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妄想のカケラたち

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書く習慣アプリのお題 シロクマ文芸部のお題 ....などから妄想したもの
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#短編

満月ベランダの美しいケモノ【妄想のカケラ】ショートショート

満月ベランダの美しいケモノ【妄想のカケラ】ショートショート

【満月ベランダの美しいケモノ】

いい夜ですね。
アパートのベランダ
仕切り板の向こうから声がした

こんな夜更けに誰だろう?

眠れない夜のベランダから少し身を乗り出して隣を覗くと、ふさふさとした銀色の毛の、狼の人、でも人懐っこそうな、そんな獣人がタバコをふかしている

どうやら隣の部屋の住人のようだ

よく手入れしているのだろうか?
満月に照らされた部分が特に白く輝いて美しくて惚れ惚れする

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星へ、お花見。(ショートショート)

星へ、お花見。(ショートショート)

星へ、お花見。

銀河鉄道に乗って火星まで
早咲きの桜を見にゆく

最近ICOCAが使えるようになったって聞いたから使おうとしたら
チケット売り場のおっちゃんが

あん?
ICOCAなの?

…って
めっちゃめんどくさそうに眉間にシワ寄せ寄せでにらむからさっ

はぁっ?
なんかあかんことあんの?
◼️%&$%◎△()0=!!!

…って
ヘンテコになるから普段はほとんど使わない関西弁で
窓口に貼っ

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夢を囮にする者【ショートショート】

夢を囮にする者【ショートショート】

夢を囮にする者

夢から覚めた午前3時
よく覚えていないが、
日向の匂いのする温かくて、ふわふわした心地の良い夢を見ていたような気がする。

現実は真っ暗で冷たく真冬の夜明けはまだ遠い。

でも、再び夢の中に戻るのはためらわれ、寝床からはいだし明かりをつけた。

「ちっ!」

舌打ちした何かの影が部屋の隅から消えたように思えたけれど、それは、気のせいかもしれないし、心地良い夢に乗じて私を連れてゆこ

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りんごのつぶやき(シロクマ文芸部)【ショートショート】

りんごのつぶやき(シロクマ文芸部)【ショートショート】

今回はこちらのスピンオフ作品になります↓

りんご箱から鈍色の空を見上げて僕はみゃぁ~と鳴き、まだ柔らかい爪でカリカリと箱底をひっかきました。
箱が深くて小さな僕は外に出られないのです。

何度かこちらを覗く人の顔がちらりと見えたけど僕と目が合うと困った顔をして去っていきました。

ぽつりぽつりと冷たいものが顔を濡らし始めたころ、ある人が僕を拾いあげました。

「寒かったね、大丈夫かい」

彼はし

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最強オカンと繊細な僕【シロクマ文芸部】

最強オカンと繊細な僕【シロクマ文芸部】

月めくり用の指サックをなくしてしまい
めくれない9月をどうしたものかとセンチメンタルの沼に浸っていると

なんやー
まぁだ9月にしとるんかー?

ドヤドヤッと部屋に押し入ってきたオカンは、ペロッと指先をひと舐めすると何のためらいもなく月をひとめくり

ビリッと一気に9月を切り取った

そして、

はよおいで
ごはんにしよ

と言うと
めくった9月をくしゃくしゃに丸め、どすどすと音を立てながら慌ただ

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夜の灯りを喰らうひと【超ショート】

夜の灯りを喰らうひと【超ショート】

#125 夜の灯りを喰らうひと

夜の灯りが地上に広がる
このひとつひとつの灯りに
人生があり幸せがある

今夜も地上に広がる灯りに手を伸ばすと
灯りは一粒のあめ玉となり
彼はそれを口に運んだ

誰かの幸せが胃袋に広がる

叶うなら、喰らう側ではなく
これら一つの
ただの灯りになりたかった...

そんな憂鬱を抱きながら
彼は灯りのあめ玉をもう一粒口に入れた

あぁ 胸が焼ける
でも 今夜はもう少

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【短編】マイムマイムが募らせる私のブルー (シロクマ文芸部)

【短編】マイムマイムが募らせる私のブルー (シロクマ文芸部)

文化祭が終わりグラウンドでは恒例の後夜祭が始まった。

後夜祭ではフォークダンスを生徒全員で踊ることになっているのだけど、私は誰かに言われて機械のように踊るフォークダンス(特にオクラホマミキサー)が楽しいと思えなくて嫌いだった。

