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#スサノオ
第75話 スサナルの正体
年明け早々、二日連続でヤマタ先生に会ってしまった。何度挨拶されてもその度に無視を決め込んでいるのだが、撃沈するのがわかっているはずなのに、めげずに彼は「こんにちは」と声をかけてくる。相変わらずのきつい香水の匂いが尾をひいて、纏わりついてくるようで喉が痛くなる。
夜、布団に入ってからも、昼間会ってしまったことからヤマタ先生の意識が絡んで、まだ目を閉じただけだというのに学校の廊下で待ち伏せされて
第71話 出雲からの預かり物
行きのバスの中で、自分の祖先と思われる氏族とタケミカヅチとの関係を明らかにしておいたことは正解だったらしい。
数日前から続いていた、タケミカヅチの私に対する“そっけなさ”のようなものは今や払拭されていて、鳥居をくぐると彼は「今年もよく来たね」と、私を笑顔で迎え入れてくれた。
ここ鹿島神宮の境内にも、多くの神社に見られるように、本殿や奥宮とは別に、末社、摂社(まっしゃ、せっしゃ)と呼ばれるた
第62話 豊穣の女神
秋が過ぎ冬が過ぎ、再び春になった。
春休み中、私は埼玉に住む友人のつきちゃんから誘いを受けて、大宮まで遊びに行った。その日はまだ三月なのにまるで初夏のような陽気で、さすがに日傘の出番には早すぎると思っていたけど、実際にさしている人を見かけた時には自分も持ってくればよかったかなとちょっとだけ後悔した。
駅ビルでのランチのあと、東口へ出てそのまましばらくまっすぐ歩く。やがて街路樹のトンネルの