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書評

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読んだ本について書きます。個人的な感想です。
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記事一覧

「書く力」を求めて

「書く力」を求めて

今日もまた、ここにやって来ました。

下北沢の“本屋 B&B”さんです。

今夜は『田中泰延×直塚大成「プロのライターは、どうやって文章を書いているのか?〜調べて書く全技術〜」『「書く力」の教室』(SBクリエイティブ)刊行記念』に参戦です。

『「書く力」の教室』共著者である田中泰延さん、直塚大成さんに加え、担当編集者の小倉碧さん、ブックライターの福島結実子さんの4人による豪華トークライブでした。

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名医・伊良部一郎との再会

名医・伊良部一郎との再会

奥田英朗の「イン・ザ・プール」を久々に読んだ。

精神科医・伊良部一郎のドタバタ診療を描いた連作中編集。

確実に一度読んでいる。
読んだという事実だけでなく、面白かったという感想も覚えている。

だからこそ、続編にあたる「空中ブランコ」「町長選挙」も買って読んだ。

そして再読。

驚いた。

表題作「イン・ザ・プール」はそれなりに筋も覚えていて、細かい描写を捉え直して読んだのだが、他の作品はほ

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嘘こそがボクたちを救う

嘘こそがボクたちを救う

岸田奈美著・「飽きっぽいから、愛っぽい」を読みました。

小説現代での連載とあって、noteのマガジンに綴られるのとは違うテイストに見えるのは気のせいなのでしょうか?

とはいえ、安定の岸田奈美ワールドに笑いと癒しと救いを得るのでした。

しかし、本著におけるこれまでの著作との違いは、ブクログのレビューにも書いたとおり、最終章にあると思います。

noteのマガジンと違い、最終回がある連載ゆえの、

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まだ選べていない君へ

まだ選べていない君へ

阿部広太郎さんの著作、「あの日、選ばれなかった君へ」読了。

これまで「心をつかむ 超言葉術」「それ、勝手な決めつけかもよ?」と読ませていただき、阿部広太郎さんの言葉に対する熱意や造詣とともに、優しさも感じてきた。

その優しさが、ご自身の来し方にある「選ばれなかった」経験に由来しているのだろうと腑に落ちた(それ、勝手な決めつけかな?)。

本著で印象深いのは、過去の自分に対して「君」と呼びかけて

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憶測の日々を送りたい

憶測の日々を送りたい

ヨシタケシンスケさんのイラストエッセイ、「日々憶測」を読みました。

ヨシタケシンスケさんならではのユーモアあふれる視点と思考で切り取られた何気ない日常の風景が、ユルくも深く描かれたエッセイ集です。

特にお気に入りなのは「ないものねだり」のページです。

生命力に溢れている時は死を、死に直面した時は生を求めるのではないかという視点には思わず納得しつつ胸が打たれる思い。

そんな折、近所でこんな光

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磨くべき強さについて

磨くべき強さについて

「強さの磨き方」を読みました。

まず、これからこの本を手にする方にお伝えしたいのは、この本の著者が“格闘技医学”を提唱されるスポーツドクター、二重作拓也さんであるということ。

決して糸井重里さんの著作ではありません。

出版業界には、「糸井重里さんに帯文を書いてもらったら、著者並みに糸井さんの名前を目立たせる」というルールやマナーでもあるのでしょうか。

それにしても、著者のネームが控えめすぎ

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「ノルウェイの森」再読記録

「ノルウェイの森」再読記録

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ノルウェイの森(上)
https://books.rakuten.co.jp/rb/1709070/