でも、後夜祭はひと通り踊るとあとは自由解散なのがいい。

大半の生徒はそのままグラウンドに残り時間ギリギリまでそれぞれ文化祭の余韻を楽しんだり、恋の花の種まきをする子も

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だから私は一人でいたい #妄想のカケラ

だから私は一人でいたい #妄想のカケラ

#114 だから私は一人でいたい

他人の些細な息遣いが耳につきはじめたら限界なのだ

私は部屋にこもってひとり静かに布にくるまる
思わず誰かを傷つけて、自分も傷つかないように

ある日、そんな私を「心配」という善意を着た隣人が尋ねてきた

いくらなんでもずっとひとりは寂しすぎるだろう
少しは陽に当たった方が気分が良くなるだろう

などと、用意してきた彼の思う親切を披露すると
断りもなく私のくるま

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物語の育み方 #シロクマ文芸部

物語の育み方 #シロクマ文芸部

書く時間という「香」に火をつけると煙が立ちのぼりなんとも柔らかい香りが立ち始めました。

机に座り頬杖をついて
あれこれと妄想を膨らませながら
片っ端から思いつきをノートに書き始めます。

書いて書いて書いていると
言葉たちがノートから浮き上がり
空中を漂い始める時が来ます。

言葉が漂い始めたら
私はノートに書くのをやめて
漂う言葉をよく観察して
その中からきらりとひかるものを見つけては
そっと

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『食べる夜』買えました!(シロクマ文芸部)

『食べる夜』買えました!(シロクマ文芸部)

食べる夜 100g 1200円(税別)
やっと買えました〜!!!\( ˆoˆ )/

カルディ5軒はしごしてやっと見つけました💦
調味料コーナーの食べるラー油の隣にありましたよ。最後の1個でしたけど...( ´△`)

瓶の外観はあの「ご○んですよ!」
...っぽい?ww

でも、蓋がしっぶ〜〜い銀色です

夜をイメージしたラベルに描かれた月が素敵!
私の大好きなイラストレーターさんの作品なんで

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空色に重ねたセンチメンタル #妄想のカケラ

空色に重ねたセンチメンタル #妄想のカケラ

#110 空色に重ねたセンチメンタル

誰も知らないけれど、
私の視線の先にはいつも彼が居た。
でも、彼の視線の先にはいつもあの子がいる
そして、おそらくあの子も彼と同じ気持ちのように見える。

残念ながら、私と彼は一度も視線が交わることはなかったし、この先もずっとなさそうな気がしていて、2人の間に割り込んで自分の気持ちを伝えるだけ伝える「ダメもと」もアリかもしれないと迷っていると、

「そこまで

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空を泳ぐクジラの歌が聴ける街 #シロクマ文芸部

空を泳ぐクジラの歌が聴ける街 #シロクマ文芸部

街クジラの歌が今日も聴こえてきました。

夕方の支度の手を止めて外に出ると、
オレンジと金色で染めた夕焼け空をゆったりと泳ぐクジラがいました。

どこから来るのか?
なぜここに来るようになったのか?
誰にもわかりませんが、夕暮れになると空に姿を現すクジラはこの街の日常です。
そして、街にやってくるので「街クジラ」と
いつの間にか皆でそう呼ぶようになりました。

今日も歌いに来てくれてありがとう。

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そして、大人になろうと決めた #妄想のカケラ

そして、大人になろうと決めた #妄想のカケラ

#100 そして、大人になろうと決めた

じゃーまた明日!

あの日の僕は、手元にあるゲームステージのクリアが重要で、惰性のさよならを君に送った。
何よりも、明日も明後日もずっと今日と同じ朝がきてまた会えるものだと疑う余地もないほど僕は子供だったのだ。

あの頃の僕は君と憂鬱を共有しあえるほど大人ではなかったけれど、
せめて、あの時、君と向き合って「また明日」と別れていたら、もしかしたら、少しは君

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甘く甘く、浸り続けていたい #シロクマ文芸部

甘く甘く、浸り続けていたい #シロクマ文芸部

海砂糖で作った金平糖をひとつぶくちにいれると
懐かしいあの海の思い出が蘇った

私はまだ小さくて
家族みんなが揃っていた
あの夏の海の思い出だ

やさしく物静かな母がパラソルの下からこちらを見守っている
私に泳ぎ方を教えてやると張り切る兄と
小さい子に無理はいけないと娘に過保護な父の笑顔

金平糖が溶けてなくなってしまうと
父も母も兄も消えてしまうので
次々と金平糖を頬張った
でも、あっという間に

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