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#ショートショート
『茜空に待っているのは君のこと。』(2)
あの夏のあの日、あまりの暑さに、近所のコンビニエンスストアまでアイスを買いに行き、
帰りは自然公園を通り、近道をすることにした。
その道中、道端のベンチの上に立ち、背伸びをしながら腕を伸ばしている少女がいた。
風が吹いたら、見てはいけないものを見てしまう気がして、地面に目を逸らす。
さっさと通り過ぎてしまおうかと思ったが、
白いワンピースを着て、麦わら帽子を被っている後ろ姿を見て、
僕は妹を
『夏の終わりに思い出すのは君のこと。』(10)完
花屋「フローリスト スドウ」は、会社から徒歩 5分程の場所にある。
女性オーナーがお店に居て、仕事で花の贈答が必要な際に、社会のいろはをよく分かっていない私の相談に乗ってくれた。
仕事を終えた夜 8時でも、「フローリスト スドウ」は開いている。
お店の柔らかな光に吸い込まれるように、お店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ。」と、
迎えてくれたのは、男の人の声だった。
オーナー以外にもう一
『夏の終わりに思い出すのは君のこと。』(9)
あの夏から、10年が経った。
私は大学を卒業して、今年の春、食品会社に就職をした。
まだまだ、先輩に教わることばかりだけれど、同期の翠月と桃華の頑張っている姿に刺激をもらい、何とか出来ることを少しずつ増やしている。
今年の夏は、猛暑だった。
営業のため、外周りをしていると、何度も意識が遠のきそうになる。
それでも、いつもの夏と同じ様に空は青く、蝉も鳴いていて、
私は毎日ガリガリ君を食べていた
『夏の終わりに思い出すのは君のこと。』(7)
彼は、何故、私の名前を知っていたんだろう。
不思議に思ったが、ベンチの上を見て、すぐに察した。
スケッチブックにも、色鉛筆のケースにも、
覚えたての筆記体の英語で、名前を書いたシールが貼られていた。
アキヒロくんは、これを見て、私がテラシマ アカリだと知ったのだ。
私は何てマヌケなんだろうと、笑えてきた。
突然現れた、知らない男の子。
私は知らないけれど、彼は前から私を知っていてくれた。
そ
『夏の終わりに思い出すのは君のこと。』(4)
男の子の姿を確認すると、
私は、「アイスありがとうー!」と、彼に届くように、お腹に力を入れて声を出した。
少し先にいる彼は、その声が聞こえたらしく、手を振って応えた。
駆け足で私の元に来た彼は、
一本の木の棒を右手に持っていた。
私が、「それ、どうしたの?」と聞くと、
彼は、「これ、探してきた。使うの。」と、
ニヤリと笑った。
それは、まっすぐ細い木の枝で、30cmほどはありそうだ。
先が
『夏の終わりに思い出すのは君のこと。』(2)
ビーチサンダルを脱ぎ、裸足でベンチに体育座りをする。
描くのは、ここから見上げた、クヌギの木のあるの風景。
私は、膝の上にスケッチブックを抱えるように持ち、
ベンチの空いたスペースに、色鉛筆のケースを広げた。
青色の色鉛筆を手に取り、木の輪郭を書き始める。
木だからといって、茶色で書き始める必要はない。
今年の私の夏は、涼しいこの場所。
だから、青色がいい。
私は、クヌギの木の肌のゴツゴツ