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どっち?
心霊スポットに行くほどの気は持ち合わせていないが、心霊動画を観ることが好きな俺は、今日もベッドの上で動画を視聴している。
「どっちなんだろうな」
俺は動画を見ながら疑問を抱いた。
「どっちって?」
部屋に招き入れていた友人に独り言が聞こえてしまっていた。
「幽霊って死んでると思う?」
決まりきったこと、今更何を…みたいな顔で、「当たり前だろ」と返ってきた。
「いやでもさ、生きていた人間が死んだ姿が幽霊だとしたら、幽霊は死んでいないことにならないか?」
友人は目をつむり、指を動かして考えている。
「言いたいことは理解できた。それでも、幽霊は死んでいるって方が、文面的にしっくり来るわ」
「本当にそうなのかなぁ」
友人の言っていることも理解できるし、世間的にもそう認知されていることも知っている。
けれど、死んでいるのが幽霊なだけであって、幽霊が死んでいることにはならないと思う。
「俺、そろそろ帰るわ」
友人は漫画を借りに訪れたため、30分ほどで帰っていった。
「やっぱ、死んでるんだって」
「生きてるもん!」
一人きりになった部屋で、俺は独り言のようで、そうではない言葉を呟く。
「死人は現世にいられないって、神が言ってたし、じゃあ、僕はどうなるんだって話よ」
こいつは生まれていれば俺と双子になる予定だった弟…
「逆!」
…兄だ。
「でもなぁ、それがわかったところで、何か変わることでもあるのか?」
実際、これは俺が抱いた疑問ではない。
兄に抱かされた疑問だ。
俺だって友人みたいに思っている。
幽霊は死んだもんなんだって。
でも、じゃあ、俺の前に出てきているこいつは、どう説明すればいいんだろうか。
「生きている人は二度死ぬ。こうすれば理にかなってると思うよ」
「その心は?」
「生きている人が何かしらで命を落とす。そして、幽霊として現世に生まれ変わる」
「成仏とかが関係する?」
その通り!と、宙に浮かせた体をひらひらとさせながら言う。
「幽霊が未練を解消して、成仏するのが二度目の死」
「幽霊にならない人もいるだろ?」
「未練がない人なんだよ」
じゃあ、お前は未練が残っているんだな。
「神が情けをかけてくれて、何か一つ、未練があるのなら、現世にとどまれるようにしてくれたんだよ」
「じゃあ、俺も何か未練を抱えておくか」
「ただね…」
座れないのに、まるで座っているかのように、椅子に腰掛けた。
「未練を解消できなければ、一生を幽霊で過ごすことになる」
「たとえば?」
「好きな人と結婚できずに、それが未練として幽霊になったとしよう。その人が別の人と結婚してしまった場合、その未練は解消されることはなくなる」
でも、一生を幽霊でも、別にいい気がするけどな。
「一生を幽霊でいるとね、何が起こるかと言うと…」
「もしかして、悪いことが…?」
「何も起こらない!」
起こらないんかーいと、すり抜ける体にツッコミを入れる。
「でもね、それでもね、辛いものは辛いよ」
幽霊な兄は伸びをしながら続ける。
「好きな人、大切な人、知っているだけの人でも、老いて死んでいくのを見ると、頭から離れなくなるんだ。それをひっくるめて、無に返してくれるのが死だからね。幽霊のままだと、それが無くならないままだから、思い出すと、苦しくなるんだ」
俺は立ち上がって、兄を見下ろすように言う。
「成仏、手伝ってやるよ」
「無理だよ」
俺の言葉に被せるように言ってきた。
「だって、僕の未練は…」
逆に、俺を見下ろしながら、悲しさを帯びた声で告げる。
「君の兄になることなんだから」
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