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ちょっと不思議な夢の話
子供の頃、飼い猫が亡くなった。
ずっと一緒に遊んだり、オヤツを食べたり、一緒に寝たり、机の上のノートに寝られて宿題を邪魔されたり、楽しく過ごしていた。
でもだんだんと遊ぶより寝ている事が多くなり、毛並みにも白い毛が混じりだし、ペット用のオムツをつけるようになった。いつの間にか私よりずっと歳上になっていたのだ。
そしてある日、動かなくなった。
猫にしては長生きな方だと言われたけれど、年老いて
残り物には懺悔がある / 毎週ショートショートnote
「じゃあこの子にしようかな。」
私は「んー。」と言いながら眉間に皺を寄せた。
「その子はやんちゃで躾が大変かも知れません。こっちの方が飼いやすいですよ。」
白い子猫を女の子の腕に抱かせてあげるとニャアと小さく鳴いた。
「可愛い!この子にしよう、ママ。」
裏庭で産まれた野良猫が引き取られてもう十五年。黒猫のフクは残り物、と言うより私が気に入ってどうしても手放せなかった。
「やんちゃだなんて嘘ついて
立方体の思い出 / 毎週ショートショートnote
【段ボール】
急に学級閉鎖になった息子を迎えに急いで実家へ向かう。一人暮らしとなった父にあずけて大丈夫だったろうか。
「何この段ボール!」
玄関を開けると大小の段ボールが散乱している。
「ママだ!おかえりー!」
中くらいの段ボールから息子が出てきた。腰につけた紐を追いかけて「ねこ」も。
「これ全部ねこの家だよ。おじいちゃんと作ったんだ。」
「いや、作りすぎでしょ。」
段ボールを避けて進むと、奥の
フシギドライバー / 毎週ショートショートnote
気がつくとタクシーは森の中を走っていた。
運転手を見ると昔の飼い猫がハンドルを握っている。
「ハッチ元気だった?」
猫のハッチは笑った。
「僕もう死んでるのに元気?だなんて。凛ちゃんは疲れているね。」
こんな夢を見るくらいにね。
「ハッチを撫でたら元気出るんだけどな。戻ってこられないの?」
ハッチはまた笑った。
「無理だよ。だけど、」
ハッチはタクシーを止めて振り向いた。
「凛ちゃんに出会う前に産
神鯖時計② / 毎週ショートショートnote(裏お題)
艶やかで滑らか。ピンと立った耳。長く優雅な尻尾。黒と赤茶色の毛が混じる。
「美しいですねぇ。確かに利口そうだし。」
猫は棚の上に飛び乗ると毛繕いを始めた。
「可愛らしいだけでなく、正確な時間を鳴いて教えてくれるなんて。まさに神鯖時計。」
男の言葉に猫カフェの店主は首を傾げた。
「何の事です?」
「知ってるんですよ、すごいサバ猫がいるって。神レベルに可愛らしくて正確に時間を教えてくれるんでしょう。幾
ぴえん充電 / #毎週ショートショートnote
私の『ぴえん充電器』は自走式だ。私が『ぴえん』状態にあるのを感知した肌寒い時に近寄り、膝に乗る。
膝の上で本体を安定させると前方部を私の首元に近づけ、胸元に固定する。私の心が安定するようにゴロゴロという心地よい音を立てる。外装がふかふかなのも精神的安定を狙っての事だろう。少し温かく、少し重い。好感度を狙ったデザインの大きな瞳や耳。丸みのあるフォルム。長い尻尾。この『ぴえん充電器』を撫でる事で私は