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「力になりたいと思ってる」
夜の23時にそんなメッセージが届く。
私たちは、何度もお互いの力を交換し合って生きてきたね。
「ほんとまあやって記憶力いいよね〜」
そう言いながら、彼はウイスキーを口に運ぶ。
「じゃあ、あの時なんて言ったか覚えてる?」
私はそうやって、彼と昔の思い出の問題を出したりして。
「あー、覚えてるよ」
彼は、どうでもいいようなことをよく覚えている。
「俺は、すぐ忘れるからさ〜」と言いながら、思い出の切れ端もなんだかんだ覚えているのだ。私はそれに対してつっこんだりせずに、会話を重ねていく。
「男性脳と女性脳の違いが面白いって話も?」
もう3年以上前の、しかもLINEでの会話。
「あー、めっちゃ前じゃない?それ。俺がまだ埼玉に住んでる時じゃん」
私は、ほらこういうしょうもないことも覚えているんだよなって思いながら、相槌を打った。
彼は、長く、くるくるした黒い髪の毛を揺らしながら、肩をすくめて笑っている。
私は彼を初めて見た時、ヘラヘラしている人だなと思い、そして今でもそう思う。彼はずっと変わらない。彼が変わらない間、私は変わっていって、そして、変わらない彼を凄いと思う。
「いいじゃん」
彼は、必ず私の話にそう相槌を打つ。
きっと、私が、「明日からブラジルに住むことにする!何もまだ決めてないけど、とりあえず明日出発するから電話したー!」と言ったとしても彼は、
「いいじゃん、まあやらしいね」
と同じトーンで言うのだろう。
彼らしさって、そういうずっと変わらないところで、彼が見ている私らしさというのは、こういう何を言い出すか分からないようなところなのかもしれない。
彼はまた一つ歳を重ねて、私の年齢に追いついた。
こうやって毎年、半年間だけ同じ年齢になる期間がある。
私たち、28歳になったんだね。
アラサーではない年齢の時に出会って、そして、今ではもう、アラサーだとか、オジサンだとかそういう語彙を使いながら会話をしたりして。
幾つになっても、こうやって記憶を辿りたいと思うんだ。
30歳を迎えた記念には、私が書いてきた彼との記憶を振り返ってみたり。
「ウラジオストク行く?」
「お、いいね〜」
そんなふうに私たちの生活は進んでいく。
p.s
2024年8月12日 28回目の誕生日おめでとう、生まれてきてくれてありがとう。
文字を書くことが生き甲斐です。此処に残す文字が誰かの居場所や希望になればいいなと思っています。心の底から応援してやりたい!と思った時にサポートしてもらえれば光栄です。from moyami.