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将来大人になる子たちへ

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#小説

ショートショート 魔法使いの○

ショートショート 魔法使いの○

「こうして、みんな、末長く幸せに暮らしました。」

「と、いうわけにはいきませんでした。」

「とおもったら、なんと…。」

最後の○を打つ箇所を決めるだけで、お話はどうとでもなる。悲劇でも、喜劇でも、お好み次第だ。まるで魔法みたい。登場人物たちの運命は思いのまま。多分。腕のいい魔法使いなら。

小さい頃、床板か何かを工事するために大工さんが何人か来た。棟梁はもう随分おじいさんで、歯がところどころ

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ショートショート おおきくなったら

ショートショート おおきくなったら

  ぼくは きのう おかあさんに だっこ してもらってたら、おかあさんが おもいおもいって いいだして、じめんに おろされちゃった。もういっかい だっこって いったけれど もうだめって おかあさんに いわれた。

 おもいんだって、ぼく。

 おおきくなったねえって おかあさんがいいました。ちょっと まえまで あかちゃんだったのにって。

 ぼく、おおきくなったんだ。

 よるごはんの ときに お

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もし、わたしがよその家の子供だったなら。

もし、わたしがよその家の子供だったなら。

どれぐらいの分量のものを我慢してきたのか

あまりよくわからないけれど。

我慢って、じぶんでは感じられない時がある。

わたしの癖なのか、心を保つ術なのか。

ここにいるわたしとは違うわたしを

想定してしまうところが小さい頃からあった。

小学生の頃、母とふたりで空港まで車で

行くことがよくあった。

旅行のためじゃなくて、ただ空港にふたりで

行って、旅する人々を眺めていたり、そこで

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何度でも「あなたは悪くない」と抱きしめたい|『秘密を語る時間』書評|徳瑠里香

何度でも「あなたは悪くない」と抱きしめたい|『秘密を語る時間』書評|徳瑠里香

 あれはなんだったんだろう。どうしてあんなことに? 不快な気持ちや小さな恐怖が胸のうちにしこりのように残りながら、ふと思い出しては、思い違いだよ、大したことない、と言い聞かせた。

 誰に相談すればいいのか、そもそも人に言うほどのことなのか。私のせいかもしれないし、言えない。

 どうしてあのとき、へらへらと受け流してしまったんだろう。何事もなかったかのように過ごしていたのだろう。嫌だと言いたかっ

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穴

部屋に戻ってみると”穴”があったんだ。

これだけじゃ訳分かんないよな。
”壁”とか”床”じゃなくて、部屋の真ん中
”空間” にあるんだよ。ソファーに座ってテレビ観てたら、なんか画面の右上に黒い丸があったんだよね。液晶がダメになったかと近くまで行ったらなんにもなくてさ。で、ソファーに戻るとまた黒い丸があるんだよ。初めのうちは、目が疲れてるのかと思ったんだけど、何回か繰り返してるうちに”空間”に黒い

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