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カフェとインスタグラマー


私はインスタグラマー。
カフェや喫茶店をこよなく愛し、来店の記録を写真とともにSNSにアップしている。2〜3年かけてコツコツと集めてきたフォロワーが、毎日・毎週の私の投稿を心待ちにしているのだ。

今日も、市内に新しくできたカフェに来たところ。バリスタの本格的なコーヒーがいただけるらしい。店内には販売用の自家焙煎豆や、ドリッパー、マグカップなどがずらりと並ぶ陳列棚。店長が海外のコーヒー産地へ赴いた際に、現地の人と肩を組んで撮った写真も飾ってある。ふむふむ、あえて流行りのスイーツには手を出さず、コーヒーで勝負ってところね。

店内や客層を観察しているうちに、スタッフが本日のコーヒーを運んできた。カップもなんだか珍しい形かも。飲み口の広い、背が低めのもので統一されているみたい。たっぷり入っていて、長時間の滞在ウェルカムなメッセージかしら。

この洞察力も、カフェに通ううちに自然と身についたもの。じっくりと考察するのが癖になってる。

SNSは、その人の視点が肝。“映え”を集めたアカウントは星の数ほどあるけれど、写真と共にどんな言葉を綴るのか、そこにその人らしさがあればあるほど、ファンはついてくる。私が持つカフェへの偏愛っぷりや、深読みしがちなパーソナルの部分こそ、フォロワーが求めるコンテンツなの。

さて、まずは写真を撮らなきゃ。おっと、私をそこらへんの女子大生なんかと一緒にしないでね。好き勝手に写真を撮ってSNSにアップするのはマナー違反。ちゃんと注文時に撮影許可は取ってあるのでご心配なく。

今どきのカフェならまだしも、昔ながらの喫茶店も若者のターゲットになり始めているから困ったものね。レトロだ、エモだと言われるあの空間も、常連さんの日常の憩いの場所。そこをズケズケと踏み荒らすのはいただけないわ。そもそも喫茶店の良さっていうのは……

「ねえ。聞いてる?ねえってば。」

…え?

「今度の休みどうする?って話をしてたんだけど。」

…しまった。また自分の世界に入ってた。

「ほら、やっぱり聞いてない。せっかく2人で来てるのに、今日も携帯見てばっかりだね。いつもうわのそら。」

「ごめんなさい。ちょっと考え事してて…。」

「まあ、いいや。それよりこれ見てよ。僕たちがこの前言ったお店じゃない?SNSで勝手にあることないこと書かれたって怒ってるみたい。きっと、流行りに乗った若者が、軽い気持ちで投稿したんだろうね。」


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