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めけめけ
2019年2月20日 11:46
今、私が抱えている問題はこれまでになく深刻なものだった。 その深刻さをお伝えするのに、私は労を一切惜しまないし、また、そうしなければ、この難題について、多くの人の理解を得ることはできないだろう。 問題の解決に当たり、私は臨機応変に対応することが求められる。そして高度な柔軟性を維持し、その都度対応しなければならないのである。 それらを鑑み、問題提起を差せてもらえば、"女と言うのはかくも面
2019年2月14日 12:47
「ねぇ、ノブ。人を許すって、どういうことかなぁ」 アキは車の助手席でスマフォを眺めながら話しかけてきた。「どうもこうもなくなねぇ? 許すって、いうんだから、そりゃあ、許すんだろう」 ノブは追い越し車線に車をすべらせて白いワゴンを抜き去った後、また走行車線に戻した。「ノブってさぁ、そういうところ単純っていうか、シンブルだよね」 ラジオが夜の11時を過ぎたことを知らせた。ノブがアキを車に乗せ
2019年2月7日 17:43
誰もいない――つまり僕しかいない部屋の中で、こたつの中から人らしきうめき声が聞こえてくるというだけで、これはもう、ミステリーというよりはホラーである。 ホラーは困る。だから僕は謎を解くことにしたのだが、まずは身の安全を図るべきだろう。 速やかに部屋を出るか――冬のこの寒空に行く当てもない。誰かに助けを求めるか――まさか、こたつからうめき声が聞こえるからと、そんな理由で呼び出せるような知人友
2019年2月6日 11:53
※こちらをお読みになる前に『mizuwari』を読んでいただけると、より楽しんでいただけます。「いらっしゃい」 懐かしい声が、僕を迎えてくれた。「どうも、ご無沙汰しています」 カウンターの席に座る。マスターはグラスを拭きながら温かく、そしてさりげなく迎え入れてくれた。「どうも、お久しぶりですね」 忘れられているとは思わなかったけど、不安がなかったかといえば、嘘になる。
2019年2月5日 12:47
「"ありがとう"って言って、それで別れるつもりだったんだぁあ。わたし」 彼女は手に持ったグラスを眺めながら、口をとがらせて、そう訴えた。「でも、あの人があんなこと言うから……」 カラン、カラン、カラン グラスにはすっかり溶けてしまった小さな氷が浮いている。それをくるくると回すたびに、安っぽい音がする。「わたし、わかってたんだ。こうなること。だから覚悟はしていたし、あの日だって半
2019年2月1日 10:17
その少年と出会ったのは、小雨の降る夕方の公園だった。「ボク、ひとりかい?」 そう声をかけるまでの間、私はタバコを1本吸い、自動販売機で缶コーヒーを買って飲み干し、パンパンになった携帯灰皿に吸殻を押し込んでからのことだった。「うん」 6月。長梅雨の真っ只中。天気予報を見る気にもなれない。「こんな雨の中で、何をしてるんだい?」 小学校に上がったかあがっていないかくらいの男の子