#朗読
篠突く雨【オリジナルSS】
篠突く雨
バスを降りるのが憂鬱で仕方ない。窓に小さな雨粒がつき始めて、傘を忘れたことを思い出したが、もうどうでも良かった。21時、乗客は多くなく、皆一様に疲れているように見えたが、この中で一番暗い自分の顔が窓にぼんやり映った。どこで間違えたんだろう。そんなことを考えていると、バスはあっという間に終着点に着いた。
バスを降りると彼が待っていた。
「傘、忘れてったろ。」
小雨の降る中、右手で傘
【オリジナルSS】Nameless【初夏のRadiotalk朗読大賞】
Nameless
昨日はソファーで寝てしまったらしい。軋んだような身体の痛みで目が覚めた。身体だけじゃなくて頭もモヤがかかったように痛い。部屋の電気は点いたまま、壁の時計は6時を指していて、カーテンの奥の薄暗さで夜だと気づき溜息が出た。身体をゆっくり起こし、洗面所へ向かい冷たい水で顔を洗う。ふと鏡を覗くと、違和感があった。あれ?僕ってこんな顔してたかな?鏡に映るのは自分自身のはずなのに、知らない