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三角関係

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1,000文字フィクションのユニットマガジン。もりきち・もりきょん・ちょーのが織り成す、背中合わせの世界観。ちょっぴり不思議で、どこかヘンテコな三角関係をあなたへ。3人それぞれの…
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#ショートショート

涼しさのどくばり

涼しさのどくばり

僕はクラゲだ。

技術が進歩したからなのか、時代がこれまでの非常識に寛容になってきたのかは分からないけれど、僕たちは陸に上がるとヒトの姿を象ることができるようになった。

けれども、ひとつ厄介な事情がつきまとう。

それは、目には見えないけれど心は隠せないということ―――。

――――――――――

ヒトの暮らしを10日間続けてみた。
とてもぜいたくな生き物だなあと思った。

コンビニはいつだって

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ラッキー7の今日だから。

ラッキー7の今日だから。

今日は7月7日。「七夕」だ。

しかも、今年は西暦77777年。
かつて人類は「地球」という星の上で暮らしていたんだって。
戦争や疫病が蔓延し、地球上の生物や僕たち人類はみな、絶滅や自然淘汰を繰り返し、世界は何周かまわった。生活の場は、地球では生存が難しくなったため、今では宇宙の天体へとおひっこし、各惑星へと広がっている。

・ ・ ・ ・ ・

僕が生まれた星からも、地球の姿がよく見えるんだ。と

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願い事は突然に。

願い事は突然に。

タバコを咥えて歩きながら
コンビニで買った酒を片手に家まで歩く。
これを買いに外に出るのさえだるい。

財布の中身はもうない。

明日の酒を買う金が無いことに、
イライラしながら頭を掻き毟る。

「金、借りるか…」

別に今帰ってるのは
自分の家でも何でもない。
最近できた女の家だ。

金も最近はそいつから借りて生活してる。

今は仕事もしてない。
まぁでもあいつが稼いでるから
俺は別に働かなくて

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ないものねだり。

ないものねだり。

この男はどこか変だ。掴みどころがないが、決定的に他の人とは異なる。
だがしかし、困ったことには、その違和感の正体が分からない。

今日こそ、この男の真実を突き止めてやる。

予鈴がなった。クラスのみんなが席に着き始める。

彼の名前はT。
おおらかで悪いやつではないが、天然なのか、時たまにみんなを呆れさせる。

今朝だって、チャイムがなる寸前に教室へ入ってきた。クラスメイトがそわそわ心配する様子な

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仕方なくいいね。

仕方なくいいね。

2,3日前に遊びに行った時の写真が投稿に流れてきた。

キャプションには「このメンツしか勝たん♡」それに添えられたいくつかのハッシュタグ。
#jk #jkの素敵な思い出 #jk3

高校一年生の入学時、友達作りに困っていた私に彼女が声をかけてくれた。おかげで高校三年間はこのグループで色んな時間を過ごせた。

でも、正直な話、私はこの居場所が好きではない。

最初はそう思うことはなかったが、時間

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私は一か月後、初めてのコーヒーを飲む。

私は一か月後、初めてのコーヒーを飲む。

私は1ヶ月後、初めてのコーヒーを飲む。

毎週末、未開拓のカフェを探し、お気に入りのカフェを見つけることが趣味の私は、今日も初めましてのカフェに来た。

観葉植物に囲まれた、緑が印象的な入り口。中に入ると、クラリネットの音が印象的なクラシックが流れていた。照明は暖色で、落ち着いていて穏やかさに満ちた空間である。

私はブレンドコーヒーを頼む。

ふと注文を受けた店員さんの顔を見る。
私と歳が近い感

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Cafe Memory.

Cafe Memory.

ママは、私の右手をぎゅっと握って離さない。

降りしきる雨に私をさらけ出さないようにと必死で守ってくれているけれど、ママが守っている私は、傘よりもアスファルトに近い。すれ違う大人たちが作り出す水沫に、何度も瞬いた。

どうして私は、こんな日にカフェに行くのだろう。

扉をくぐると、5つのカウンター席と4人掛けのテーブル席が2つ。

「ほら、ここに座ろう。」

ママがテーブル席に掛けるように促したと

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カフェとインスタグラマー

カフェとインスタグラマー

私はインスタグラマー。
カフェや喫茶店をこよなく愛し、来店の記録を写真とともにSNSにアップしている。2〜3年かけてコツコツと集めてきたフォロワーが、毎日・毎週の私の投稿を心待ちにしているのだ。

今日も、市内に新しくできたカフェに来たところ。バリスタの本格的なコーヒーがいただけるらしい。店内には販売用の自家焙煎豆や、ドリッパー、マグカップなどがずらりと並ぶ陳列棚。店長が海外のコーヒー産地へ赴いた

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