![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97104234/rectangle_large_type_2_37b5c4a3f59192e0d2c08b3a9812473e.jpg?width=1200)
ボタン
先日、トイレの調子が悪く、変な音を出し始めたため、新しく買い換えることにした。
20年と少しを共に過ごしたトイレだったが、特に情は湧かなかった。
お気に入りのペンや、スポーツ用具など、壊したり、無くしたりすると悲しむものはあるが、何の気なしに使ってるものだと、何も思わないのだと、この時、知った。
「明日、夕方くらいに修理屋さん来るから」
母からそう告げられた。
20年と(以下略)のトイレは、レバーを回して流すものであり、便座は手動で上げるものであった。
これが僕の中での"トイレの普通"だった。
だから、新しくなったトイレには一週間経った今でも、まだ慣れずにいる。
まず、トイレの扉を開けると、便座が勝手に上がる。
これは慣れたものだが、深夜、トイレに行くと、そのことに気づかず、何度か体をビクッとさせられた。
次にレバーではなく、ボタンで流すように変わった。加えて、便座を下ろすのも、ボタンに変わった。
これが今でも慣れていない。
用を済ませ、立ち上がると、振り返って便座を下げようとしてしまう。
その度に、頭を手で抑えてしまう。
「どうして、毎回忘れてしまうんだ」
それでも、そうなる日は、日に日に減っている。
そんなある日だった。
僕は毎回ウォシュレットをするのだが、ここで事が起きてしまった。
別に取り返しのつかないことではないのだが、ウォシュレットのボタンと、流すボタンを間違えて押してしまったのだ。
この時、僕は感じた。
同じ場所に、同じ形のものが、複数も存在すると、人は判断を誤ることがあるということを。
2回も流してしまったことを、リビングにいた家族に聞かれていたであろうと思い、僕は「そうじゃない。間違えたんだ」と背中で語りつつ、自分の部屋に向かった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?