、祖母と犬を連れて逃げ出していた。  近頃は、夢…

土筆 怜右
1年前
1

二転三転

「手袋ない?」 「どうして?出かけるの?」 「部屋が寒くて仕方ないんだ」 「暖房は?」 「あまり、効かない」  母からウォームビズ=室温20℃と言われてから一ヶ月、僕…

土筆 怜右
1年前

「イロコイザタ」あらすじ

少子化を問題視した政府は、恋愛感情を力に変換して戦う"イロコイザタ"をいくつかの高校に導入するとこにした。  対象の高校へと転入した七々億 申はイロコイザタで勝ち上…

土筆 怜右
1年前

第三話「最初で最後」

 今日はイロコイザタもないし、ゆったりと、のんびりと、落ち着いて、リラックスできると、門をくぐるまでは思っていた。 「あ、来たぞ」 「スーパー転入生だ」 「転入早…

土筆 怜右
1年前
1

第二話「下克上」

「来いと言われたら」 「会いに行く」  九月三日、求被道高校の好一対が幕を上げた。  俺とハツネは純白教場に飛ばされていた。 「一昨日もそれ言ってたけど、何の意味…

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1年前
2

第一話「圏外vs最下位」

 瞼の裏に、顔も名前もわからない"君"が浮かんできた。にもかかわらず、俺は"君"に好意を抱いているみたいだ。存在しているかも、人間かもわからない"君"に対して。 「ね…

土筆 怜右
1年前
流れ行く景色と共に

流れ行く景色と共に

 一つのことに集中する事が苦手だった。
 今だってそうだ。文字を起こしている最中でも、動画を再生したり、ゲームをしたり、すぐ他の事に意識が向いてしまう。そのため、一つのことを終わらせるのに、人並みよりも時間を要してしまう。

 住まいだってそうだ。同じ部屋数、間取り、家具、陽当たり。窓から見える景色も、インターホン越しに見える景色も、何もかもが変わらない。
 そんな生活に飽きてきてしまっている。

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どっち?

どっち?

 心霊スポットに行くほどの気は持ち合わせていないが、心霊動画を観ることが好きな俺は、今日もベッドの上で動画を視聴している。

「どっちなんだろうな」

 俺は動画を見ながら疑問を抱いた。

「どっちって?」

 部屋に招き入れていた友人に独り言が聞こえてしまっていた。

「幽霊って死んでると思う?」

 決まりきったこと、今更何を…みたいな顔で、「当たり前だろ」と返ってきた。

「いやでもさ、生き

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夢の音

夢の音

 外の空気を吸いたくて。
 僕は外へ出た。

 夜道はとても暗く、目の前ですら認識できないほどだ。
 そこへ、黒一色に包まれた僕が外界へ飛び出した。

 わいわいがやがや。

 正面から、三つのライトが見えた。
 それは、真っ直ぐとやってくる。
 なぜか、僕は避けようとはしなかった。
 それは、向こうと同じ。

「あぶねっ!」

 ギリギリで、お互いに軽くだけ避けた。
 向こうは気づかなかっただけ

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『泣きたい私は猫をかぶる』を観ました🐱

『泣きたい私は猫をかぶる』を観ました🐱

 アニメーション映画にハマってしまった私が、気づいたら再生していた作品です。

 このブログでは、感想、妄想、考察等を書き並べていきます🌀

1.ムゲの部屋にある絵本 序盤で映ったムゲの部屋が、どこか幼い、という印象を受けました。
 中学生だから、という理由もありますが、物語が進む中で、それが明らかになりました。
 ムゲが実の母と暮らしていた頃の場面、同じ絵本が何冊か置いてありました。
 ムゲは

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黒に抗うような白

黒に抗うような白

 2022年8月8日、愛犬が遠くへ旅立った。
 家に来た時は、体を黒い毛で包んでいたのに、年月とともに、白い毛が目立つようになってきた。

 僕の髪も同じだ。
 黒い髪に包まれていたのに、年月が経つにつれ、白い髪が目立つようになってきた。
 僕はその原因を、物事を吸収しやすい体質にあると、勝手に感じている。
 ストレスはもちろん、一つ一つの言葉や配色、メロディー等、五感で受け取れるものについては、

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雪

 鬱陶しいアラームを止め、重い瞼を上げると、何かが降っているのが見えた。

「雪だ!」

 勢いよく起き上がると、それは雪ではなく、埃であると認識した。
 掃除が嫌いな俺は気が向いた時にしか掃除しない。
 そのため、床には足跡がつくほどの埃が溜まっている。
 まるで、俺の心のようだ。
 そんな汚れた俺でも、汚れた場所に住む俺でも、好きなものがある。
 雪だ。
 正確には、雪、という名前の女性。
 

