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決別


ミックスジュース味のような、そんな甘ったるさの中をきっと私は生きていて、生きてきた。


そびえ立つ神戸のポートタワーを見上げると、私がこの街で感じてきた全てのことが、目の前のこの赤いタワーは知っているのかもしれないと、思った。

この街で生まれて、この街を一刻も早く出たいと思って生きてきた、そんな過去を。


この街に帰ってくる度に、港町特有の風が私の身体全体を撫でる。この生温い温度が気持ち悪くて仕方がなかったんだ。

まるで、私をこの街へ留めて置くかのように、まとわりついてくるこの温度が。


この街を私は、”保守的な街”だと語ったことがある。

その癖に、勇気や覚悟の不足によって、何度もこの街を出入りした。
もう二度と帰ってこない覚悟なんてなかった。重力に負けたかのように、吸い寄せられ、そして、それは自分の所為ではないのだと言い放った。


大した思い出なんてこの街にはない。

そう思う。私は、今でも、そう思っている。


ただ生まれて、ただ育っただけのこの街。

水面に揺れる光が、何だか歯車のように見えてきて、私はこの街で、一人の人間として、一人の娘として、あなたがいなきゃダメなんだという役割が欲しかったのかもしれないと思った。

そういう生き方をしてきた。
そういうテーマで生きてきた。


もう、やめにするんだ。

この街で嘆くのは。
この街で過去を思い出すのは。

今という軸で走りたいって叫んでる。

この街から呼ばれたって、私は違う方向へ走りたい。


今の私は違うテーマで生きている。
それは時として、崩れ落ちそうにもなるけれど、以前のテーマが前触れなく私の全てを支配することもあるけれど。

それでも、今の私にはそれを振り払う力があって、走り出す勇気がある。



2024年は、”人生で初めて”と称す感情によく出会う。
2024年は、後を振り返らない場所へ。


母と父とその他大勢の人と過ごした街、神戸。
別れの時が来たみたいだ。



文字を書くことが生き甲斐です。此処に残す文字が誰かの居場所や希望になればいいなと思っています。心の底から応援してやりたい!と思った時にサポートしてもらえれば光栄です。from moyami.