中田満帆

1984/07/03 兵庫県西脇市生まれ、神戸市出身在住。 詩人・童話作家=森忠明に…

中田満帆

1984/07/03 兵庫県西脇市生まれ、神戸市出身在住。 詩人・童話作家=森忠明に師事。 文藝、写真、絵、音。  HP https://mitzho84.wixsite.com/ampp Blog https://mitzho84.hatenablog.com/

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記事一覧

豚どもに火を放て──短歌について

   *  20年ほどまえに「新アララギ」の掲示板で短歌を投稿していた。たびたび撰者のほうから、かれが改作・添削した歌を押しつけられたことがある。最初のほうはおれ…

中田満帆
4日前
6

ルード・ボーイたち

 鍵穴が合わない夕べ地階にて癌検診の通知受取る  裏階段上るだれかのかげをいまひとりじめする身勝手ばかり  布ひとひら浮かぶ人工河川やがて来るだろ…

中田満帆
3週間前
3

第5詩集『不/適/当/詩/劇』刊行

最期の詩集を刊行した。'22年から書き始め、今月になってようやく完成した。これからは歌人として活動する。    *  夜の雷光 9  夢であることの悲しみ 11  …

中田満帆
3週間前
4

レイモンド・チャンドラーの猫

 レイモンド・チャンドラーの猫はタケというなまえだったのだが、  来訪するアメリカ人たちの発音によってタキとゆがめられ、  図らずも、bamboo から water fall へと…

中田満帆
1か月前
5

電波塔にて

 きみのいうことがうそならそれもうそ ちがう芝居をたぐる演劇  誘導灯ならぶ路次があやしい夜のこと 近づいて来る少女ゐたりぬ  抜ける光りあり 週末をめぐる冒険…

中田満帆
1か月前
4

おれの徒然〈19〉「40歳」篇

 きょうでいよいよ40になった。獲たものよりも失ったものを算えてしまう。なにしろ、このひでえ人生で起きた出来事といったら救いがない。それでもじぶんを救いだすために…

中田満帆
1か月前
2

マグ・ショット

   *  松の木の太さにおもうはらからの首にふさわしい縄はありしかと  欲望にひだるいちじつ雨露を受ける樋すら悲しいひまぐらし  鍵穴が合わない夕べ地階にて癌…

中田満帆
1か月前
3

内なる猫

   *  孤悲というおもいちがいに囚われて身うごきできぬ夏の疚しさ  野に棲まう男ありしや炎天に燃ゆる月さえきょうはさみしい  狩り人のゐないゆうぐれ犀星の『…

中田満帆
1か月前
2

守護天使の休息

 午後まで晴れていたのに  それからはずっと  降りやがって  いまはもうちがった肉体が  駅を拒みつづけるのはいったい、  どういった理由なんだ、運転手さん  おれ…

中田満帆
1か月前
2

days (for all enemies)

★ なんとか生き残ったというだけの1日 今月はもうカラケツ 20,000在った貯蓄もなし その金でギターを、ギターを買おうとおもっていたのに 安物のシンラインか、エス…

中田満帆
2か月前
1

hydrangeas sway the river

★ ギターの件はけっきょくメーカー補修ということになった まあ、「STORIA Ⅰ」は小ぶりなギターだし、 それに執着するのもおかしい NAGIが直ればそれでいい 最近は…

中田満帆
2か月前
3

おれの徒然〈17〉「ギターの悲劇」篇

 4時10分に起きる。朝餉の支度。うたた寝。4時43分まで寝てしまう。朝餉。蕎麦は不味かった。眠れない。時間だけがたっぷりある。ようやく6時まえ。あと2時間半だ。ひと眠…

中田満帆
2か月前
3

Cabbage-Head’s Delusions

★ きのう病院でアテロームの処置をしてもらった 陰嚢にできたそれはデカくて外科で対処し切れずに皮膚科に代わってもらったんだ 局部麻酔をかけて5mm切って、なかの膿をだ…

中田満帆
2か月前
2

中篇小説集『犬を裁け』のための著者解説

 去年だした、著作『犬を裁け』を内容を変えて再出版しました。エッセイと批評を排除し、新たに2篇の未収録作品を追加しました。以下、収録作。  ・犬を裁け(2018) …

