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小説《魂の織りなす旅路》

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光たちからのメッセージ小説。魂とは?時間とは?自分とは?人生におけるタイミングや波、脳と魂の差異。少年は己の時間を止めた。目覚めた胎児が生まれ出づる。不毛の地に現れた僕は何者なの…
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#自分

タイミングを大切に

タイミングを大切に

こんばんは!光のひーちゃんだよ!

連載小説『魂の織りなす旅路』に
タイミングの話が出てくるけど、
タイミングはとっても大切ですっ。

でもね、無理して
自分からタイミングを作ろうとしても
絶対に上手く運ばないの。
自分を取り巻くあらゆることが整ったときに
タイミングは向こうからやってきます。

そのタイミングは、自分にとって
よい何かをもたらしてくれるものだから、
波がきていると思ったら、
躊躇

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連載小説 魂の織りなす旅路#27/魂⑵

連載小説 魂の織りなす旅路#27/魂⑵

【魂⑵】

 清々しい空気を身に纏った妻は、いつも朗らかでおおらかだった。そんな妻が、なぜ陰鬱な性格の自分を選んだのか。老人は、妻と交わしたあの日の会話に沈潜した。

 「あなたは差異がとても小さいから、一緒にいて心地がいいの。」

 「差異が小さい?」

 「うん。言葉にするとしたら、脳と魂の差異ってところかな。魂だなんて変に思うでしょ。でもね、何かの宗教とかいうんじゃなくて、私はそう感じている

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連載小説 魂の織りなす旅路#30/書道教室⑴

連載小説 魂の織りなす旅路#30/書道教室⑴

【書道教室⑴】

 「また明日来てもいい?」

 「もちろん!待ってるね。」

 茜は腰をかがめた私にぎゅっと抱きつくと、嬉しそうにスキップしながら帰っていった。
 この書道教室に、丁寧なお辞儀をして帰っていく子どもは1人もいない。師匠はそういう儀礼的な所作が大嫌いなのだ。ひとつくらい型のない場があってもいいだろうと師匠は言う。
 ここでは己の本質と向き合うことが求められる。そのためには本質を閉じ

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連載小説 魂の織りなす旅路#37/時間⑵

連載小説 魂の織りなす旅路#37/時間⑵

【時間⑵】

 「私も焦燥感に駆られることはあるけれど、周りの人を見ることはないなー。」

 「えー、そうなの? 気にならない? 耀(ひかり)の仕事なんて、すごい人がたくさんいそうじゃない。」

 「だからかな。すごい人がたくさんいすぎて、そんなのいちいち見てたら、何にも手につかなくなっちゃうよ。」

 焚火がパチパチと心地よい音を立てる。

 「同じくらいのレベルの人もたくさんいるけれど、そんな

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連載小説 魂の織りなす旅路#40/時間⑸

連載小説 魂の織りなす旅路#40/時間⑸

【時間⑸】

 「刻まれた時間から自分を守るって、大切なことだよね。」

 私がぼそっと小さく呟くと、栞が

 「自分を守る?」

と身を乗り出してきた。

 「うん。刻まれた時間に身を任せていると、自分が自分じゃなくなっていく気がしてこない? もちろん、刻まれた時間に合わせなければならないこともあるけれど、それだけに始終しているとね。」

 栞は大きく目を見開くと、こくりと深く頷き、早口で喋り始

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連載小説 魂の織りなす旅路#41/時間⑹

連載小説 魂の織りなす旅路#41/時間⑹

【時間⑹】

 「わかるっていうのとは違うと思うの。わかるって感覚は、客観的でしょう? そういう客観的な感覚ではないんだよね。もっと、自分そのものって感覚かなぁ。
 栞が自分のことを知りたいと思うのって、すごく客観的な視点だよね。自分を外側から眺めようとしているっていうか。でも、そもそもね、自分を外側に置いて、そこから自分を眺めるなんて、できないと思うんだよね。」

 「わかりたいと思うことが、そ

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連載小説 魂の織りなす旅路#42/時間⑺

連載小説 魂の織りなす旅路#42/時間⑺

【時間⑺】

 「確かにそうかもしれない。でも、人生ってそういうもんじゃない? 自分1人で生きてるわけじゃないんだし、自分はどんな風に生きたいのかって疑問は、どうしたって社会と切り離しては考えられないよ。」

 「うん。だから、自分を感じるっていうのは感覚的なもので、どういう人生を生きたいかという思考的なものじゃないんだよね。」

 「あ、そっか。思考的なものじゃない。自分を感じたいって言いながら

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連載小説 魂の織りなす旅路#51/暗闇⑸

連載小説 魂の織りなす旅路#51/暗闇⑸

 【暗闇⑸】

 「あのね、変な宗教ではないからね。私が実際に感じているって話なんだから。そういう怪しいのと一緒にしないでよぅ。」

 娘の声と水鉢の水の音が重なり合い、その向こう側から妻の声が聞こえてくる。

 《魂だなんて変に思うでしょ。でもね、何かの宗教とかいうんじゃなくて、私はそう感じているって話なの。》

 僕にどう話したらよいものかと不安げに口を尖らせているだろう娘に、僕は言った。

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