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抽象感覚の倉庫

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死にたいとそれ以外の狭間で生きている

私は、もしかしたら、死にたいと思った回数は人よりも少しだけ多いのかもしれない。 でも、まだなんとか生きているので、毎回、死ぬこと以外の選択肢を取っているというこ…

moyami
4年前
218

ふたりを愛せよ

スマホの画面の中心部分より少し右下を、親指でタップする。 すると、画面いっぱいに文字が溢れ出し、読んでいなくても、「ありがとう」が一つではないことがわかる。 ま…

moyami
16時間前
4

同族INTP

「こういうの自分で撮っててさぁ、」 この後に、続く言葉を私は知っている。 私のSNSを目の前でスクロールしながら、冷たい視線を注ぐ彼が、次に口にする言葉を。 「恥ず…

moyami
10日前
13

偽りなき優しさ

黒にピンクのスライド型のガラケーを彼が手にした。 何を見せたんだっけ。 何を、彼に、見せたかったのだろうか。 真ん中の一番後ろの席にいる彼と、 その左斜め前にいる…

moyami
2週間前
4

扇と揺れと、答え

都合よく、人の顔が見えない視力は、揺れだけは捉えることができる。 こちらに手を振っているような、応援されているような、そんな爽やかな揺れを。 側で眺めてみれば、…

moyami
2週間前
2

数十年の窓

君が見ている絶望を、抱きしめさせて。 眉を降ろして心配そうに眺める君に、「大丈夫」だと言わせて。 果てし無く長いその道を辿って、 遠くからでもよく分かる目印を並べ…

moyami
2週間前
3

プライベートタイム

例えば、朝の6時に挨拶をするような。そして、今日の太陽の温度を報告するような。 満員電車に対する鬱憤ではなく、横断歩道の先に見えた未来を伝え合う、そんな関係。 …

moyami
3週間前
4

yeyue

暴風の中、高校生の視線を浴びながら、真っ直ぐな道を歩いていた。 季節は4月、暖かくなってきた頃で、長袖一枚で出かけられるのがこの上なく楽しかった。 オーバーサイ…

moyami
1か月前
6

弾む冷静さ

酒に飲まれているときこそ、私の頭は冷静な言葉で道筋立てられている。 そして、高熱が出た時ほど、冷静に自分を3Dプリンタにかけることができるのだ。 弱っている時に差…

moyami
1か月前
8

走馬灯を読む

粗く、ざらついた、心臓が動くたびに、吐血するのである。 「うん、言いたいことはわかったよ」 そんな一言と共に絶望を味わう。 だってさ、だって、私たちきっと同じよ…

moyami
1か月前
6

空白を縫う

息継ぎをした瞬間に彼が口にした、「空白」という言葉が、波打つ夜。 水面を弾きながら進む石のように、言葉を放つ。そして、時に浮かび上がる点を感じながら、"今"という…

moyami
2か月前
4

浅はかだと言えば、君は笑い転げる

「やっぱり、」といつもの言葉を唱える君の声、そして、あくびをする私の音。 「なんかほら、闇がありそうなんだよね」という一言で、19歳のある出来事を思い出した。「お…

moyami
2か月前
5

This is life.

息苦しい中、目まぐるしい日を迎え、息を大きく吸い込み、「This is life.」と呟いた。 この窮屈さ、この歯痒さ、この心臓を掴まれるような不安、あゝこの冷たさだと噛み…

moyami
4か月前
12

金木犀が雨に溶けて、

数日前、金木犀を吸い込んで、というタイトルで何か書こうと頭の片隅で考えていたのだけれど、人間の気持ちなどすぐに移り行くもので、違うものとなった。 自転車で風を切…

moyami
6か月前
7

こいつらとは違うのだと信じて

振り返れば、自分の未来には”こんなやつら”と一緒になんていないと思いながら生きてきた。それ以外の未来など思い浮かばなかった。自分が何になりたいのか、どんな人間に…

moyami
7か月前
12

夢の中のrendez-vous

きっと、同じように樹々が生い茂り、太陽が近く、葉は光り輝き、 私たちを燃やしにくるだろう。 燃え尽きるまでは、短いようで実は長かったのかもしれない。 夢の中では、…

