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真夏の怪談まつり📖

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#怖い話

六十一話「死神」

「死神って、馴れ馴れしく寄ってくるんです」

Eさんがそう話してくれた体験。

彼が独りバイクで走っていたときのこと。
朝焼けを浴びながら、頭のなかでお気に入りの曲を流しながら、爽快な気持ちで走っていた。

すると、後ろから一台のバイクが近寄ってきた。
Eさんは自分のペースで走りたかったので、そいつに道を譲った。

そのバイカーが自分を追い越す際に、そちらを一瞥した。
まさに忍の者を彷彿させる、無

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六十話「長い脚の女」

六十話「長い脚の女」

真夏のある昼間。
Uさんが買い物帰りに坂道を徒歩でくだっていたとき。

奇妙な女と出くわした。

坂をのぼる彼女を見下ろす形であったが、その背丈は女性どころか男にしても高い。
そして黒い日傘からは黒髪が覗かせるだけでその顔は見えない。
坂道を歩くには足が品曲がりそうなハイヒール。
足首まですっぽり隠しきった、何重ものレースが着飾ざられたスカート。
手首まで伸びて、もはや日焼けする心配のない長袖のワ

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「痛い」最終話~短編ホラー小説~

「痛い」最終話~短編ホラー小説~

「痛い」 ③ 最終話-輪廻-



それから数日後、母の伯父さんの家を訪ねた。

「おお、よく来たの。こんなに大きくなって。病気になったと聞いたぞ、もう大丈夫なのか?」

私の継続した体の痛みの事だ。

「体はもう大丈夫だよ。今日はおじいちゃんに聞きたい事があって来たんだ。」

居間に上がらせてもらい少しの世間話の後、私は肝心な事を聞いてみる。色々と詮索されると面倒なので学校の宿題に必要で…とか

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「痛い」2話~短編ホラー小説~

「痛い」2話~短編ホラー小説~

「痛い」 ②



それから数日置きに同じ悪夢を見るようになった。この原因不明の痛みに襲われる以前はほとんど夢すら見る事がなかった為余計に気味が悪い。

(痛みのストレスのせいでこんなに変な夢を見るようになったのかな…)

その時の私はそう思っていた。

そんな日々が続いたある日の深夜、ふと目を覚ました私は酷く喉が渇いていた。

(お水が飲みたいな。)

そして起き上がろうとしたその時、

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「痛い」1話~短編ホラー小説~

「痛い」1話~短編ホラー小説~

「痛い」 ①



これは私が14歳の頃の話です。

私の両親は早くに離婚しており祖父・祖母共に私が小学生の頃に亡くなっている。一人っ子のため現在は母親と二人暮らし。幸い祖父が一軒家を残してくれていたので住む場所には困らなかった。

中学2年生の6月、小さな頃から通っていたダンススクールでのレッスン中、私は急に太ももの激痛に襲われ立っている事が出来ずに倒れ込んでしまった。周りの生徒たちも皆心配

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五十九話「うどん、そば、拉麺」

古いアパート住まいのNさんの体験。

ある日、部屋を掃除していると、洗面所に備え付けてあった棚のなかから、レシート大の色焼けた紙切れが出てきた。

そこには

・・・と、自分のものではない達筆な文字が書かれていた。

これは、前の住人がうっかり落とした献立のメニューだろうか?

しかし、そうすると献立にわざわざ“拉麺”と書くのが気になる。
それなら“そば”も漢字にしないのはなぜか。

では、どこか

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五十八話「割り込み」

五十八話「割り込み」

いまは夫と何人かのお子さんを持つHさんの話。

Hさんが小さい頃は父親が転勤族で、各地を転々としていたそうだ。

行く先で友達ができてもすぐに引っ越してしまう。
そんな日々を繰り返していたが、ある時期だけ落ち着いて過ごせていた地域があったという。

そこでGくんという男の子と仲良くなった。
いままで引っ越した先では、女の子としか仲良くしなかった。なので初めのうちはギクシャクしたが、徐々に仲を深めて

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五十七話「奇妙なインド料理店」

五十七話「奇妙なインド料理店」

Tさんという女性の体験。

彼氏のOさんが「このまえ、サービス旺盛ないいお店みつけたんだよ」と、あるお店を紹介してくれた。

ある日のデート終盤。
晩御飯は予約したその『サービス旺盛な店』にしようということで、彼氏がそこまでエスコートしてくれた。
賑やかな繁華街から離れ、閑静な住宅街の網目のような細い道を突き進んでいく。

「よく考えたら、その時点でおかしかったのよねえ」

地図をみることなく、迷

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五十六話「南瓜に乗って」

五十六話「南瓜に乗って」

Nさんが小さかった頃の話。

その年のお盆。彼女はどうしてもナスとキュウリの精霊牛、精霊馬に『かぼちゃの馬車』を牽引させたくなったそうだ。

これは、皆様もご存じの世界的に有名なおとぎ話の影響である。

「思えば、西洋のおとぎ話のものを、無理やり仏教の習慣に落とし込むなんて無茶苦茶ですね」

昔の自分の可愛げな発想に、話しているNさんも思わず笑みがこぼれていた。

しかし、そのときの彼女は不機嫌だ

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五十四話「予知夢に殺される」

五十四話「予知夢に殺される」

かつてWさんという男性は、いわゆるメンがヘで・・・な女性と付き合っていた。

彼女の名前をここでは仮に夢美さんとしておく。

それだけでもなかなか苦労が絶えないのだが、この夢美さんは更に『みえる子ちゃん』属性持ちだった。
ただ、Wさんは、それを心のなかで「かまってちゃんを拗らせて出た末期症状」と診断しており、全く信じていなかった。

とにかく、日頃からちょっとしたことで振り回されていたが、なかでも

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五十五話「竹崎くんの家(仮)」

五十五話「竹崎くんの家(仮)」

今回は「これしかないな・・・」と判断してこのタイトルにした。
そして、以下は所々ぼかしているので、あくまでも都市伝説として読んで欲しい。

話をしてくれた福田さん(仮)の地元には、『竹崎くんの家』と呼ばれる密かな心霊スポットがある。
無論、上記の“ 竹崎 ”というのも仮名である。

このスポットのことでネット検索をかけたり、近隣の人に話を聞いてみたりすると

「むかし、竹崎一家がそこで壮絶な一家心

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