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【note集】はじめての麻酔科

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麻酔って、なんでそうするんだろう? はじめて麻酔の現場をみる人向けに 「麻酔科医がなにを考えているのか、やさしく解説する」をコンセプトにしたnote集📚 全35記事 1記事…
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#麻酔

【note集】はじめての麻酔科【もくじ】

【note集】はじめての麻酔科【もくじ】

麻酔って、なんでそうするんだろう?

かつて自分が麻酔科研修をしていた頃、疑問だらけでした。

「どうしていま鎮痛薬を増やすんだろう」

とか

「なんでこの吸入麻酔薬の濃度なんだろう」

とか

上級医によって言うことも違いました。
教科書をみても、はっきりとした答えがないこともありました。

しかし、麻酔はしなければなりません。
決断をしなければなりません。

どう考えて行動を選択していけばい

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鎮静薬を中断すると目がさめる(わけではない)

鎮静薬を中断すると目がさめる(わけではない)

麻酔科外来で患者さんからこんな質問をよくされます。

「麻酔ってどのくらいで目がさめるんですか?」

私の答えは、

「薬の投与をやめると15分くらいで目が覚めてきますよ」

です。

これは
ある意味正しくて、ある意味まちがっています。

正しいのは、そのように目が覚める薬があること。
まちがいは、投与をやめるだけでは目が覚めない薬もあることです。
前者がプロポフォール、後者が吸入麻酔薬のことで

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鎮痛を調整する

鎮痛を調整する

手術も終盤。
外科医が皮膚を縫い始めた。

麻酔科医
「そろそろレミフェンタニルを下げようか。」

研修医
「あ、はい!」
(まだ手術は終わっていないのに、鎮痛薬減らしちゃって大丈夫なのかな、、?)

今回は手術終了に向けた鎮痛の調整についての話です。
終わりに向けて麻酔科医が何を考えているのかを解説します!

■ multi modal analgesia最近の麻酔ではmulti modal a

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麻酔中の鎮静度合いは脳波で判断する

麻酔中の鎮静度合いは脳波で判断する

麻酔中
患者さんがどのくらい寝ているか、
麻酔科医はどう判断しているの?

結論、脳波を見て判断しています。
さっそく見ていきましょう!
トップ画がなんなのかはすぐにわかります。

■ BISモニターで脳波をみる脳波の測定というと
頭に電極をたくさんつけて測るイメージがありませんか?

てんかんの診断など詳しく分析が必要な場合は
上図のようなセッティングになります。

一方で手術室は
シールひとつ

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【全身麻酔中】痛みを判断する2つの軸

【全身麻酔中】痛みを判断する2つの軸

全身麻酔中

研修医
「心拍数と血圧があがったら患者さんが「痛がっている」っていうことですよね?」

麻酔科医
「基本はね。でもそうじゃないことも結構あるんだよ。」

例外もあるので、
総合的な判断が必要になります。

というのが前回の話でした。

今回は、

心拍数の上昇
血圧の上昇


本当に「痛み刺激」由来なのか?
その総合的な判断の仕方
についてまとめます。

(ちょっと長めの記事です。

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【全身麻酔中】痛いと心拍数・血圧が上昇する(でも例外が結構あります)

【全身麻酔中】痛いと心拍数・血圧が上昇する(でも例外が結構あります)

全身麻酔導入が終わり、手術が始まった。

麻酔科医
「患者さんが痛がっているか、ってどうやって判定する?」

研修医
「えっと、心拍数の上昇とか血圧の上昇ですか?」

麻酔科医
「そうだね!でも、、」

例外が結構あります。

■心拍数と血圧の上昇が基本

さきの会話で研修医が答えてくれた通り、

全身麻酔中の痛みの判定は、
心拍数と血圧の上昇が基本です。

簡単に流れを説明すると
図のようになり

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【ポイントは2つ】麻酔導入直後の呼吸器設定

【ポイントは2つ】麻酔導入直後の呼吸器設定

昔、人工呼吸器がなかった頃
麻酔中は麻酔科医がずっとバックをもんで「手動で」換気をしていました。
今はこれを自動でやってもらうわけです。

その為には指示(呼吸器設定)をしなければなりません。

挿管直後の人工呼吸は「とりあえず」の設定でOKです。

なぜなら呼吸器設定はバチっとはじめから決まるものではないからです。
患者さんの状態をみながら調整していきます。

とりあえずスタートしてみて、それか

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実は最も困難な手技、胃管挿入

実は最も困難な手技、胃管挿入

麻酔科の数ある手技の中で、一番難しい手技は胃管挿入です。

え?挿管とかCVとか、硬膜外麻酔じゃないんですか?

そう思う人もいるかも知れません。
が、最も手こずるのは胃管なんです。

報告にもよりますが、
文献上でも意識のない、挿管されている人の
胃管挿入初回成功率は50%程度です。

胃管挿入が難しくて、手術開始が遅くなってしまうこともあります。

「なんで胃管ごときが入らないんだ。」

そん

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麻酔科医は周術期マネージャーである

麻酔科医は周術期マネージャーである

麻酔科医は「周術期マネージャー」

麻酔科医と聞いてみなさんは何を思い浮かべますか?
やはり手術室で患者さんに麻酔をかけている姿でしょうか。
確かに「手術室で麻酔をかける」のは基本です。
しかし、麻酔科医の真価は周術期の危機管理・安全管理にあります。
麻酔をかける行為はその一部に過ぎません。

麻酔科医は内科医師のように自分で投薬治療はできません。
また外科医師のように手術もできません。
なので何

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【麻酔科研修】麻酔薬投与

【麻酔科研修】麻酔薬投与

前回までのまとめ麻酔導入はさまざまな生理学的変化に迅速に対応するパート。麻酔のハイライトである。
この15分くらいの間に多くのことをおこなっています。
最低限行う処置は以下の8つで、今回はそのうちの ③麻酔薬投与 について解説しようと思います。

①ライン確保
②前酸素化
③麻酔薬投与
④メパッチ貼付
⑤マスク換気
⑥挿管
⑦呼吸器設定
⑧胃管挿入

最後にまとめもあるのでぜひ最後までご覧ください

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