土筆 怜右

実話のようで、実話でない、現実のようで、現実でない。 それが、夢。

土筆 怜右

実話のようで、実話でない、現実のようで、現実でない。 それが、夢。

最近の記事

流れ行く景色と共に

 一つのことに集中する事が苦手だった。  今だってそうだ。文字を起こしている最中でも、動画を再生したり、ゲームをしたり、すぐ他の事に意識が向いてしまう。そのため、一つのことを終わらせるのに、人並みよりも時間を要してしまう。  住まいだってそうだ。同じ部屋数、間取り、家具、陽当たり。窓から見える景色も、インターホン越しに見える景色も、何もかもが変わらない。  そんな生活に飽きてきてしまっている。  ならば引っ越せばいいというアドバイスは野暮である。金銭と欲望を天秤にかければ、

    • どっち?

       心霊スポットに行くほどの気は持ち合わせていないが、心霊動画を観ることが好きな俺は、今日もベッドの上で動画を視聴している。 「どっちなんだろうな」  俺は動画を見ながら疑問を抱いた。 「どっちって?」  部屋に招き入れていた友人に独り言が聞こえてしまっていた。 「幽霊って死んでると思う?」  決まりきったこと、今更何を…みたいな顔で、「当たり前だろ」と返ってきた。 「いやでもさ、生きていた人間が死んだ姿が幽霊だとしたら、幽霊は死んでいないことにならないか?」

      • 夢の音

         外の空気を吸いたくて。  僕は外へ出た。  夜道はとても暗く、目の前ですら認識できないほどだ。  そこへ、黒一色に包まれた僕が外界へ飛び出した。  わいわいがやがや。  正面から、三つのライトが見えた。  それは、真っ直ぐとやってくる。  なぜか、僕は避けようとはしなかった。  それは、向こうと同じ。 「あぶねっ!」  ギリギリで、お互いに軽くだけ避けた。  向こうは気づかなかっただけだが、僕は気づいていた。  でも、なぜ避けなかったのだろう。  轢かれるのを望ん

        • 『泣きたい私は猫をかぶる』を観ました🐱

           アニメーション映画にハマってしまった私が、気づいたら再生していた作品です。  このブログでは、感想、妄想、考察等を書き並べていきます🌀 1.ムゲの部屋にある絵本 序盤で映ったムゲの部屋が、どこか幼い、という印象を受けました。  中学生だから、という理由もありますが、物語が進む中で、それが明らかになりました。  ムゲが実の母と暮らしていた頃の場面、同じ絵本が何冊か置いてありました。  ムゲは母との思い出を、勉強机に腰掛けて、ちょうど正面に見えるところに置いてあったのです。

        流れ行く景色と共に

          黒に抗うような白

           2022年8月8日、愛犬が遠くへ旅立った。  家に来た時は、体を黒い毛で包んでいたのに、年月とともに、白い毛が目立つようになってきた。  僕の髪も同じだ。  黒い髪に包まれていたのに、年月が経つにつれ、白い髪が目立つようになってきた。  僕はその原因を、物事を吸収しやすい体質にあると、勝手に感じている。  ストレスはもちろん、一つ一つの言葉や配色、メロディー等、五感で受け取れるものについては、全て記憶してしまう。  それが何か、他のことに利用できるわけではないが、良くも

          黒に抗うような白

           鬱陶しいアラームを止め、重い瞼を上げると、何かが降っているのが見えた。 「雪だ!」  勢いよく起き上がると、それは雪ではなく、埃であると認識した。  掃除が嫌いな俺は気が向いた時にしか掃除しない。  そのため、床には足跡がつくほどの埃が溜まっている。  まるで、俺の心のようだ。  そんな汚れた俺でも、汚れた場所に住む俺でも、好きなものがある。  雪だ。  正確には、雪、という名前の女性。  少し前まで、一緒に暮らしていた、俺の彼女。  来月に迎える、彼女の誕生日に、プロ

          『天気の子』を観ました☁️

           流行前線に乗れなかった私は、今更ながら、映画『天気の子』を視聴しました。  このブログでは、私の感想、妄想、考察等を書き連ねていきます。 1.光の水溜まり めっっっちゃ好きな言い回しでした。  作中に出てくる言葉で、最も綺麗で、最も切ない気持ちにさせる、ベストな表現方法だと思いました。  "〇〇の水溜まり"と、することで、他の意味での使い方もできそうですよね🌀 2.人の温もりに触れるまで 序盤は、テンポがゆっくりな映画だと感じました。これは、帆高の現状を生々しく伝えた

          『天気の子』を観ました☁️

          ボタン

           先日、トイレの調子が悪く、変な音を出し始めたため、新しく買い換えることにした。  20年と少しを共に過ごしたトイレだったが、特に情は湧かなかった。  お気に入りのペンや、スポーツ用具など、壊したり、無くしたりすると悲しむものはあるが、何の気なしに使ってるものだと、何も思わないのだと、この時、知った。 「明日、夕方くらいに修理屋さん来るから」  母からそう告げられた。  20年と(以下略)のトイレは、レバーを回して流すものであり、便座は手動で上げるものであった。  これが

          隣、いいですか?

