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まほうの穴

11
詩集です。
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まほうの穴-11「あくせくと」

まほうの穴-11「あくせくと」

あくせくと無駄な言葉を
並べては
崩し
並べては
また崩し

ぶつけては
後悔し
飲み込んでは
また後悔し

あなたへの
この気持ちが
どうすれば
伝わるのか

毎日畑を耕すように
せっせと汗をかきながら
試行錯誤している

コミュニケーションはいつも冒険です。
言って後悔し、言わなくても後悔し、そんな中でうまく伝わることもあれば、うまく伝わらないこともある。

100人いれば100通りの受け取り

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まほうの穴-10「行く手を阻むもの」

まほうの穴-10「行く手を阻むもの」

行く手を阻むもの行く手を阻むのは
自分の過去である

いつからか未来よりも
過去の分量が多くなって

その重さに引きずられる
未来を抱えていた

そう、
西の空から黒い雨雲が
立ち込めてくるように

そして、
やがて大地に雨が降り
草花が生き生きと育つように

蓄えられた過去を
未来への力に変えられたなら

長く生きていると、それなりの経験値というものは積めるけれど、それが逆に足かせになることって

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まほうの穴-9「ふわっとする」

まほうの穴-9「ふわっとする」

ふわっとする体の中に入れると
ふわっとする

全身の力が抜け
体の中心から
ふわっと飛び立ちそうになる

心はふわっと飛び立つ
この世からふわっと飛び立つ

そして、あたしは
飛び立ったことを秘密にしようとして
作られた「花」の香りをつける

決して悪いクスリではありませんよ。
中毒性のある何かを連想させてしまうかもしれませんが、人それぞれで異なる、現実逃避の手段みたいなものを具現化して表現してみ

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まほうの穴-8「可能性」

まほうの穴-8「可能性」

可能性可能性はいつも平等に
0から100パーセント

それを狭めているのは自分の気持ちで

絶対そうだ、とか
たぶんそうだ、とか
勝手に決めつけて

できそうにない、とか
絶対できない、とか
最初からあきらめて

大事な可能性を自ら失っている

だから気持ちはいつも
きっとできる、ぐらいでいたい

自分の可能性を決めているのは、紛れもない自分です。
そんなのわかってるんだけど、でも、と思う方も多い

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まほうの穴-7「泡を抱く」

まほうの穴-7「泡を抱く」

泡を抱く泡を抱いていたのかもしれない
泡を抱いていただけなのかもしれない

盛り上がって
でも中身は空気ばかりで

気持ちよくて
でも正体がなくて

どうしてもつかめなくて
あとかたもなく消えてしまって

泡を抱いていたのかもしれない
実体があったはずなのに
実体をつかめなかった私は

何にも中身がない、楽しい空気みたいなものは、実体がつかめない。
何が楽しかったのかも説明できないし、人にも伝えら

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まほうの穴-6「独房」

まほうの穴-6「独房」

独房浴室の冷たく固い壁に
猫背の背中をくっつけて

私は見えない独房の中にいる

もたれた壁の向こうには
外の世界が広がっていることを
背骨を通して知っている

捕らわれの身は窮屈で
不自由だけれど

本当は自由が一番こわいものだと
知っているから
私はこの独房から出られない

そんな勇気のない弱虫の体を
今日もここできれいにする

心は汚くても
せめて体だけはきれいでいたいから

自由になりたい

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まほうの穴-5「ある一過性のぶどうゼリーの中で」

まほうの穴-5「ある一過性のぶどうゼリーの中で」

ある一過性のぶどうゼリーの中で赤紫色のぶどうゼリーの中を
必死で泳ぐけれど
どこまで行っても甘ったるくて
窒息しそう

でも、溺れている場合じゃない

あふれる果汁は
どうしようもないほど
確固たる「ぶどう味」

確信を持って進むんだ

何かを乗り越えようと必死にもがいているとき、前へ進んでいるつもりなのになかなか先行きが見えないとき、昔はよくゼリーの中で溺れているような気持ちになったものです。

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まほうの穴-4「もらい泣き」

まほうの穴-4「もらい泣き」

もらい泣き電気のチカチカする浴室で
透明なはずなのに、なぜか少し淋しい色をした
お湯につかっていると
何だかむしょうに悲しくて
泣けてくる

このお湯全部
私が流した涙じゃないかと思えてくる

外の嵐は一段と激しくなって
すぐそこに海が迫ってきているみたいに
大荒れになる

私はただ声を出さないように泣く
ほおをつたう涙を濡れた手でぬぐうと
やっぱりこれは全部私の涙で
私は自分の涙にひたっているの

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まほうの穴-3「くつくつと」

まほうの穴-3「くつくつと」

くつくつときゅうくつで
たいくつな
毎日の中で

何も考えずに
疲れて眠る夜が
好き

嫌な夢ばかり見て
うなされている自分が
好き

ため息をついて
傘をさして出かけるのも
好き

われを忘れて
馬鹿笑いしている時間も
好き

何も考えず、毎朝会社に行き、休日には友達とカフェで他愛もない話をし、夜は飲みに行って、たまに旅行もする。
つい先日まで当たり前だった何気ない日常が、この一年で大きく崩れ去

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まほうの穴-2「暗塊」

まほうの穴-2「暗塊」

暗塊ずっとずっと暗い道が続くと思っていたのに
急に目の前が明るくなったとき
どうするだろうか

ひき返してしまうその弱さが
いつも自分をだめにしている

もうそこまで来ているのに
何となく
背を向けて生きている

どこかでこわいと思っている
明るい世界に出るのが

しかし出てみれば
意外と普通

そんな事実も知っていながら
前を向いて
足がすくむ

冒険の終盤、これからいよいよクライマックスという

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まほうの穴-1「カプセルへの憧れ」

まほうの穴-1「カプセルへの憧れ」

カプセルへの憧れなにかをとじこめてくれる
まほうのくすり

じかんがとまったままの
ふしぎなくうかん

はんとうめいの
ちいさなうちゅう

よくカプセルのおかしをかってもらった

くすりみたいに、すこしきんちょうしてのみこんだ

いまのきもちのままで
ずっといられるように

ひとはかわってしまうから
こころはうつろいやすいから

まほうのくすりをのんで
こどものままでいたいから

子どもの頃にわく

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