moyami
8か月前
7
死にたいとそれ以外の狭間で生きている

死にたいとそれ以外の狭間で生きている

私は、もしかしたら、死にたいと思った回数は人よりも少しだけ多いのかもしれない。

でも、まだなんとか生きているので、毎回、死ぬこと以外の選択肢を取っているということになる。

でも、それは自分だけではないのだろうと思う。

皆、死にたい、辞めたい、休憩したい、と思うその瞬間、でも、違う選択肢をって、なんとかやってきたのだろう。

だから、私達は生きている。

今も、こうやって生きているのは、死ぬこ

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ふたりを愛せよ

ふたりを愛せよ

スマホの画面の中心部分より少し右下を、親指でタップする。

すると、画面いっぱいに文字が溢れ出し、読んでいなくても、「ありがとう」が一つではないことがわかる。

またひとつ、タップすると、スクリーンショットされた画像が貼り出され、そしてまたたくさんの文字と、「ありがとう」と、その他が並んでいる。

そして、ぐるぐるっとした雲のようなスタンプと。

私は、そこに隠された数字を知っている。
その数字に

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同族INTP

同族INTP

「こういうの自分で撮っててさぁ、」

この後に、続く言葉を私は知っている。
私のSNSを目の前でスクロールしながら、冷たい視線を注ぐ彼が、次に口にする言葉を。

「恥ずかしくね?」

ほら、そういうと思ったよ、と私は頬が緩んだ。

「どうでしょう?」
そうやって笑いながら、真っ白なマグカップを口元へ運ぶ。

私は彼を嫌いながら、同時に隅々まで彼の心理が手に取るように分かる。

一生懸命になることで

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偽りなき優しさ

偽りなき優しさ

黒にピンクのスライド型のガラケーを彼が手にした。

何を見せたんだっけ。
何を、彼に、見せたかったのだろうか。

真ん中の一番後ろの席にいる彼と、
その左斜め前にいる私。

その周りに居た人たちの顔を一人も思い出せないほど、私の視界を彼が占領していた。

大それた恋をしていたわけではない。
それでもこうして夢にまで出てくるのは、彼の"優しさ"があるからだ。

珍しい、"優しさ"が。

スラッとした

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扇と揺れと、答え

扇と揺れと、答え

都合よく、人の顔が見えない視力は、揺れだけは捉えることができる。

こちらに手を振っているような、応援されているような、そんな爽やかな揺れを。

側で眺めてみれば、頭を撫でるようにゆっくりと、揺れている。大きな影も揺れ、まるでゆりかごを体験しているかのように、自分が慰められる。

もしも、魔法が使えるとしたら、あの木々を揺らしたいと思うんだ。

ほら、あの、向こう岸に見える。

そうすれば、君が階

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数十年の窓

数十年の窓

君が見ている絶望を、抱きしめさせて。
眉を降ろして心配そうに眺める君に、「大丈夫」だと言わせて。

果てし無く長いその道を辿って、
遠くからでもよく分かる目印を並べてくるから。

途中で、はぐれてしまっても、君がひとりで
歩いていけるように。

それが、僕の役目のような気がするからさ。

その道を君が誰かと手を繋ぎながら
歩いていったってよくて、

僕はそんな光景を、絶望ではなく、希望というタイト

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プライベートタイム

プライベートタイム

例えば、朝の6時に挨拶をするような。そして、今日の太陽の温度を報告するような。

満員電車に対する鬱憤ではなく、横断歩道の先に見えた未来を伝え合う、そんな関係。

それをきっと、特別と呼ぶのだろう。

昼食時に来るメッセージは特別ではなくて、
夕方に来るメッセージも特別ではなくて、
深夜に来るメッセージも、そうではなくて。

夜の21時に、待ち合わせをできることは、特別なのである。

夏になれば、

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yeyue

yeyue

暴風の中、高校生の視線を浴びながら、真っ直ぐな道を歩いていた。

季節は4月、暖かくなってきた頃で、長袖一枚で出かけられるのがこの上なく楽しかった。

オーバーサイズの長袖のポロシャツに、下は、ありえないほどのダメージ加工がされた、布切れ、いや、ジーンズを履いていた。

ショートパンツくらいの丈から足首まで、正面から見ると生地がなく、後ろの生地があるからやっと保たれているようなデザインだ。

きっ

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弾む冷静さ

弾む冷静さ

