中田満帆

1984/07/03 兵庫県西脇市生まれ、神戸市出身在住。 詩人・童話作家=森忠明に…

中田満帆

1984/07/03 兵庫県西脇市生まれ、神戸市出身在住。 詩人・童話作家=森忠明に師事。 文藝、写真、絵、音。  HP https://mitzho84.wixsite.com/ampp Blog https://mitzho84.hatenablog.com/

マガジン

最近の記事

電波塔にて

 きみのいうことがうそならそれもうそ ちがう芝居をたぐる演劇  誘導灯ならぶ路次があやしい夜のこと 近づいて来る少女ゐたりぬ  抜ける光りあり 週末をめぐる冒険さそう写真館のあたり  ゆうまぐれ踊る警備のひとだれかとめておくれよ立入禁止  鞭のごとき愛ありぬたしかめあう傷みをもってふたり繋がれり  なまえを失った場所に咲く花を摘む──そしてぼくはひとり  街頭スナップを撮るおれの愉楽よ坂をあがって神戸シナゴーグまで  昭和モダニズム建築群撮影する夏至越えてあたり

    • おれの徒然〈19〉「40歳」篇

       きょうでいよいよ40になった。獲たものよりも失ったものを算えてしまう。なにしろ、このひでえ人生で起きた出来事といったら救いがない。それでもじぶんを救いだすために多くを読んで来たし、多くを書いて来た。これからもおなじことだ。痔の苦しみがようやく去って、いまは安堵している。きのうは最期の詩集の解説文が届いたし、あとは序文と題名があれば完成だ。第2歌集も今月いっぱい詠めばできあがる予定だ。まあ、実際に歳をとってみればなんのこともない。ただただ日常がつづくだけだ。今週はヤフオクでオ

      • マグ・ショット

           *  松の木の太さにおもうはらからの首にふさわしい縄はありしかと  欲望にひだるいちじつ雨露を受ける樋すら悲しいひまぐらし  鍵穴が合わない夕べ地階にて癌検診の通知受取る  なぞるような高架道路の灯火がいやに淋しい寂滅が待つ  それはきっと合図にちがいなく脱いだ眼鏡に月が骨ばる  裏階段上るだれかのかげをいまひとじめする身勝手ばかり  わたくしをわたしたらしめ地下鉄の天井工事やがて終わりぬ  布ひとひら浮かぶ人工河川やがて来るだろう裁きなど忘れつ  屠

        • 内なる猫

             *  孤悲というおもいちがいに囚われて身うごきできぬ夏の疚しさ  野に棲まう男ありしや炎天に燃ゆる月さえきょうはさみしい  狩り人のゐないゆうぐれ犀星の『蜜のあわれ』をひらく寝台  青穹を隠したりぬる午後の雨たがいちがいの貌とりかえる  「神がまだゐない夜明けを歩きたい」二宮神社の境内に立つ  黄金の道よこたわる定めという一語消し去る車を待てり  きみどりの酸っぱい夏場すかんぽの茎剪るような少年時代     夏蟲の複眼きびしわれを射る羽なきものを蔑すもの

        電波塔にて

        マガジン

        • for MISSING/newsletter
          4本

        記事

          守護天使の休息

           午後まで晴れていたのに  それからはずっと  降りやがって  いまはもうちがった肉体が  駅を拒みつづけるのはいったい、  どういった理由なんだ、運転手さん  おれが待っていた、すべての休息のなかで  頰笑んだはずのものが泣いているのに  バスがでないのは天候ばかりが理由じゃないんだ  おれは最後に頰笑みたかった  だのにやつらはおれを地上に巻き込んだ  時代遅れの拷問器具でおれの躰を否定する  熱く腫れ上がった肛門に毒汁を流し入れたんだ  こんなことが罷るところでいったい

          守護天使の休息

          days (for all enemies)

          ★ なんとか生き残ったというだけの1日 今月はもうカラケツ 20,000在った貯蓄もなし その金でギターを、ギターを買おうとおもっていたのに 安物のシンラインか、エスクワイヤーのストラトで おれはロックンロールをやりたかったのに またも酒に裏切られ、 譫妄と幻覚と痔の再発に狂いながら医者へ 以前治まったものを根治しなかったから、 以前よりもひどい状態になってしまってた 計画が頓挫しつづける人生、 噫、折坂悠太のチケットも、 かれの新作も買えない、

          days (for all enemies)

          hydrangeas sway the river

          ★ ギターの件はけっきょくメーカー補修ということになった まあ、「STORIA Ⅰ」は小ぶりなギターだし、 それに執着するのもおかしい NAGIが直ればそれでいい 最近は買いもの尽くめ 沖ななも歌集『衣裳哲学』、 寺山修司『地平線のパロール』、 ルーパーのためにマイク・ケーブル、 映画『コントロール』のデラックス盤、 炭酸水、絆創膏、雑巾、リンゴ酢、 CALのAC/DCステーション(中古)、 ロモグラフィーのフィルム、 ギター専用湿度調整剤、 ルー

          hydrangeas sway the river

          おれの徒然〈17〉「ギターの悲劇」篇

           4時10分に起きる。朝餉の支度。うたた寝。4時43分まで寝てしまう。朝餉。蕎麦は不味かった。眠れない。時間だけがたっぷりある。ようやく6時まえ。あと2時間半だ。ひと眠り。折坂悠太がでる夢を見た。8時まえに起きる。入金確認。まずはネットで買う食糧から。プロテイン、リンゴ酢、トマト鍋の素。それから貯金代わりにギフト券を¥10,000分チャージする。8時45分に外出。業務スーパーへ。鶏胸肉⁵、燕麦³を買って帰る。荷解き。休憩。総計が¥23,000として、あと¥6,039遣える。あ

