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アラーム

「ジリリリリ」

 僕は、はっとして目覚めた。
 嫌な夢を見たからだ。
 今日は自宅が火災被害に遭う夢。
 妹とともに、祖母と犬を連れて逃げ出していた。
 近頃は、夢の中で緊急事態に遭うことが多い。

 始まりは両親の死だった。
 父は歩行中、突然起こった、車両の玉突き事故に巻き込まれて死亡。
 母は運転中、くも膜下出血が原因で死亡。

「身体、検査受けた方がいいかも」

 夢を見た後、僕は母にそう告げた。

「そう言うなら、時間見つけて受けようかな」

 そう言ってくれたものの、二年経った今でも受けていない。
 言い換えれば、今も健在であるということ。
 なんだ、ただの脅しのようなものか。
 僕はそう思っていた。

 それから少しして、今度は地震の夢を見た。
 朝刊配達のバイト中、小さく揺れたかと思えば、揺れは徐々に大きくなり、そこで目が覚めた。

「避難セットってある?」

 僕は母に尋ねた。

「一応、それっぽいものはここにあるけど」

 台所の床下に少しながらしまわれていた。
 僕は何かあるといけないと思い、地震対策について色々と調べていた。

 そんなある日だった。
 不可解な夢を見た。
 とても恐ろしい。
 身震いなしでは思い出せないほどの。

「パラララン パラララン パラララン」

 テレビから緊急アラームが聞こえた。
 何があったのかと、画面上部に流れるであろう文字を待った。
 それでも、文字は流れなかった。
 というよりも、普段のアラームは2回のはずなのだが、この時は3回も鳴ったのだ。
 僕は母と妹と視線を合わせた。

「なんか、変だね」

 その直後だった。
 とても暑かった。
 いや、そう思うのに必要な時間を与えてはくれなかった。
 一瞬にして視界が赤くなった。
 それから、目を覚ました。
 思い返してみると、ミサイルが降ってきていたのだ。
 目を覚ましても、恐怖でしばらく動けなかった。
 今でも忘れられない、3回のアラーム音。
 そして、耳元で鳴り響く、無意識に止めたはずのアラーム。

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