ノルウェイの森(下)
https://books.rakuten.co.jp/rb/1709071/

村上春樹氏の代表作「ノルウェイの森」

初めて読んだのは大学生の時。
20か21の

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“ジョバンニの夢”としての銀河鉄道【キナリ読書フェス】

“ジョバンニの夢”としての銀河鉄道【キナリ読書フェス】

宮沢賢治の名作・「銀河鉄道の夜」は、主人公ジョバンニとその友人カムパネルラが銀河鉄道での不思議な世界を旅する物語。

銀河鉄道の旅がジョバンニの夢の中のことであるという視点で、物語を振り返ってみたい。

ジョバンニの夢に親友のカムパネルラが出て来る。
近現代的な感覚で言えば、ジョバンニがカムパネルラを想う気持ちの強さである。

父が日本を離れ、母は病に伏せ、幼いジョバンニが働いてその母を支えている

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「贈与」と名付けられて救われた自分の感覚【キナリ読書フェス】

「贈与」と名付けられて救われた自分の感覚【キナリ読書フェス】

「贈与」という単語から連想したのは、経済的な話とか相続云々の話とかで、あまり縁のない世界かなとか思ってしまった。

今回、本著がキナリ読書フェスの課題図書にならなかったら、手に取ることはなかったかもしれない。

だから、キナリ読書フェスとこの本を課題図書に指定した岸田奈美さんにはすごく感謝している。
この本が、私がぼんやりと抱えていた自分の感覚の違和感を解消し、救ってくれたからだ。

「恩返しより

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いらんけど面白いんじゃなくて、面白いためにいるんだぜ【キナリ読書フェス後出し】

いらんけど面白いんじゃなくて、面白いためにいるんだぜ【キナリ読書フェス後出し】

キナリ読書フェスの課題図書にならずとも読まねばならなかった必須本。
それは、もちろん、主催者・岸田奈美さん著「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」

noteのエッセイの大ファンなので、大満足するのはわかってる。

それでもそんな読前の期待を、セルゲイ・ブブカもびっくりの飛び越えっぷりで軽々と越える満足感だった。

内容が素晴らしいのはあえて置いといて、岸田奈美さんの文章を面白くす

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呼応する母と子の物語

呼応する母と子の物語

noteでご活躍の岸田奈美さんが初の書籍を上梓されると知って、合わせて買いたい!と思って手にしたのが、母である岸田ひろ実さんが上梓された「ママ、死にたいなら死んでもいいよ」でした。

本のタイトルになった逸話は岸田奈美さんのエッセイでも知っていましたが、改めて読むと大病を患って抱いた将来に対する悲観を、母として、親としていかに乗り越えて今があるのかが母の視点で語られていて、親目線で感じるもの、響く

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書くことの意味

書くことの意味

岸田奈美さんの「もうあかんわ日記」を読み終わった。

読みながら、そして読み終わって、内容そのもの以上に、“書くこと”の意味に思いが拡がっていった。

なぜ、ボクはnoteに文章を綴るのか。

岸田奈美さんは、自分の身に起こる悲劇を喜劇にするために書いた。

いわば、悲劇性を文章化して人目に触れさせることで、咀嚼して消化して、そこにある喜劇性を生み出し、一種のエンタメとして昇華するということだと解

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フィクションに求めていたもの

フィクションに求めていたもの

岸田奈美さん主催で昨年開催された、 #キナリ読書フェス

5冊の課題図書全てを入手して臨むも、フェスに間に合ったのは、高校生から持っていた「銀河鉄道の夜」と、フェスきっかけで手に取った「世界は贈与でできている」だった。

残された3冊のうち、主催者・岸田奈美さんの「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」はフェス後すぐ読んだが、「くまの子ウーフ」と「さくら」は残ってしまった。

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目指せ、スリムなノーティスト

目指せ、スリムなノーティスト

note連続投稿で文章力を磨かんと意気込む上で、文章力を高めるためのインプットは欠かせない。

今回のこちらも、そのために手に取ったし、大変有意義だった。

意識しないと、というか、意識がズレる余計な言葉が増えるというとは、何となく実感しているのだけど、改めて解説を受けると納得が深まる。

そもそも、この本自体がとても読みやすいので、そこも説得力がある。

文例を用いた解説がわかりやすい。

時折

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