          「もう、死のう」  俺は深夜、家を出て山奥へ向かった。  どうせ死ぬのだから、どこへ向かったのかバレてもいいだろうと思い、車で向かった。  都会に住んでいるため、山奥へは2時間ほどかかった。  この時、死ぬ恐怖よりも、幽霊や動物に出くわす恐怖の方が勝っていた。  でも、そんな恐怖もあと数分すれば消え去る。  俺の魂とともに。  車に載せてあったロープを取り出し、丈夫そうな木を探す。  ザッ、ザッ、ザッ…  俺の鼓動は速度を上げた。  何か…いる…  俺はその音から遠のく

          隣、いいですか?

          アラーム

          「ジリリリリ」  僕は、はっとして目覚めた。  嫌な夢を見たからだ。  今日は自宅が火災被害に遭う夢。  妹とともに、祖母と犬を連れて逃げ出していた。  近頃は、夢の中で緊急事態に遭うことが多い。  始まりは両親の死だった。  父は歩行中、突然起こった、車両の玉突き事故に巻き込まれて死亡。  母は運転中、くも膜下出血が原因で死亡。 「身体、検査受けた方がいいかも」  夢を見た後、僕は母にそう告げた。 「そう言うなら、時間見つけて受けようかな」  そう言ってくれたも

          二転三転

          「手袋ない?」 「どうして?出かけるの?」 「部屋が寒くて仕方ないんだ」 「暖房は?」 「あまり、効かない」  母からウォームビズ=室温20℃と言われてから一ヶ月、僕は上げても21℃を保とうとした。  それでも、比較的温暖な地域ではあるものの、寒いものは寒い。  30分も経てば、暖房は仕事を済ませたサラリーマンのように静かになってしまうのだ。  壊れたとは思いたくない。買い替えてから一年と経っていないから。  だから僕は、着込んで寒さを凌ごうと思った。  そして、どこにある

          「イロコイザタ」あらすじ

          少子化を問題視した政府は、恋愛感情を力に変換して戦う"イロコイザタ"をいくつかの高校に導入するとこにした。  対象の高校へと転入した七々億 申はイロコイザタで勝ち上がり、生徒会長になることで死者を蘇生できる権利が与えられると知る。  申の大切な人であり、分乃 ハツネの姉でもある分乃 ノラネを蘇生するため、生徒会長の座を目指し、イロコイザタに明け暮れる日々が始まる。 第一話「圏外vs最下位」 第二話「下克上」 第三話「最初で最後」

          「イロコイザタ」あらすじ

          第三話「最初で最後」

           今日はイロコイザタもないし、ゆったりと、のんびりと、落ち着いて、リラックスできると、門をくぐるまでは思っていた。 「あ、来たぞ」 「スーパー転入生だ」 「転入早々に勝利を収めるなんて、2人目だぞ」 「噂では感情測定、オールゼロだったみたい」 「な、何者なんだ?」  何か…注目されてる…?  注目を気にしながら、俺は教室へ向かった。  なぜか俺の席にはハツネが座っており、何やらご立腹な様子。  昨日の別れ際もおかしかったし、とりあえず謝っておくか。 「すいませんでした」

          第三話「最初で最後」

          第二話「下克上」

          「来いと言われたら」 「会いに行く」  九月三日、求被道高校の好一対が幕を上げた。  俺とハツネは純白教場に飛ばされていた。 「一昨日もそれ言ってたけど、何の意味があんだ?」 「じゃんけんでいうところの、最初はグーみたいなものヨ」 「じゃあ、もう始まってるんだよな?」 「もちろん」 「一人落としゃいいんだよな?」 「そうヨ」 「んじゃ、俺は実葉さん倒してくっから、ハツネは倒されないようにだけしてろよな」 「ちょっと!うちより弱いくせに何言ってんの!」  初戦はクラスメイ

          第二話「下克上」

          第一話「圏外vs最下位」

           瞼の裏に、顔も名前もわからない"君"が浮かんできた。にもかかわらず、俺は"君"に好意を抱いているみたいだ。存在しているかも、人間かもわからない"君"に対して。 「ねぇ、君はなんで瞳が二つあるの?」  "君"は俺に話しかけてきた。 「"君"もそうだろ?」 「数じゃなくて、種類のこと」 「だとしても、何を言っているのかわからないよ」  "君"は俺の目を潰すように、二本の指を突き立ててきた。 「持ち主に自覚症状はない、と。…もうすぐ目覚めだな。また会おう」  アラーム

          第一話「圏外vs最下位」