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ラッキー7の今日だから。

今日は7月7日。「七夕」だ。

しかも、今年は西暦77777年。
かつて人類は「地球」という星の上で暮らしていたんだって。
戦争や疫病が蔓延し、地球上の生物や僕たち人類はみな、絶滅や自然淘汰を繰り返し、世界は何周かまわった。生活の場は、地球では生存が難しくなったため、今では宇宙の天体へとおひっこし、各惑星へと広がっている。

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僕が生まれた星からも、地球の姿がよく見えるんだ。と言っても、もちろん肉眼では無理。レンズ越しに望めるその姿は、青く澄んでいて綺麗なものだから、よくこうして1人で眺めてるってわけ。

話を戻すね。世間は、七夕。しかも、今年は西暦77777年。
7という数字が7つも並んじゃった、最高にラッキーで特別な日。

今年生まれたベビーには、「姫」や「星」、「七」にちなんだ(ある意味)きらきらネームが大流行。この星の“お姫様”と“王子様”たちは、縁起の良すぎる今日という日に、こぞって入籍の届出を出している。七夕ムーブメントが近隣の宇宙を席巻。

もう二度と訪れないであろう、七夕フィーバー。
この星に、ラッキーとハッピーが満ち溢れていた。

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こんな幸運な日に、君は1人で何をやっているのかって?

あいにく、ともにお祝い事を分かち合う相手も、予定もない。浮足だった世の中をよそ目に、僕にはあんまり関係のないイベントだ。

こうして今日も、美しい天体観測に夢中なフリをして過ごす。
別にいいんだ、ほっといてくれよ。

ん?

覗き込むレンズの先、地球の方向から、何かがチカチカしている…?

「ピコンッ」

あれ、モニターが不明なメッセージを受信したみたいだ。

「TANZAKU -最高にツイているあなたへ-」

件名にはそう書かれていた。怪しすぎる…。

ただ一つ、気になるのは 「From EARTH.」 と続いていること。

「カチッ」

思わず、興味本意で開いてみた。

「ハロー!你好!こんにちは!受け取ってくれてありがとう!」

突然、プログラムされていた拡張映像が流れ始めた。
僕と同じくらいの歳の女の子だ。

「今日は、西暦77777年の7月7日であってる?私はどうしても叶えたい願い事があって、最高にラッキーなこの日に誰かが拾ってくれるように、星の海へお手紙を放したの。」

「私が生きる時代、地球では、ウイルスでみんなと顔を合わせて会うことができなくなっちゃったの。大好きな恋人と逢えるのも、規制が解除される1年に1日だけ。」

「そちらはどう?誰かと一緒にいられる幸せを抱きしめてる?私のお願いは、私たち2人の繋がりを、永遠に語り継いで欲しいってこと。このメッセージを受けとってくれたあなたに、どうか叶えて欲しい。」

どうして、よりによってこんなにもツイてない僕が拾ってしまったんだろうと思いながら、彼女の言葉を聴いていた。

残念ながら、もうこの映像の彼女は生きていないのだろうが、何万年という時間、何万光年という距離を渡って流れ着いた、その想いを受け取ってしまった。

今日は、あの子にメッセージを送ってみよう。
どうしてもそんな気持ちが湧いてきて、居ても立ってもいられなくなっていた。

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