みんなで一緒に呑みながら書きました。酔っ払いたちの酔いnote。 呑み書きは3月、6月、9月、12月。3の倍数月に開催します。
Maho Okumura
文章のことをひたすら考えるマガジン。想いや考え、情報を伝えるために大切な知識・スキル・考え方から、面白い言葉や本にまつわるちょっとしたコラムまで。
日々の出来事と感情と思い出のカケラを拾い集めて言葉にします。
これめっちゃスキ!と、ときめいたnoteを束ねています。エッセイ、小説、漫画など、創作系の記事が中心です。
おいしい記憶と人とのつながりをエッセイに。#夜更けのおつまみもこちらに格納します。
雨の中を歩いていた。アスファルトに落ちて地面を流れていく雫も鳴り止まぬポツポツという音も、その日はいつもと色がちがった。満員電車に揺られているときですら嬉しかったのだ。恋か愛か知らないが、盲目である。 遠くに看板が見える。暗い雨の道を照らすように、白く淡く光っていた。 * 「仕事が終わったよ。飲みに行く?」 夜の8時過ぎ、夫からメールが届いた。突然の誘いだった。 家で仕事をしており、平日は昼も夜もひとり。いつも適当にご飯を用意して食べているわたしにとっては、金曜日に夫
【連載エッセイ更新】 「食」を楽しみ笑顔を届けるメディア、アイスムさんで大好きな福島の魅力を紹介しました。 旅先で購入したおいしいおみやげで食卓を彩る「続・会津の旅」を楽しむお話です。 https://www.ism.life/hareame/020.html #エッセイ #食べ物 #旅行 #コラム
【連載エッセイ更新】 「食」を楽しみ笑顔を届けるメディア、アイスムさんで唐揚げをテーマにエッセイを書きました。 自分に揚げものはできないと思い込んでいた私が、夫の影響で唐揚げ作りにハマるお話です。 https://www.ism.life/hareame/018.html #エッセイ #食べ物 #仕事
「好きなだけ頼んでいいよ」といわれると、逆にひるんでしまうのはぼくだけだろうか。 「うち、お金だけはムダにあるから」 みずきは探検地図をひろげるようにメニュー表を豪快にひらく。 「ほんとにだいじょうぶ?」 不安になってたずねると、みずきは漫画のキャラみたいに目をきりっとさせて、ポケットからとりだした一万円札をぴーんと伸ばしてみせた。 ほんとうにだいじょうぶなのだろうか。みずきがなにを考えているのか、ぼくにはちっともわからない。 * 水曜日の五限後。下駄箱から靴をとり
【連載エッセイ】WEBメディア アイスムさんで連載中のエッセイ「晴れでも雨でも食べるのだ」の5記事目が公開されました!(https://www.ism.life/hareame/005.html)「嗚呼。いとし、懐かし、我らの女子会!」と題し、ひたすら食べて話してぐうたらし続ける「女子会」の尊さについて語っています。またいつか開催できたらいいな、という願いを込めて書きました。写真は女子会で友人の何かのお祝い(?)をしたときのものです。何年前だろう……
【連載エッセイ】 Webメディア「アイスム」の連載「晴れでも雨でも食べるのだ」#4が公開されました。 夫と初めて暮らした懐かしい街でご飯を食べる話です。これからも通って恩返ししていきたい。 https://www.ism.life/hareame/004.html
「いつまで寝てるの〜!」 2020年7月25日、4連休中の昼下がり。ソファの上に、肩をゆすっても地蔵さながらびくともしない夫がいた。 すやすやと眠り続ける様子はまるで眠り姫のようで、潔くすらある。登山やキャンプを愛するアウトドア派の夫にとって、外出自粛はかなりこたえるのだ。生気を吸いとられてしまったらしい。わたしまで呼応して、死んだ魚の目になっちゃいそう。 しかし、夏の部屋はいい。風に揺れるカーテン、蚊取り線香のにおい、くるくる回る扇風機の羽、炭酸水の泡がしゅわっと消える
アイスムで連載中のエッセイ「晴れでも雨でも食べるのだ」#3が公開されました。大好きなトーストに弄ばれる…救われる話です。 「わたしはメイプルジャムトーストから逃れられない」 https://www.ism.life/hareame/003.html 過去ログ▷https://www.ism.life/hareame/index.html
