鎮静薬を中断すると目がさめる(わけではない)
麻酔科外来で患者さんからこんな質問をよくされます。
「麻酔ってどのくらいで目がさめるんですか?」
私の答えは、
「薬の投与をやめると15分くらいで目が覚めてきますよ」
です。
これは
ある意味正しくて、ある意味まちがっています。
正しいのは、そのように目が覚める薬があること。
まちがいは、投与をやめるだけでは目が覚めない薬もあることです。
前者がプロポフォール、後者が吸入麻酔薬のことです。
■ 鎮静薬の調整方法は3つある
実は鎮静薬を調整する方法は、大きくわけて3つあります。
麻酔科医が、どのように目覚めさせているのか解説していきます!
- 代謝されるのを待つ
外来で説明したとおりの覚め方です。
プロポフォールがこのパターンです。
プロポフォールの持続投与を手術終了後に中止しすると、
プロポフォールが肝臓で代謝されて徐々に血中濃度がさがっていきます。
それにあわせて目が覚めます。
このあいだ、麻酔科医がやることは特別ありません。
血中濃度がさがっていくのを待つのみです。
通常、10分くらいで半分の濃度になりますが、
投与時間が長くなるとこの時間はだんだん延長します。
そういったことを見越して、
目覚めさせたいタイミングに合わせてプロポフォールの投与を中止します。
- 呼吸で外に出す
吸入麻酔の場合ですね。
セボフルラン、デスフルランは呼吸をすることで体の外へ出ていきます。
全身麻酔中は基本的に自分で呼吸をしていませんので、
まずは人工呼吸で吸入麻酔薬を「吐かせ」ます。
そのうちに、自発呼吸がでてくるので
あとは自分の呼吸で吸入麻酔薬濃度がさがるのを待ちます。
多く呼吸させれば早く、少なく呼吸させれば遅く目覚めます。
- 拮抗薬を使う
ミダゾラム系の薬で鎮静している場合は拮抗薬が使えます。
フルマゼニル(アネキセート)ですね。
目がさめるまで拮抗薬を入れます。
「お、なんだか簡単そう」
そう思いませんでしたか?
たしかに拮抗薬を投与すれば目はさめます。簡単です。
ただし、注意が必要です。
フルマゼニルの半減期は約50分
ミダゾラムの半減期は約170分
つまり拮抗薬の効果が先に切れてしまい、再度寝てしまうリスクがあります。
手術室で一度目を覚ましたからといって油断はできませんね!
覚醒後の監視が重要です。
■ さいごに
まとめです。
今回は、麻酔から覚醒させる鎮静薬の調整方法を3つ解説しました。
代謝されるのを待つ、呼吸で外に出す、拮抗薬を使うの3つでした。
目を覚ますときも、麻酔科医が調整をしているのでした!
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