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この本を読めばわかるという暴力


知識を手にした暴力家。
是非とも読書を共にしたいと願う。

そして、共に読書感想文でも書き、読み合おうではないか。

10分間タイマーで測り、その間にじっくりとお互いの言葉という感性に触れる。

さて、そこにはどんな言葉が溢れているだろうか。

このままではいけないと思ったという焦燥感か、この事実を早く広めなければいけないという正義感か、それとも、これが言いたかったんだ、誰もこれを言ってくれなくてやっと同じ気持ちの人に巡り会えたよという喜びか。


誰かが、amazonのリンクを貼る。その先の海には、真っ赤な立体的な真実という文字が堂々と胸を張って、立っている。

「これを読めば、あなたも分かりますよ」
誰かが、そんなことをコメントする。

「これを読んで勉強してください」
誰かが、そんなことをコメントする。

「この本を一度読んで見てください」
本を読めという文章の中身はとても暴力的である。

戦争が、宝の地図を見つけたようなテンションで語られていく。
冒険者たちは、一冊の絵本を手に取る。

「これだ」と思った。
「すべてがつながった」と。

あれもこれも、あれが悪くて、あれが正しくて、そして、そして、そう感じていた自分はやはり正しかったのだと興奮した。

そんな冒険者たちは、絵本を天に掲げ、「これを読めば、みんなも気づく」そう、そっと呟いたのだった。

冒険者たちはずっと、手にたった一つの正義を握ったまま、進んで行った。地図にさえ目もくれず。


十年後、冒険者たちは同じ正義を握りしめたまま、「十年間、同じ正義を信じている人間」に成っていた。

冒険者たちは、インタビューにこう答えた。

「あなたも、いつかわかるときがきますよ」と。






p.s 絵本ではなければきっと冒険者にすらなれていないんですよ

文字を書くことが生き甲斐です。此処に残す文字が誰かの居場所や希望になればいいなと思っています。心の底から応援してやりたい!と思った時にサポートしてもらえれば光栄です。from moyami.