          おれの徒然〈17〉「ギターの悲劇」篇

          Cabbage-Head’s Delusions

          ★ きのう病院でアテロームの処置をしてもらった 陰嚢にできたそれはデカくて外科で対処し切れずに皮膚科に代わってもらったんだ 局部麻酔をかけて5mm切って、なかの膿をだして洗った 次は金曜日の診察、それまでに何度かガーゼを張り直す必要があった ロキソニンを嚥みながら、こいつを書いてる 金曜は金が入る 午前中はずっと買いだし、公共料金の支払い 午後2時半に再診がある 夜には芦野夕狩氏をゲストにお喋り 次の夜はきのゆきこまち氏をゲストにお喋りだ ★ きょうはまた酒を呑んでしまう夢を

          Cabbage-Head’s Delusions

          中篇小説集『犬を裁け』のための著者解説

           去年だした、著作『犬を裁け』を内容を変えて再出版しました。エッセイと批評を排除し、新たに2篇の未収録作品を追加しました。以下、収録作。  ・犬を裁け(2018)  ・ソクラテスというポン引き(2018)  ・倉庫街のタンゴ(2015,習作) ★ 著者解説「事物と愁い」   ここに収めた作品群はページ数も内容も半端で、独立した作品集に掲載するにはあまりも発展途上にあり、作品として生彩に欠けかけている。それでも書物として編輯したのはこれら撰外作品に通底する、挑戦めい

          中篇小説集『犬を裁け』のための著者解説

          おれの徒然〈16〉「滝への長い小径」篇

             *  きのう、大滝詠一のラジオ動画を流しながら、『大滝詠一レコーディング・ダイアリーvol.1』を読んでいた。ふいにおもいたって配信番組のための追加録音をした。番組OP、タイトル・コール、前説用の音楽、エンディング用にベースを録音した。なかなかうまくいったとおもうが、ディレクターの三浦果実氏が採用するかはわからない。  きょうで20日だ。24日には工賃が入る。食糧はぎりぎり。セルフ兵糧攻めだ。月の終わりはいつも経済封鎖に遭っているありさま、為体。望みはあまり見えない

          おれの徒然〈16〉「滝への長い小径」篇

          おれの徒然〈15〉「フレットレスベース、到着」篇

           きょうの13時、おれは午睡していた。呼び鈴が鳴って起きると、こいつが届いていたわけだ。人生で2度めのベース購入。まえは10年くらいまえに買って、すぐに売ってしまったのだけれど、今回はそうじゃない。本気でやるために買った。  今回はフレットレスということで、そのメリットやデメリットも調べた。それでこれを注文。ほんとうなら近所のバッカス堂で安く買うつもりだったものの、「5月再入荷予定」が待ちきれず、わざわざ割高なのを大分のショップから買った。  早くも残金が底をつく勢いで買

          おれの徒然〈15〉「フレットレスベース、到着」篇

          猫──あるいはイギリスの夏

           レイモンド・チャンドラーの猫はタケというなまえだったのだが、  来訪するアメリカ人たちの発音によってタキとゆがめられ、  図らずも、bambooからwater fallへと変身した  われわれはなにかを誤解すること、  おもいちがうことによって、  世界というものの真に近づくのである  イギリスの夏は遠い  手のひらが熱くなる午後の港  たったいま交わした約束がでたらめだったと  吐きすてることもできないいまま客船を見送る  どこにもトポスを持てない、  われわれの世代

          猫──あるいはイギリスの夏

          a son of subhuman

          まえの土曜のツイキャス配信から、 Youtubeの投稿動画のアイデアに繋がった、 おれと歌誌「帆」広報の三浦果実氏とトーク番組を始めるということだ いまさらYoutuberとは古いのだけれど、 ひとと話すことは最近愉しい というわけで、 きょうはOP曲、ED曲、ジングルをつくった ガットギター、カシオ・トーンバンク、Volca Beats+tarariraで。 ジングルには声も入れてみた なかなかうまくいったとおもう アイコンや、「広告募集中」の画像もつく

          a son of subhuman

          呼び声 04/26

             *    夏妊む幹のやさしさなどを識るかたわれもない存在のなか  いつわりのわが家わが妻遠ざかる水のなかにて自己見失なば  ひたさわぐ葉桜通り指をもて16ビートを刻むゆうまぐれ  まぎれてもなお叫ぶ死者あり書物とは祝祭の一形態なり  破戒することのよろこび絶えぬなか射撃音すら愛しくおもう  わかもののふりして晩熟嗤いたるおとこのようなかぜが吹いてる  なきにせよ 残されたものを咀嚼する家並み遠い午後の潮風  アリシアの髪留め残る棺にて捧げられたる友のひと

          呼び声 04/26

          拳闘士の休息《無修正版》

           試合開始はいつも午前3時だった  父にアメリカ産の安ウォトカを奪われたそのとき  無職のおれはやつを罵りながら  追いまわし  眼鏡をしたつらの左側をぶん撲った  おれの拳で眼鏡が毀れ  おれの拳は眼鏡の縁で切れ、血がシャーツに滴り、  おれはまた親父を罵った  返せ!  酒を返せ!  おれの人生を返せ!  おまえが勝手に棄てたおれの絵を、おれの本を、おれのギターを!  凋れた草のような母たちが、姉と妹たちがやって来て、  アル中のおれをぢっと眺めてる  おれはかの女らにも

          拳闘士の休息《無修正版》