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マイクロノベル集/アニマル

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Twitterで発表したマイクロノベル(約100字小説)の中から、動物が登場する話をまとめました。猫、犬、タヌキ、鳥……人間は含みません。たぶん。
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記事一覧

マイクロノベル集/アニマル 017

マイクロノベル集/アニマル 017

106(947)
雨が降る、雨が降る。買い物をすませて。洗濯物は生乾きだけど取り込んで。なんとか雨が落ちてくる前に片付いたぞ。でも、午後は暇になっちゃったな。「にゃーん」お前も退屈か。雨に濡れた毛を洗濯物で拭いてくつろぐとは、大胆不敵だね。

107(948)
美が走っている。目が爛々と輝いて、足が燃えている。アスファルトが焼け、草花が生い茂る。きみは本当に猫なのか? 「猫だよ。ぼくらは元来こうい

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マイクロノベル集/アニマル 016

マイクロノベル集/アニマル 016

101(927)
歩いているとカラスが話しかけてきた。「よう兄弟。ちょっと頼みがあるんだ」頭の毛が逆立ったワイルドなカラスだ。悪事に手を貸すのはごめんだよ。「そんな大それたこと、気の弱そうなアンタには頼まないさ。ちょっと頭を撫でてくれないか」寝癖だったのね。

102(929)
野良AIを拾った。腹を空かせていたのか学習データをもりもり食べる。街のAI医師は、こんな種類はみたことがないと前足に触っ

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マイクロノベル集/アニマル 015

マイクロノベル集/アニマル 015

096(883)
お風呂で髪を洗っている時に振り返ってはいけないよ。あっ。「変質者か」ぼくは幽霊です。だから隣の住人が体をどこから洗うかも知っています。「変質者か」神様かも。「カツ丼しかないが食っていけ」こうしてぼくはこの家に捕らわれた猫になりました。

097(899)
俺は風より早いマシン。「現在、風速40メートルを突破」そう、台風! 「沖縄県に上陸しました」端から食っていく!! 「ご覧下さい

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マイクロノベル集/アニマル 014

マイクロノベル集/アニマル 014

091(872)
あの有名な怪獣がウェルシュ・コーギーに転生したんだって。なんて愛らしい。噛んだりしない? 「うん、もうそういう商売はやってない」それじゃあ失礼して撫でさせ……うわぁ! 噛もうとした!! どうしてぼくが鉄腕アトムの生まれ変わりだってバレたの!?

092(874)
手の届かない天井に帽子をかけるブックがついている。あれはアートなんだって。よかった。ぼくは目が悪いから、どれが自分の帽

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マイクロノベル集/吾輩はミケである 003

マイクロノベル集/吾輩はミケである 003

021(647)
光がたくさん降ってきた。まるでシャワーみたいだ。ぼくの毛が光を吸収して……。「あなたはだあれ?」うわっ、人間の子どもになっちゃった。どうしよう。「このにおいは、ミケね?」にゃーん。よかった。元に戻った。「臭いからシャワーしようね」にゃーん。

022(708)
ミケよ、聞きなさい。お前は人間をたぶらかす能力に欠けます。猫とはもっと高貴な存在。人間が作り出したちゅーるなどという疑似

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マイクロノベル集/アニマル 013

マイクロノベル集/アニマル 013

086(832)
お風呂場で湯船の中に気弱そうな犬が入っていた。どこから入ったの? 「玄関が開いていたので。すみません、洗ったらすぐ出ていきます」犬は好きじゃないけど、ゆっくりしていけばいいのに。お風呂場をピカピカにしてくれてありがとう。

087(833)
101匹のワンちゃん大行進! なんて言うけれど、どこに行くんだろう。「ほら、もっと詰めて乗って」小さな車にみっしり乗り込んで去って行った。さ

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マイクロノベル集/アニマル 012

マイクロノベル集/アニマル 012

081(773)
これ、なんだっけ。たしかに自分で作ったはずなんだけどな。二本足で歩いて、手が器用で、知恵があって……。「神様、わたしは人間です」わあ、猿がしゃべった。

082(791)
幽霊の存在なんて信じてなかったけど、監視カメラをつけたらわかったんだ。ほら、毎日ウェルシュ・コーギーを連れて散歩してる人がいるだろ。わけわかんねぇ。何者なんだ? 映らないんだよ、あのコーギー。どうして毎日散歩し

