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最近読んだ本②

沖縄をはじめ、四国も梅雨入りを発表。
と書いてあるそばから関東も梅雨入りか。
外出するのも億劫な季節になってきた今日この頃。雨だと気分まで落ちるときは読書に限る。
雨音を聞きながら、コーヒーを片手に本を読む。
もちろんラジオを聴きながらでも、ワインを飲みながらでも良い。自分なりの読書スタイルで梅雨の時期を楽しむ。読書はざわついた心を落ち着かせる。
邪念や雑念などを取っ払い、物語に集中する。
ただ、ひたすらにページをめくり心の状態に近い登場人物の感情にシンクロさせる。読み終わったときには、少しの達成感と読了してしまったという虚無感を味わうが、それもまた心地よい。

私にとって読書は心のチューニングだ。
気分が乗っているときには、とことん胸糞悪いストーリのものを、逆に落ちているときには前を向ける物語を選んで精神状態を中和する。

最近は専ら恋愛小説に夢中なアラサー独身男子。それも短編集を好んで読む。
なぜ短編集なのだろうと考えたら、きっといろんな生活、いろんな人生、いろんな人々。色とりどりで歪。愛に躊躇う人、躊躇わない人。ホントに理解できなくて興味深いからなのかもしれない。

今回読んだ2冊は短編集。

 

窪美澄 / いるいないみらい

「子を生す」「家族を持つ」をテーマに真正面から向き合った5つの物語。
結婚してからは避けては通れない妊娠、出産、不妊の話題。お互い言葉にしないが、外で子どもを見かけたら意識してしまい、まして姉妹が妊娠したり、子供が生まれたりしたら焦燥感に陥る。
それぞれの女性たちは、子どもが欲しくない人や嫌いな人、欲しいけどできない人とさまざまだ。しかし、「子どもを作る」という行為は1人ではできない。その中で悩み苦しみ、このテーマと向き合ったときに初めて明日という未来に希望を持って生きていけるかの人の繊細さと力強さを描いた作品。

江國香織 / 泳ぐのに安全でも適切でもありません

愛することを通して、いろんな人生を切り取った、安全でも適切でもないところに飛び込むのに躊躇う人、躊躇わない人たちの瞬間を信じた物語。短編集にしては1つの物語は短い。それでも薄っぺらくなくて濃い。瞬間の集積が時間であり、時間の集積が人生であると江國さんが言っているように、登場人物の全員が蜜のような瞬間を過ごしていた。恋愛の高揚感や相手が去った後の寂寥など、切なくもそれはその人にしか体験できないことであり、かけがえのない瞬間であることを教えてくれる作品。

窪さんの作品は帯を見た瞬間にレジへ向かったほど目にこびりつくほどのインパクトがあった。それは自分の年齢が結婚して子どもがいてもおかしくない年齢というのもあるし、周りが続々と結婚し子どもが産まれて家庭を築いていく姿を知ったからもある。それに私は女性全員が子どもが欲しいと思い込んでいた。もちろんこれは小説のため登場人物はフィクションであることは理解している。
ただ、こういう人間もいるんだとハッと気付かされた。人はモノ・ヒトに対して思い込む生き物で、自分も含め決めつけてしまう節がある。相手のことを100%理解するのは不可能で、それでも人はわかり合おうと努力し、ときに傷つき傷つけられ学んでいく。この作品は改めて妊娠・出産・子育てがお互い直面したとき、夫婦間の関係性が変わっていく様に心が揺すぶられた。

江國さんの作品は、恋している時の自分に当てはめていた。たしかに、好きな人や恋人と過ごしてる時間は特別で、その瞬間だけはどの時間よりも濃い。それが例え叶わない恋だとしてもその瞬間だけは2人で過ごしたという不変的な事実がある。それだけでも幸せだが、それが終わってしまうと途端に虚無に陥る。まさにウルトラマンやマリオのスター状態だなって。それは無敵状態(ウルトラマンは無敵ではない)で、タイムリミット付き。
それが恋人で結婚ならば、その時間は続く。
でも、そう簡単ではない。
最近観た映画で「何だっていずれ終わりが来る」と言っていた。それは一見悲しいことだが、終わりがあるからこそ、人はそこに希望を見出すのかなと感じた。

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