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まほうの穴-4「もらい泣き」

もらい泣き

電気のチカチカする浴室で
透明なはずなのに、なぜか少し淋しい色をした
お湯につかっていると
何だかむしょうに悲しくて
泣けてくる

このお湯全部
私が流した涙じゃないかと思えてくる

外の嵐は一段と激しくなって
すぐそこに海が迫ってきているみたいに
大荒れになる

私はただ声を出さないように泣く
ほおをつたう涙を濡れた手でぬぐうと
やっぱりこれは全部私の涙で
私は自分の涙にひたっているのだ

私の目から流れるしずくも
私の体をひたす液体も
強くうちつける雨も
迫りくる海も
全部涙でできている

今日は私みたいに
なぜだか急に悲しくなって
こうやって涙を流す人が
いつもより少しだけ多いのだと
嵐が教えてくれたので
もらい泣きしてしまった

ぬぐった涙が乾きはじめ
体が温まった頃には
もう悲しみの種は
私のところにはいない

どこか遠くへ飛ばされて
別の誰かをもらい泣きに誘い
心を静めてくれている


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何が何だかわからなくなって、心がざわつくことってありますよね。
そういうとき、私はお風呂に入って思い切り泣きます。
涙なのかお湯なのかわからなくなって、そのうちどうでもよくなります。
感情を出し切ると、心が静まります。

雨や台風、嵐の夜は特に心が落ち着かなくなります。
それは、誰かの悲しみが飛ばされてくるからなのかも。

人はみんな同じような体験をすることによって、少し優しくなれるから。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今後も不定期ですが、書き溜めた詩を発信していきます。

今日もあなたにとって素敵な一日になりますように。

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