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麻酔科医は周術期マネージャーである

麻酔科医は「周術期マネージャー」

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麻酔科医と聞いてみなさんは何を思い浮かべますか?
やはり手術室で患者さんに麻酔をかけている姿でしょうか。
確かに「手術室で麻酔をかける」のは基本です。
しかし、麻酔科医の真価は周術期の危機管理・安全管理にあります。
麻酔をかける行為はその一部に過ぎません。

麻酔科医は内科医師のように自分で投薬治療はできません。
また外科医師のように手術もできません。
なので何か問題があると他科医師に即相談です。
周術期の様々な問題をいろいろな人に相談します。
1人では解決できないことを麻酔科医は知っています。

一方で手術室を中心に活動をする麻酔科医は、
そこで起こる様々な問題についてよく知っています。

例えば、喘息持ちの患者さんが1ヶ月以内に発作を起こしていると症状が悪化する可能性が高い。とか。

湯船に浸かるだけで息があがるなら手術に耐えられないかもしれない。
とか。
だから「問題となりそうなこと」を洗い出すのが得意です。

問題を洗い出し、
適切な人に相談し、
全体がうまくいくように調整する。

そう、麻酔科医はマネージャーなのです。


麻酔科医は「プレイヤー」でもある

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それでもやはり「麻酔をかける」のは基本の「き」です。
一人前のマネージャーになるには現場を知らなければなりません。
麻酔科医におけるそれは「手術中の経過」と「手術後の経過」です。
それらを把握することで適切な「手術前・手術後の介入」ができるようになります。

研修医の先生方にはまず「手術中の経過」を学んでもらいます。
現場を知るためです。
プレイヤーとして手術・麻酔管理に参加します。
また、ここで起こる問題を解決できなければ、
手術前・手術後の介入も無意味なものになるからです。

また問題の調整には、「いつまでに調整するか」という課題が常にあります。
手術中に発生する問題の調整は、多くの場合「秒」単位で「1人で」対応することが求められます。

例えば手術中に、大量出血をしている状況で傍観している暇はありません。
あっという間に患者さんの命は失われてしまいます。
適切な応援の要請、適正な輸液・輸血管理、全身状態の維持。
多くのことを短時間で手配しなければなりません。

つまり麻酔をかける、
ということは単純に患者さんを眠らせることということではありません。
手術中に起こる様々な問題を、逐一把握し、秒単位でそれらを解決する、ということなのです。


麻酔科は手技を学ぶところ?


「麻酔科って挿管とか、そういう手技を学ぶところだと思ってたけど、、。」
と思われるかもしれません。
もちろんそれは麻酔科で学べる大きなメリットの一つです。

挿管をはじめ、静脈ライン、動脈ライン、中心静脈ライン、胃管挿入、脊椎麻酔、神経ブロックなど麻酔科医にならない先生の今後にも役に立つものはたくさんあります。
ぜひ学んでいってください。

これらの手技は、問題を解決するための「手段」です。
こちらが切れる「カード」です。
あらゆる問題を解決するために、確実に切れる手札を多く用意しておくことは良いことです。
解決する方法はわかっても、それを達成する手段が講じられなければ問題は解決できません。
先の大量出血を例にとれば、輸血ラインを追加でとらなければいけないのに、それができなければ患者さんの命が危なくなります。

麻酔科医は良きマネージャーとなる前に、優秀なプレイヤーでなければならないのです。

ちなみに手技についてはこちらの本がおすすめです。

研修医の先生方に学んで欲しいこと

これまでの話をふまえて、次の3点を意識して研修すると良いと思います。

① 手術前・後でどのような介入を麻酔科医がしているのか?(マネージャー)
② 手術中におこる問題の把握と解決方法は?(プレイヤー・マネージャー)
③ 基本的な手技のコツは?(プレイヤー)

短期間の研修ではプレイヤーとしての麻酔科医が目立つと思います。
しかしマネージャーとしての立ち振る舞いも見ておいてください。
今後、他科にすすむ多くの先生方にとっては、マネージャーとしての麻酔科医と仕事をすることになるからです。


まとめ

● 麻酔科医の真価は周術期の危機管理・安全管理をするマネジメント能力である。
● マネジメントをする為にはよく現場を知る優秀なプレイヤー(麻酔管理)である必要がある。


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