中田満帆
3か月前
6

おれの徒然〈16〉「滝への長い小径」篇

   *  きのう、大滝詠一のラジオ動画を流しながら、『大滝詠一レコーディング・ダイアリーvol.1』を読んでいた。ふいにおもいたって配信番組のための追加録音をした…

中田満帆
3か月前
3

おれの徒然〈15〉「フレットレスベース、到着」篇

 きょうの13時、おれは午睡していた。呼び鈴が鳴って起きると、こいつが届いていたわけだ。人生で2度めのベース購入。まえは10年くらいまえに買って、すぐに売ってしまっ…

中田満帆
3か月前
2

豚どもに火を放て──短歌について

   *

 20年ほどまえに「新アララギ」の掲示板で短歌を投稿していた。たびたび撰者のほうから、かれが改作・添削した歌を押しつけられたことがある。最初のほうはおれもじぶんなりの改稿をだしていたのだが、あるとき、とある人物から「おれがもう添削したんだから、それを受け入れろ」という趣旨のありがたきことばを頂いた。そもそも発生源のちがうことばをなぜじぶんのことばとして受け入れなければならないのか、おれ

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ルード・ボーイたち

 鍵穴が合わない夕べ地階にて癌検診の通知受取る  裏階段上るだれかのかげをいまひとりじめする身勝手ばかり  布ひとひら浮かぶ人工河川やがて来るだろう裁きなど忘れつ  〈屠〉という字やがて葬られる字なり夏の蝿集る場所もなくて  咲きそめる花は嵐か 従業員通用口に吹きだまるもの  愛の経験もなしに道ゆくわれのなかを走り抜ける夏のしぶき

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第5詩集『不/適/当/詩/劇』刊行

最期の詩集を刊行した。'22年から書き始め、今月になってようやく完成した。これからは歌人として活動する。

   *

 夜の雷光 9
 夢であることの悲しみ 11
 暗がりで手を洗う 13
 まちがい 16
 駅にムササビが 18
 七月 21
 たとえば夢が 25
 友だち 27
 ぼくらが幽霊になるまで 30
 ムンクの星月夜 32
 夏のよるべ 34
 feel

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レイモンド・チャンドラーの猫

 レイモンド・チャンドラーの猫はタケというなまえだったのだが、
 来訪するアメリカ人たちの発音によってタキとゆがめられ、
 図らずも、bamboo から water fall へと変身を遂げた
 われわれはなにかを誤解すること、
 おもいちがうことによって、
 世界というものの真に近づくのである

 イギリスの夏──午後は長い
 永遠だとジョン・パリンドンはおもう
 それはまさにイギリス人とおなじ

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電波塔にて

 きみのいうことがうそならそれもうそ ちがう芝居をたぐる演劇

 誘導灯ならぶ路次があやしい夜のこと 近づいて来る少女ゐたりぬ

 抜ける光りあり 週末をめぐる冒険さそう写真館のあたり

 ゆうまぐれ踊る警備のひとだれかとめておくれよ立入禁止

 鞭のごとき愛ありぬたしかめあう傷みをもってふたり繋がれり

 なまえを失った場所に咲く花を摘む──そしてぼくはひとり

 街頭スナップを撮るおれの愉楽よ

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おれの徒然〈19〉「40歳」篇

 きょうでいよいよ40になった。獲たものよりも失ったものを算えてしまう。なにしろ、このひでえ人生で起きた出来事といったら救いがない。それでもじぶんを救いだすために多くを読んで来たし、多くを書いて来た。これからもおなじことだ。痔の苦しみがようやく去って、いまは安堵している。きのうは最期の詩集の解説文が届いたし、あとは序文と題名があれば完成だ。第2歌集も今月いっぱい詠めばできあがる予定だ。まあ、実際に

