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何度でも読みたい

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何度でも読みたいすてきなnoteたち。
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2020年1月の記事一覧

キッチンの孤独と光

キッチンの孤独と光

襖がぴしゃりと閉まる音は、すこし淋しく、物悲しい。向こうには人がいるというのに、地球の裏側くらいに遠く思える。でもどこか心地よく感じてしまう身勝手さを、真空パックのような静寂が後押ししていた。

昔、迫りくる朝から逃げるように夜更かしをした日もあった。でも今日はちがうんだ。

しんと静まり返ったリビングで、読みかけの文庫本を手にとった。

吉本ばななの『キッチン』。言わずと知れたベストセラーは、昨

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星降る夜に、かかる虹

丘の上にある、まぁるい公園からは、海が一望できた。
ゆっくりと沈む太陽が、海を朱に染めている。

「ほら、おいで」

手を伸ばすと、愛猫のとろろが、ピョコンと私の腕に飛び乗ってくる。
3キロ近くあるとろろは、私の腕の中にすっぽりとおさまった。

冷たい空気。吹く風が体温を奪っていくけれど、とろろを抱っこしている腕の中は温かい。
とろろを抱き抱えながら、私は少しずつ暗くなっていく海を見つめる。
普段

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だからこそ生き抜く #手書きnoteを書こう

だからこそ生き抜く #手書きnoteを書こう



へたくそな字で申し訳ありません。でも、書かずにはいられませんでした。



先週末、職場の新年会がありました。体調不良でこういう場にくるのは久しぶりだったので、普段なかなか会うことのない別部署のかたと楽しく話していました。

会もまもなく終わろうという時、会場の隅がなにやらざわつきはじめました。事務局の男性の具合が悪くなっているようでした。その男性は以前、脳の重い手術から回復されたひとでした

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奇妙な家系図、書きました。 #手書きnoteを書こう

奇妙な家系図、書きました。 #手書きnoteを書こう

だいすーけさん企画、第2回 #手書きnoteを書こう
前回に引き続き参加させて頂きます。わーい。

有難いことに企画告知noteでも紹介して頂きました。
アイディア(手書きで他の方のnoteのPOPを描くというもの)を褒められたのが嬉しくて嬉しくて。褒められて伸びるタイプなのでどうしてもその期待に応えたくなりました。

うーん、今度はどんなアイディアでいこうかなあ。

手書きで、他のひとが書かな

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私からあなたへ 勝手に歌を贈ります #手書きnoteを書こう

私からあなたへ 勝手に歌を贈ります #手書きnoteを書こう

2019年12月のこと。
私は何人かのお会いしたかったnoterさん達にお会いすることができました。
お会いする前に、ずっと「言葉でお会いしていた」大切な人たちをイメージして、勝手に短歌をプレゼントさせていただきました。

この手書きnote企画の第2回目が発表されたとき、私はまだお会いしたことのないnoterさんをイメージして、それを手書きで短歌にして届けたいと思いました。
本当に勝手なプレゼン

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25年経って、ようやくあなたに言えること

25年経って、ようやくあなたに言えること

「あなたのこと、愛していないと思う。でも、失いたくないの」

彼からのプロポーズに対する私からの最初の返事。YesでもNoでもない曖昧でずるい返事。当時、別れてからもずっと心を寄せる人がいた。愛する人から受ける友達宣言ほど辛いのはよく知っている。だからこそ、素直に答えなければと選んだ言葉だった。確固とした返事をすぐに出せなかった私に、直感だけがそう言わせた。

彼は私の両手を握ったまま、少し寂しそ

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「読むこと」の本質は、人を想うことだ【後編】

「読むこと」の本質は、人を想うことだ【後編】

3日に渡って、「読むこと」を考えてきました。自分の中で少しずつ輪郭が見えてきたので、まとめていきます。

「読むこと」は簡単にできる誰もがあらゆる場面で何かを読んでいます。文章も漫画も新聞も、食事のメニューや商品のラベルも、色々なものが人に読んでもらうために必死に訴えかけてきます。

いざ発信する側、書く側になってみると、「読んでほしい」「伝わってほしい」という気持ちは、痛いほど分かります。

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