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大切な人

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私の人生において、とっても大切な人たちとの出会いや、会話や、その空間。
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812

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「力になりたいと思ってる」

夜の23時にそんなメッセージが届く。
私たちは、何度もお互いの力を交換し合って生きてきたね。

「ほんとまあやって記憶力いいよね〜」
そう言いながら、彼はウイスキーを口に運ぶ。

「じゃあ、あの時なんて言ったか覚えてる?」
私はそうやって、彼と昔の思い出の問題を出したりして。

「あー、覚えてるよ」
彼は、どうでもいいようなことをよく覚えている。
「俺は、すぐ忘れるか

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土偶を溶かす

土偶を溶かす

忍耐とか、継続とか、思想とか、そういうものによって私を形成する層がミルフィーユ状になっていく。

「目が全然笑ってないもん」

そんな声と共に、私は一生見ることのできない、他者から見た"まあや"というものを想像した。

「目全然合わせないからさ、」

そんなふうに目の話をしながら、私は顔を傾け、彼と目を合わせた。

「今は大丈夫だけどね」

そう言われた瞬間、そういえばeye to eyeについて

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タイトル:オレ

タイトル:オレ

右目に、左手が介入してくる。

その瞬間、思考が今に戻される。
そう、こういう話をしていたんだ。この人の、オレの話を聞いていて、それを私は、右端に見える左手から受け取っていく。

煌びやかな街で、光沢のあるビルに囲まれながら彼はTシャツの裾を揺らして、真っ直ぐに前を見ながら歩いて行く。

「まあや、っていいよね」
「呼びやすくて」

曇り空が一気に晴れ出すように、
土砂降りの中、大きな虹が掛かるよ

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射手座らしさ

射手座らしさ

冥王星射手座時代を生きる私は、アクセルとブレーキを同時に踏んだり、アクセルを踏み込みすぎてそのまま壊れて、ブレーキを踏めなくなることもある。

インターネットに感謝をすることもなく、当たり前のようにネットの海に感情を流す。

「いま、ネットでバズっているのがこちらです」

そんなニュースが流れる。

「バズる」
「フォロワー」
「再生数」

そういう単語が飛び交う世界へと入っていく。

なんとなく

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yeyue

yeyue

暴風の中、高校生の視線を浴びながら、真っ直ぐな道を歩いていた。

季節は4月、暖かくなってきた頃で、長袖一枚で出かけられるのがこの上なく楽しかった。

オーバーサイズの長袖のポロシャツに、下は、ありえないほどのダメージ加工がされた、布切れ、いや、ジーンズを履いていた。

ショートパンツくらいの丈から足首まで、正面から見ると生地がなく、後ろの生地があるからやっと保たれているようなデザインだ。

きっ

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夢の中のrendez-vous

夢の中のrendez-vous

きっと、同じように樹々が生い茂り、太陽が近く、葉は光り輝き、
私たちを燃やしにくるだろう。

燃え尽きるまでは、短いようで実は長かったのかもしれない。
夢の中では、より一層ロマンチストになっていないと、説明がつかない、そう思ってしまう。

ノートの中には様々な言語が記されていて、彼がそこにチベット語の詩歌を付け足した。丁寧に説明される彼の美学は一ミリも理解できないけれど、そんな空間は恋愛の醍醐味だ

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新潟と、S

新潟と、S

もうすぐ、3年来の仲になるらしいネットの友人は新潟出身だ。自分の中の新潟の形は、彼が不意に零す言葉によって徐々に形成されていく。

そんな新潟は、いつしか行ってみたい特別な場所になり、旅行の話になれば、「次は新潟に行きたい」と口にし、興味関心が全都道府県の中でぶっちぎりの一位になっていた。

彼との出会いは、中国でコロナが流行し、日本で緊急事態宣言が出るか否か、そんな話が出た頃だった。

「新潟は

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11月という季節

11月という季節

ちょうど、この季節だった。

肌寒い季節。

1年経ったのか、2年経ったのか、

そんなことどうでもいいと思ってしまうくらい記憶の中の私たちは穏やかだ。

出会い方を説明すると、

「イカれてんね」なんて言葉が返ってきたりする。

イカれてるのかもしれない。

だけど、出会ってしまった。

キャリーケースをひきながら、

時には、上に乗ったまま夜道を走り、そして、転けた。

写真を撮り、

動画を

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面白くなくても、笑っていたい。

面白くなくても、笑っていたい。

私は面白くない。

「面白い」と言われるにはほど遠い。

面白くない癖に誰かに笑ってほしいと思う人間だ。

そして、そうやって生きてきた。



晩御飯を食べながら、学校での話をよくした。

朝のホームルームで先生が I LOVE YOU という歌詞が含まれる歌を歌って生徒にからかわれて泣いてしまったこととか。

ひよこ豆がなんせまずくて、みんな嫌いなこととか。

先生のことを間違えて「お母さん

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占いで救われた話

占いで救われた話

「誕生日いつですか?」と食い気味に、目も合わせず右隣りの男の子に尋ねられた。

その日は、その男の子とは初対面で、彼が作ってくれた麻婆豆腐を玄米にかけて食べていた。

「2月7日」と答えると、彼は表情を変えて「僕はこの誕生日の人をよく知っています。」と言った。

しかし、その表情は硬く何か「2月7日」に対してネガティブ感情があるようにも思えた。

そして、彼は淡々と「2月7日」の説明をし始めた。

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