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『天気の子』を観ました☁️

『天気の子』を観ました☁️

 流行前線に乗れなかった私は、今更ながら、映画『天気の子』を視聴しました。

 このブログでは、私の感想、妄想、考察等を書き連ねていきます。

1.光の水溜まり めっっっちゃ好きな言い回しでした。
 作中に出てくる言葉で、最も綺麗で、最も切ない気持ちにさせる、ベストな表現方法だと思いました。
 "〇〇の水溜まり"と、することで、他の意味での使い方もできそうですよね🌀

2.人の温もりに触れるまで

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ボタン

ボタン

 先日、トイレの調子が悪く、変な音を出し始めたため、新しく買い換えることにした。
 20年と少しを共に過ごしたトイレだったが、特に情は湧かなかった。
 お気に入りのペンや、スポーツ用具など、壊したり、無くしたりすると悲しむものはあるが、何の気なしに使ってるものだと、何も思わないのだと、この時、知った。

「明日、夕方くらいに修理屋さん来るから」

 母からそう告げられた。
 20年と(以下略)のト

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隣、いいですか?

隣、いいですか?

「もう、死のう」

 俺は深夜、家を出て山奥へ向かった。
 どうせ死ぬのだから、どこへ向かったのかバレてもいいだろうと思い、車で向かった。
 都会に住んでいるため、山奥へは2時間ほどかかった。
 この時、死ぬ恐怖よりも、幽霊や動物に出くわす恐怖の方が勝っていた。
 でも、そんな恐怖もあと数分すれば消え去る。
 俺の魂とともに。
 車に載せてあったロープを取り出し、丈夫そうな木を探す。

 ザッ、ザ

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アラーム

アラーム

「ジリリリリ」

 僕は、はっとして目覚めた。
 嫌な夢を見たからだ。
 今日は自宅が火災被害に遭う夢。
 妹とともに、祖母と犬を連れて逃げ出していた。
 近頃は、夢の中で緊急事態に遭うことが多い。

 始まりは両親の死だった。
 父は歩行中、突然起こった、車両の玉突き事故に巻き込まれて死亡。
 母は運転中、くも膜下出血が原因で死亡。

「身体、検査受けた方がいいかも」

 夢を見た後、僕は母にそ

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二転三転

「手袋ない?」
「どうして?出かけるの?」
「部屋が寒くて仕方ないんだ」
「暖房は?」
「あまり、効かない」

 母からウォームビズ=室温20℃と言われてから一ヶ月、僕は上げても21℃を保とうとした。
 それでも、比較的温暖な地域ではあるものの、寒いものは寒い。
 30分も経てば、暖房は仕事を済ませたサラリーマンのように静かになってしまうのだ。
 壊れたとは思いたくない。買い替えてから一年と経って

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「イロコイザタ」あらすじ

少子化を問題視した政府は、恋愛感情を力に変換して戦う"イロコイザタ"をいくつかの高校に導入するとこにした。
 対象の高校へと転入した七々億 申はイロコイザタで勝ち上がり、生徒会長になることで死者を蘇生できる権利が与えられると知る。
 申の大切な人であり、分乃 ハツネの姉でもある分乃 ノラネを蘇生するため、生徒会長の座を目指し、イロコイザタに明け暮れる日々が始まる。

第一話「圏外vs最下位」

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第三話「最初で最後」

 今日はイロコイザタもないし、ゆったりと、のんびりと、落ち着いて、リラックスできると、門をくぐるまでは思っていた。

「あ、来たぞ」
「スーパー転入生だ」
「転入早々に勝利を収めるなんて、2人目だぞ」
「噂では感情測定、オールゼロだったみたい」
「な、何者なんだ?」

 何か…注目されてる…?
 注目を気にしながら、俺は教室へ向かった。
 なぜか俺の席にはハツネが座っており、何やらご立腹な様子。

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第二話「下克上」

「来いと言われたら」
「会いに行く」

 九月三日、求被道高校の好一対が幕を上げた。
 俺とハツネは純白教場に飛ばされていた。

「一昨日もそれ言ってたけど、何の意味があんだ?」
「じゃんけんでいうところの、最初はグーみたいなものヨ」
「じゃあ、もう始まってるんだよな?」
「もちろん」
「一人落としゃいいんだよな?」
「そうヨ」
「んじゃ、俺は実葉さん倒してくっから、ハツネは倒されないようにだけし

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第一話「圏外vs最下位」

 瞼の裏に、顔も名前もわからない"君"が浮かんできた。にもかかわらず、俺は"君"に好意を抱いているみたいだ。存在しているかも、人間かもわからない"君"に対して。

「ねぇ、君はなんで瞳が二つあるの?」

 "君"は俺に話しかけてきた。

「"君"もそうだろ?」
「数じゃなくて、種類のこと」
「だとしても、何を言っているのかわからないよ」

 "君"は俺の目を潰すように、二本の指を突き立ててきた。

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