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マイクロノベル集/アニマル 011

マイクロノベル集/アニマル 011

076(734)
シーツの下でなにかが動いている。サイズは猫ぐらい。こわごわシーツをめくったら、なにもいない。透明猫かな? 「いえ、ただの猫です」どうして我が家に? 「各駅停車で。乗り鉄なんです」カメラはなにをお使いで? 「Leica」飼うことにした。

077(743)
ベランダで洗濯物を干して、スイッチオン。ドローンが上空へ舞い上がって太陽光を浴びる。どんな家庭の洗濯物も平等に乾くように、らせ

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マイクロノベル集/アニマル 010

マイクロノベル集/アニマル 010

071(687)
見ろよ、あの水。キラキラと光って人間が作ったとは思えねぇ。こりゃ名のあるAIの仕事だな。どこの生まれだ? 淡路島? 名は? 芝右衛門狸。あんた生きてたのか!? え、死んでる? じゃあこの水は、ただの水か。はっはっは、一杯食わされたな。……誰に?

072(691)
暑くていかんな。他に歩いてる人もいない。うん? あの楽しげな音はなにかな。ああ、祭囃子か。いいね、少し寄っていくか。

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マイクロノベル集/アニマル 009

マイクロノベル集/アニマル 009

066(667)
AIは意外と速く泳ぐ。そう聞いたので滝壺にほうり込んだところ、波が自動生成された。いまではトンネルを掘って海まで出向き、竜宮城を作っているそうだ。

067(672)
成人した証に羽根が生えたので、床屋でカットしてもらって羽毛布団にした。質は年々落ちているそうだ。

068(673)
いたたたっ。いきなり肩に痛みが。「肩に油揚げを載せると治るぞ」おのれ、筋肉の狐狸の類いか!

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マイクロノベル集/アニマル 008

マイクロノベル集/アニマル 008

061(631)
おかしいな。ちゃんと自動販売機に化けたはずなんだがな。人間が来ないぞ。ジロジロ見られはするんだけど。中身がタヌキだってバレたかな。

062(636)
昨日の自動販売機は空箱だった。令和の時代にタヌキの宝箱に化けるなんてタヌキとして恥ずかしい。しかし今日のボクは違う! 見よ、人間の流行を学んだラインナップ!! さあ、がっかりしろ!

063(644)
人生は過去の自分との闘いだ。

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マイクロノベル集/アニマル 007

マイクロノベル集/アニマル 007

056(588)
窓際で勉強していたら、鳩が華麗なターンを決めた。なかなか凜々しい姿じゃないか。その後、また別の鳩が華麗なターンを決めた。そしてまたハトが……。もしかしてここ、鳩レースの折り返し地点なのかな?

057(595)
「ブイブイブイ。蜂が飛ぶ」蜂ではないのでは?

058(611)
おさんぽおさんぽ嬉しいな。実はおさんぽには秘密があってね。いつものコースを歩き終わったあと、秘密のコース

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マイクロノベル集/『吾輩はミケである』002

マイクロノベル集/『吾輩はミケである』002

016(511)
ぱちん。ミケ、動いてはいけませんよ。いま、ツメを切っていますからね。ぱちん。ぱちん。はい、ツメ切りごっこおしまい。おかあさん、ミケのツメ切ってあげて。にゃーん! こら、逃げちゃダメ!!

017(527)
人間と一緒に歌いたいな。でも発声できないから人間の言葉で歌う楽器を使おう。うわっ、なんだこれ。言葉だけじゃなく唇や舌、声帯の動きを理解していないと歌声にならないのか。むむむ。「

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マイクロノベル集/アニマル 006

マイクロノベル集/アニマル 006

051(550)
手を上げろ! そのままじっとしているんだ。ほうら、お前を木だと勘違いした天然記念物の鳥がとまった。そして、足下にいるのは猫。お前の判断一つで天然記念物の運命が決まるぞ。ちなみに俺は猫ちゃんが好きだ。

052(569)
電車の中に忘れ物があったので駅員さんに届けた。足首か手首じゃないかな。「これは肘だね」そっかあ。関節が多いと大変だね。

053(570)
梅雨にはツノがあって、

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