マガジンのカバー画像

書評

26
仏露文学メイン。
運営しているクリエイター

#読書・書評

境界散文【引用】Gabor Mate, M.D.『身体がノーと言うとき』

境界散文【引用】Gabor Mate, M.D.『身体がノーと言うとき』

うわ、と思う。
 
 わたしは、人体と、中身が分離している感覚がある。これは今に始まったことではなく、ではいつからかと問われると、分からない。それこそ、拒食症になった頃からかもしれない。わたしは生きるのが下手なので、いつもヘトヘトに疲れている。生きていくことは苦しい。死ぬのも苦しい。何もしたくない。だけどもわたしは体力がある。人より長時間働いても売上は伸びるし、人体の回復は早い。
 看護助手をして

もっとみる
痛みと神散文 - 『麻酔はなぜ効くのか〈痛みの哲学〉』外 須美夫【書評】

痛みと神散文 - 『麻酔はなぜ効くのか〈痛みの哲学〉』外 須美夫【書評】

麻酔科医で現在ペインクリニックの医師である外 須美夫氏の著者『麻酔はなぜ効くのか〈痛みの哲学〉臨床ノオト』を読んだ。
彼の、まるで医師とは思えない文学的センス、そして麻酔科医という視点からの衝撃的な臨床の記録に大変感銘を受けたため、軽く紹介させてほしい。

本書では麻酔の歴史や麻酔科医の誕生に触れたのち、著書である外氏の長い麻酔科医としての印象的な臨床経験が語られる。随所に彼のセンスを伺える詩や俳

もっとみる
手記の美学散文ー『犯罪者の自伝を読む』小倉孝誠

手記の美学散文ー『犯罪者の自伝を読む』小倉孝誠

さて、わたしは監獄小説が大好きである。

監獄で書かれた手記は、大変美しく、興味をそそる。ジュネを筆頭に、ラスネール「回想記」、ワイルド「獄中記」にソルジェニーツィン「収容所群島」、国内からは山本譲司の「獄窓記」や、世間を騒がせた市橋達也の「逮捕されるまで」など、凶悪犯に政治犯、冤罪に至るまで種々多様の監獄手記が存在し、一定の人気を保っている。(話すと長くなるので省略。)
 
仏語翻訳家の小倉孝誠

もっとみる
逃亡

逃亡

今の職場に就職したとき、先輩が病院内を案内してくれたときの言葉が忘れられない。
そのフロアは片側が産婦人科、もう片側が内科系の一般病棟と血液内科だった。

「Here, people are born here. And the other side, people are dying there. It's our whole life. Haha!」

ニコニコしている先輩を見ながら、あぁこの

もっとみる