第32話 月明かり纏う羽衣
(つきあかりまとうはごろも)
まどろみの中、「自分の内側、自分の内側」と呪文のように内観する。
根(こん)を詰めると脇目も振らず、義務かのようにひとつのことに集中してしまうのは、果たして私の長所なのか短所なのか……。
はっきりと目が覚めてもいないうち、意識が朝の気配を軽くかすめとっただけだというのに、私の一部はすでに感情の観察に入る。
だけど残りの意識がまだまだ葛藤していて、たぶんもうひと眠りできるくらい時間が早いだろうからと、起き出した意識をなだめにかかる。
その狭間の脳味噌に、ボーッと人影が顕れる。
擬宝珠(ぎぼし)の載った朱塗りの手摺りの階段に、月をバックに凛と立つ。
飛鳥時代と平安時代が混じったような、前帯のついた着物に領巾(ひれ)と呼ばれる天女の羽衣。長い髪の毛を高く結わずに下ろしているところに関しては、平安時代のお姫様のそれである。襟の生地と身頃の生地の色とが違うのは、琉球だとかアイヌだとか、土着の民族の衣装を思わせる。
あまりに堂々と、あまりにまっすぐに。
あなたは……ああ、瀬織津姫さま。
その、セオリツヒメに射抜かれている。
全般、ビジョンで顔の表情が見えないことがほとんど当たり前の私である。このセオリツヒメに至っても、やはり顔はぼやけていて、どんな顔なのかを見て形容することができない。
それなのに、見えないはずのまっすぐすぎる瞳からは、不動心と呼ぶに相応しい気高さが迸って(ほとばしって)いる。
固い意志を持ったセオリツヒメが消え去ると、私は再び眠りに落ちた。
おそらくその数十分後になるのだろうか、恨めしいアラームの音に起こされた時、私はふと、
「おや?」と思った。
起きがけに、自分の中で女性性が少し統合した感覚が残っていた。それと同時にどういうわけか、スサノオも共に上がっていた。
さっきまでありありとそこにあった「どう上がったのか」という具体的な感覚はごっそり全部こぼれ落ちてしまい、どう頑張って思い出そうとしても二度と戻ってこなかった。
ただ、自分の中の女性性と、それに伴ってスサノオとが、ひとつ次元上昇を果たしたという不思議な感覚だけが残った。
ん……?
なんでスサノオなんだろう。
ミカ、あなたじゃなくて、スサノオなのね。
大好きなミカエルじゃないことに若干疑問は残ったが、この時起きた感覚を例えて言うなら、自転車のペダルのようにお互いに影響しあっているものだということはなんとなく理解できた。
右足を踏み込むことができれば、次は自ずと左足がついてくる。
私の女性性と……スサノオ?
そのコンビネーションの理由をもちろんこの時は理解できなかったが、それでも単純に、自分の女性性が上がった感覚はとても嬉しかった。
それから数日後。
私はセオリツヒメの下描きに入った。
まおちゃんから、時期が来たらセオリツヒメを作ってほしいと依頼されていたのだ。
私としても、久しぶりにカッターナイフを握れることは楽しみだった。
そして。
どんなものにも屈しない強くしなやかな女性の愛の力と、強風でも雪の重みでもいなしてしまえる女性ならではの包容力は、まさに美しい竹のよう。
まっすぐで、愛を貫く信念と決意をもった女性、なよたけの織姫が切り絵の中で目を覚ました。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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自分の中の女性性と男性性は、うまくバランスがとれてこそ。
これを読んでくださっている男性の皆さん、
自分の中に女性性があることは、自分がなよなよしてしまうこととは全然違うよ!
自分の女性性を認めて大切にしてね。
これを読んでくださっている女性の皆さん、
自分の中に男性性があることは、男勝り、男顔負けになることとは全然違うよ!
自分の男性性を認めて大切にしてね。
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