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大日本末期文学全集

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終末感が滲み出る文章がまとまったら、ここに投稿します。イラストと文を合わせて一つの作品になっていることもあるので、雑誌のような感覚でお楽しみください。
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2024年2月の記事一覧

『「ぼくはカレーとかふりかけとか!」』

『「ぼくはカレーとかふりかけとか!」』

「ぼくはカレーとかふりかけとか!」

またワガママを言い出した

「ぼくはそんなもののために!」

うちのレッド

「ヒーローになったんじゃない!」

なにか勘違いしているな

今も昔も

われわれ戦隊ヒーローは

こどもたちの憧れのまと

時代が流れても

画面にかじりつくこどもたちの

無邪気な目の輝きはかわらず

そしてその副産物どころか

大きな収入源である

タイアップ企画商品

つまり

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『なんでも市民相談課』

『なんでも市民相談課』

僕がココに移って

そろそろ一年になるのか

なんでも市民相談課

去年まで務めた農林課に比べたら

体力的には楽だけども

やっぱりココは名前のとおり

なんでも相談できると思って

日々いろいろな方がやってくる

税金が払えません

こういう方は税務課へ紹介する

政策費が不透明だろう

予算委員会の傍聴をご案内して

旨い店を教えろ

これはまぁいいんだけど

観光課の仕事として割り振る

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『さて新幹線に乗って』

『さて新幹線に乗って』

さて新幹線に乗って

久々の出張である

大阪でのセミナー参加のために

東京駅から新幹線のぞみに乗る私

これといって

こだわりがあるわけじゃないが

東海道新幹線は山側E席(※)がいい

ご存じの富士山が見えるからね

※普通車は通路を挟んで海側が3列ABC,山側がDEだよ

始発駅だからゆったり乗り込んで

コーヒーをすする

発車直前に駆け込んできた

前の席の客が

シートを倒しても良

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『すんごい体験だから』

『すんごい体験だから』

週末の午後

わたしはひとり

裏庭のハンモックで

読書でもしようと

ダダダダダダダダ!!!

とてつもない音が

表の玄関のほうから

慌てて駆けつけてみると

ホストファミリーのパパが

銃をもって肩を揺らしている

その先には

とっても無惨な光景

まもなくサイレンが鳴り

ヘリが上空を飛び回って

パパの銃乱射事件は

国中だけじゃなく世界中に

ニュースとして広がったみたい

パパ

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『エスカレーターの芸』

『エスカレーターの芸』

僕はエスカレーターの芸を身に付けた

みんないちどは見たことがあるはず

こういうやつね

めちゃくちゃ上手だねって褒められて

それから

どこでどうやって

そんなに練習したのって聞かれたけど

別に練習はしていないんだ僕

ぶっつけ本番

そのかわりにお金はけっこうかかったよ

だってツイタテの向こうに

電動スライサーを用意しておいたんだから

いざ本番を迎えたらとっても怖くて

それから

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『妻が癇癪を起して』

『妻が癇癪を起して』

妻が癇癪を起して

実家に帰ってしまった

子供のことも置いて

それから自分の仕事は

休んでいるのだろうか

わからないけど

とにかく今週の頭から

ずっと帰宅しない

義母からは

無事という連絡があるから

いちおう安心はしている

さて原因なのだが

まったく思い当たるフシがない

家事と子育てはきっちり

話し合いのうえで分担し

それを文句なく

互いにこなしている

収入も隠すこ

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『今夜にでも』

『今夜にでも』

高校時代の同級生から

一枚の絵葉書が届いた

久々に目にする名前

都会の会社を辞めて

念願だった夢を叶えましたと

瀬戸内海の小さな無人島を買って

そこをギャラリーにして

絵画や写真の展示をしながら

併設するカフェでのんびりできるって

そんなことが綴られていた

古民家がありその庭先で

眼下の島々を見渡して

談笑する人々の絵が

葉書には添えられている

コーヒーをサービスします

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『うたのおにいさん』

『うたのおにいさん』

ちょっとした番組の

スタジオでの収録を終えて

駐車場へ戻ってみると

はぁ…

またやられてるよ…

また僕の自慢の愛車

ランボルギーニ・アヴェンタドールに

シールがべたべたと…

これだから

コインパーキングはイヤなんだけど

でもきょうの仕事場は

駐車場もないから

仕方なかったんだよね

ここ最近いっつも貼られてるのは

その昔僕が

うたのおにいさんを務めていた

”おかあさん

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『明太子フェス』

『明太子フェス』

友人からL!NEが来て

なんかすごい気になるけど

でもわたし今からバイトなんだよね

彼女はわりとこういうとき無責任

だけどわたしは無理だよ

だったらもう少し

早く言ってくれたらよかったのに

来年あるならそのときにしようって

返してあげた

その後返事なかったんだけど

わたしがバイト上がって

L!NEまた起動したら

そのコからたくさんメッセージきてて

ってつらつらと写真つきで

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『目覚まし時計』

『目覚まし時計』

新しい目覚まし時計を買った

こういうのは万が一に備えて

週末にいちど試すのがいい

というわけで

アラームは何時に設定しようか

いったん午前7時くらいが

適当だろうか

6じ59ふん!6じ59ふん!おまえは勘違いしています!おまえは勘違いしています!

とんでもない音量で飛び起こされた

6じ59ふん!6じ59ふん!おまえは勘違いしています!おまえは勘違いしています!

そういえば止め方

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『それとこれとは』

『それとこれとは』

わたしがパート勤めをしている

公民館のイベントでこのたび

極地探検家の方を

お招きすることに

チラシやWEBで告知したり

それから来場予約のみなさんの

名簿を整理したり

いよいよ前の日になって

会場の飾りつけ

事前に送られてきた

プレゼン資料の準備

などなど

とても忙しく

駆けずり回ったんです

当日を迎えて

実は少し前から

懸念されていたとおり

その日は首都圏の交

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『なんつうかそんな感じ。』

『なんつうかそんな感じ。』

なんと言っても母の思いでと言えば手料理だ。冬にはとくに美味なクリームシチューを作成してくれた。それを僕たち兄弟で奪い合って食べる。それくらいおいしいからだ。

母が死んでからもう十年とか立つんだって思うと、不思議な気分になる。別々に住んでるから年一で父と妹と集結して墓参りにいく。

いつもクリームシチューの話になって、帰りにファミレスによって頼むんだけど、味がやっぱりぜんぜんちがくてダメだねって思

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『叙述トリックと非難』

『叙述トリックと非難』

夜も気になって眠れないくらい

やつには惑わされたのよわたし

ほんとにくやしくてくやしくて

こちらから呼びかけたって

いっこうに姿を現してくれないのに

忘れたころにひょいとやってくる

神出鬼没といえば聞こえはいいけど

ようはただの身勝手

とつぜんうちへ来たかと思えば

わたしへの挨拶もそこそこに

なにを探しているんだろう

部屋のなかをいったりきたり

あぁそうねそうね

わたしが

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『今夜は文学をどうしよう』

『今夜は文学をどうしよう』

今夜は文学をどうしよう

煮て食おうか

焼いて食おうか

おいら自身のことは

まだいいけんど

腹を空かせた

子ぉらが待ってる

今夜は文学をどうしよう

おいらの小せえ稼ぎじゃ

たかがしれてるけんども

ちっとはいいモノを

与えてやりてぇ

今夜は文学をどうしよう

手抜きぃしてたら

カミサマに叱られちまう

貧しいは貧しいなりに

工夫に富んで

鋭敏でねぇと

今夜は文学をどうし

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