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マグ・ショット

   *

 松の木の太さにおもうはらからの首にふさわしい縄はありしかと

 欲望にひだるいちじつ雨露を受ける樋すら悲しいひまぐらし

 鍵穴が合わない夕べ地階にて癌検診の通知受取る

 なぞるような高架道路の灯火がいやに淋しい寂滅が待つ

 それはきっと合図にちがいなく脱いだ眼鏡に月が骨ばる

 裏階段上るだれかのかげをいまひとじめする身勝手ばかり

 わたくしをわたしたらしめ地下鉄の天井工事や

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内なる猫

   *

 孤悲というおもいちがいに囚われて身うごきできぬ夏の疚しさ

 野に棲まう男ありしや炎天に燃ゆる月さえきょうはさみしい

 狩り人のゐないゆうぐれ犀星の『蜜のあわれ』をひらく寝台

 青穹を隠したりぬる午後の雨たがいちがいの貌とりかえる

 「神がまだゐない夜明けを歩きたい」二宮神社の境内に立つ

 黄金の道よこたわる定めという一語消し去る車を待てり

 きみどりの酸っぱい夏場すかんぽ

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守護天使の休息

 午後まで晴れていたのに
 それからはずっと
 降りやがって
 いまはもうちがった肉体が
 駅を拒みつづけるのはいったい、
 どういった理由なんだ、運転手さん
 おれが待っていた、すべての休息のなかで
 頰笑んだはずのものが泣いているのに
 バスがでないのは天候ばかりが理由じゃないんだ
 おれは最後に頰笑みたかった
 だのにやつらはおれを地上に巻き込んだ
 時代遅れの拷問器具でおれの躰を否定する

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days (for all enemies)



なんとか生き残ったというだけの1日

今月はもうカラケツ

20,000在った貯蓄もなし

その金でギターを、ギターを買おうとおもっていたのに

安物のシンラインか、エスクワイヤーのストラトで

おれはロックンロールをやりたかったのに

またも酒に裏切られ、

譫妄と幻覚と痔の再発に狂いながら医者へ

以前治まったものを根治しなかったから、

以前よりもひどい状態になってしまってた

計画が

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hydrangeas sway the river



ギターの件はけっきょくメーカー補修ということになった

まあ、「STORIA Ⅰ」は小ぶりなギターだし、

それに執着するのもおかしい

NAGIが直ればそれでいい

最近は買いもの尽くめ

沖ななも歌集『衣裳哲学』、

寺山修司『地平線のパロール』、

ルーパーのためにマイク・ケーブル、

映画『コントロール』のデラックス盤、

炭酸水、絆創膏、雑巾、リンゴ酢、

CALのAC/DCステー

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おれの徒然〈17〉「ギターの悲劇」篇

 4時10分に起きる。朝餉の支度。うたた寝。4時43分まで寝てしまう。朝餉。蕎麦は不味かった。眠れない。時間だけがたっぷりある。ようやく6時まえ。あと2時間半だ。ひと眠り。折坂悠太がでる夢を見た。8時まえに起きる。入金確認。まずはネットで買う食糧から。プロテイン、リンゴ酢、トマト鍋の素。それから貯金代わりにギフト券を¥10,000分チャージする。8時45分に外出。業務スーパーへ。鶏胸肉⁵、燕麦³を

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Cabbage-Head’s Delusions


きのう病院でアテロームの処置をしてもらった
陰嚢にできたそれはデカくて外科で対処し切れずに皮膚科に代わってもらったんだ
局部麻酔をかけて5mm切って、なかの膿をだして洗った
次は金曜日の診察、それまでに何度かガーゼを張り直す必要があった
ロキソニンを嚥みながら、こいつを書いてる
金曜は金が入る
午前中はずっと買いだし、公共料金の支払い
午後2時半に再診がある
夜には芦野夕狩氏をゲストにお喋り

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中篇小説集『犬を裁け』のための著者解説

 去年だした、著作『犬を裁け』を内容を変えて再出版しました。エッセイと批評を排除し、新たに2篇の未収録作品を追加しました。以下、収録作。

 ・犬を裁け(2018)

 ・ソクラテスというポン引き(2018)

 ・倉庫街のタンゴ(2015,習作)



著者解説「事物と愁い」 

 ここに収めた作品群はページ数も内容も半端で、独立した作品集に掲載するにはあまりも発展途上にあり、作品として生彩に

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おれの徒然〈16〉「滝への長い小径」篇

   *

 きのう、大滝詠一のラジオ動画を流しながら、『大滝詠一レコーディング・ダイアリーvol.1』を読んでいた。ふいにおもいたって配信番組のための追加録音をした。番組OP、タイトル・コール、前説用の音楽、エンディング用にベースを録音した。なかなかうまくいったとおもうが、ディレクターの三浦果実氏が採用するかはわからない。

 きょうで20日だ。24日には工賃が入る。食糧はぎりぎり。セルフ兵糧攻

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おれの徒然〈15〉「フレットレスベース、到着」篇

 きょうの13時、おれは午睡していた。呼び鈴が鳴って起きると、こいつが届いていたわけだ。人生で2度めのベース購入。まえは10年くらいまえに買って、すぐに売ってしまったのだけれど、今回はそうじゃない。本気でやるために買った。

 今回はフレットレスということで、そのメリットやデメリットも調べた。それでこれを注文。ほんとうなら近所のバッカス堂で安く買うつもりだったものの、「5月再入荷予定」が待ちきれず

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