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黒に抗うような白

 2022年8月8日、愛犬が遠くへ旅立った。
 家に来た時は、体を黒い毛で包んでいたのに、年月とともに、白い毛が目立つようになってきた。

 僕の髪も同じだ。
 黒い髪に包まれていたのに、年月が経つにつれ、白い髪が目立つようになってきた。
 僕はその原因を、物事を吸収しやすい体質にあると、勝手に感じている。
 ストレスはもちろん、一つ一つの言葉や配色、メロディー等、五感で受け取れるものについては、全て記憶してしまう。

 それが何か、他のことに利用できるわけではないが、良くも悪くも、悩まされている。
 良い意味で言えば、客観的に物事を捉えられるようになる。
 一旦、自分の中で整理することができるからだ。
 悪い意味で言えば、受け取ったものを、そのままを誰かに流すことが困難なのである。
 どうしてか、自分の言葉に置き換えて、伝えてしまうのだ。
 そのため、どうも伝言が苦手だ。
 メモに起こすことは不可欠なのだが、メモに起こす時点で、内容が食い違うことがある。
 また、メモを伝えようとしても、もしかしたら、違っていたかも、という考えが邪魔をして、自信を持ってメモを渡せないこともあった。

 良くも悪くい体質のせいで、余計にストレスを感じた僕は、心を病ませてしまった。
 それと同時に、愛犬の旅立ちがやってきたのだ。
 闇に現れる一筋の光のような存在だったのに、僕の心は完全に闇に包まれた。

 幾日が経ち、少しは心に光を戻し始め、僕はコーヒーを淹れている。
 あの時は、愛犬がいた時は、なぜかブラックを飲めていたのに、突然、ミルクを入れないと飲めなくなってしまった。
 コーヒーに打ち勝つミルクの白さは、何か、僕に伝えようとしているのだろうか。

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