土曜日の午後、わたしは牛すじ煮込みにすべてを捧げた。牛すじ煮込みに支配され、翻弄され、意識が飛びそうになった。 これは、料理上手な夫のかわりに牛すじ煮込みを作ることになったズボラ女の、4時間半におよぶ戦いの物語だ。 * 「あれ、カゴになんかでっかい肉が入ってるぞ?」 そやつの気配に気づいたのは、土曜の午前10時すぎに訪れたOKストアで、夫と買い物をしているときだった。 土日は夫が献立を考えることが多いため、彼が先頭に立って歩き、わたしがカゴを持ったりカートを押したりす
アイスムで連載中の食エッセイ「晴れでも雨でも食べるのだ」#2 が公開されました。https://www.ism.life/hareame/002.html 今回は我が家で「チュッチュ」と呼んでいた氷菓子の想い出です。どうして夏休みの午後ってあんなにも懐かしくって、愛おしいんだろう。(また妹が登場します)
1.幼少期 母が去り冷たい床で眠る夜 向日葵がやってくるとも知らず 大福のほっぺ摘んで弄ぶなんか知らんけど隣に在った お揃いのミッキーミニーのトレーナー着ててもポーズはいつもちがって ばあちゃんち神棚したの額のふち 翔び出さんとす青い姉妹は 菓子を分け氷を分けて知恵を分け空も光もみんな分けたよ 2.思春期 囓りかけの食パン 半分残ったプリン 台所にて分身と遇う 波みたく燦めき笑う天才はわからぬことを「わからぬ」と云う 目に見えぬものを抱きしめ歩く子の上に立た
忘れられない匂いがある。 それは雨の匂い。それは草の匂い。それは土の匂い。それは汗の匂い。それはスニーカーの匂い。それは髪の匂い。それはボールの匂い。それは太陽の匂い。それは午後の匂い。それはコンクリートの匂い。それは、名前も知らない、花の匂い。 光の粒で水面が濡れる。川は明日へと流れてゆく。ゆらゆら、ゆらゆら。電車が真っ赤な橋を渡る。向こうには街がある。静かで賑やかで暗くて明るいあの街で、きょうも風が薫っている。 私はどこかへ行ってみたいし、どこへも行きたくない。布団
noteの記事をきっかけとして、連載エッセイのお仕事をいただきました。 掲載先は「食」を楽しみ、笑顔を届けるメディア、アイスムさん。「晴れでも雨でも食べるのだ」というテーマで、食べものにまつわる記憶や風景を綴っていきます。note界の用語でいえば、今年の流行語大賞の筆頭候補「#文脈メシ」のエッセイです。 第一回は、わたしが愛してやまないミルクティーにまつわる想い出について綴りました。写真もほとんどが自分で撮影したものです。読んだ人がなんとなくホッとしたり、やさしい気持ちに
ご飯を炊き忘れたことに気づいた夜8時。キッチンの棚からそっと、どん兵衛をとりだした。白米が好きで、ふだんはカップ麺のたぐいを食べないのだが、金曜だからだろうか、わたしはわたしに寛容だった。 お湯を注いで3分待つ。蓋をあけると湯気がゆらりと天井にのぼっていき、目の前には夕焼け空を思わせるきつねいろのおあげが現れた。ふっくらとした体が、つゆでひたひたになっている。 ふーっと冷まして口に入れると、かつおだしと醤油の旨味がじゅわっと染みだし、そのやさしさに不意に心を刺激された。
突然ですが、私の趣味は「おやつ」です。毎日のようにおやつのパッケージをにやにやしながら眺め、iPhoneでおやつの写真を撮り、おやつフォルダに保存してから、じっくりと頂いています。 太陽の光が部屋にさしこむ様子を眺めるのが好きなので、最近はテーブル上や窓辺でおやつに日向ぼっこさせて写真を撮り、#陽光を浴びるおやつ という自分だけのためのハッシュタグをつけてTwitterに投稿する真剣な遊びもしています。 好きなモノ×好きなモノの組み合わせに勝るものはありません。めちゃめち
年末の帰省時、母はおいしいご飯をたくさん作ってくれた。 「これ、新聞にのっていたレシピで作ったのよ」 食卓にやってきたのは、さつま芋とりんごの甘煮だった。小皿の上にちょこんと乗った冬の味はとろりと甘くて、ちょっと酸っぱい。ほくほく、しゃきしゃき。ふたつの食感があわさって、口のなかで弾けた。 「これ、炊飯器で作ったのよ」 食卓にやってきたのは、プレーン味のパンだった。大皿の上にどんと乗ったかたまりはお月様のようにまんまるで、ほのかに香ばしいかおりを漂わせている。手でちぎ