酒に飲まれているときこそ、私の頭は冷静な言葉で道筋立てられている。

そして、高熱が出た時ほど、冷静に自分を3Dプリンタにかけることができるのだ。

弱っている時に差し出される手を、丁寧に退け、丁寧な口調で、「大丈夫」と放つことができる。

逆に浮き足だっている時というのは、酒や熱という温度を帯びていない時である。自分の言葉から煙が上がる、次の言葉を紡ぐ瞬間、言葉と言葉が擦れて熱を帯びていく。

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走馬灯を読む

走馬灯を読む

粗く、ざらついた、心臓が動くたびに、吐血するのである。

「うん、言いたいことはわかったよ」
そんな一言と共に絶望を味わう。

だってさ、だって、私たちきっと同じようにこの世界を読んでいると思っていたよ。同じように読んでいるからこそ、同じような走馬灯すら目にするのだろうと思っていたんだ。

“わかってもらえなかったこと”というのが、私の人生にはあまりにも多くて、"わからせなきゃ"という汚い感情が自

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空白を縫う

空白を縫う

息継ぎをした瞬間に彼が口にした、「空白」という言葉が、波打つ夜。

水面を弾きながら進む石のように、言葉を放つ。そして、時に浮かび上がる点を感じながら、"今"という点を見る。

ある地点においての点は、果たしてどこの点と結ばれるのだろうか。

もしもマグカップの底と過去が繋がっていたならば、私たちはそこから過去の自分に会いに行くことを選ぶだろうか。

それとも、こうして珈琲を啜りながら見ているくら

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浅はかだと言えば、君は笑い転げる

浅はかだと言えば、君は笑い転げる

「やっぱり、」といつもの言葉を唱える君の声、そして、あくびをする私の音。

「なんかほら、闇がありそうなんだよね」という一言で、19歳のある出来事を思い出した。「おばあちゃんに虐待されてたらしくって、だからさ、」と続ける君の声は少し弾んでいた。

「よかったじゃん」と返す私。何も良くはないのだけれど。しかし、誰かの痛みは誰かの喜びである仕組みは、宇宙の決まりごとなのかもしれない。

「てか、お姉さ

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This is life.

This is life.

息苦しい中、目まぐるしい日を迎え、息を大きく吸い込み、「This is life.」と呟いた。

この窮屈さ、この歯痒さ、この心臓を掴まれるような不安、あゝこの冷たさだと噛み締めた。耳鳴りがするほど歯を食いしばり、窒息死しそうなほどに布団を背負い込み、生きる醍醐味をひたすらに感じていた。

求めていてのは旅ではなかった。

ただ、生きることだったのだ。

「旅が好きで、」と語った時、目の前の相手は

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金木犀が雨に溶けて、

金木犀が雨に溶けて、

数日前、金木犀を吸い込んで、というタイトルで何か書こうと頭の片隅で考えていたのだけれど、人間の気持ちなどすぐに移り行くもので、違うものとなった。

自転車で風を切る瞬間、横断歩道で左斜め前を眺めている時、金木犀の香りを身体で感じる。その刹那、何故だか金木犀の香りを売りにした商品が頭に思い浮かぶ。ちゃんと役割を果たす姿を見届けることはいつもできない。

金木犀の訪れで秋を感じるのか、秋を感じている最

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こいつらとは違うのだと信じて

こいつらとは違うのだと信じて

振り返れば、自分の未来には”こんなやつら”と一緒になんていないと思いながら生きてきた。それ以外の未来など思い浮かばなかった。自分が何になりたいのか、どんな人間になりたいのか、そんなことよりもただひたすらに、目の前にいるこいつらが、未来では自分の側にいないことを願っていた。

その未来までの距離はとてつもなく長かった。

彼らが、彼女らが、歳を重ね、そして、
やっと、まともな精神年齢になるだろうと信

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夢の中のrendez-vous

夢の中のrendez-vous

きっと、同じように樹々が生い茂り、太陽が近く、葉は光り輝き、
私たちを燃やしにくるだろう。

燃え尽きるまでは、短いようで実は長かったのかもしれない。
夢の中では、より一層ロマンチストになっていないと、説明がつかない、そう思ってしまう。

ノートの中には様々な言語が記されていて、彼がそこにチベット語の詩歌を付け足した。丁寧に説明される彼の美学は一ミリも理解できないけれど、そんな空間は恋愛の醍醐味だ

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