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ショートショート

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#小説

ショートショートペローン

あーはいはい俺が悪かったよ。
全部ぜーんぶ俺が悪かったよ。
あれは俺のミスだってことは認めるし、
若干わざとそうなるようにした
っていう指摘にも大きな否定はしないよ。

でも、しょうがないじゃん。
言い訳はなにもするつもりはないけど、
本当にこれだけは言わせて。
でも、しょうがないじゃーん!
この件は、しょうがないじゃーん! なんだよ。

でも、なにがしょうがないのかは言わない。
だってそれは言い

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ショートショート 無

好きな子を
嫌いになりたくて、
嫌いな子を
好きになりたかった昨日までの僕は、
その願望が叶った今、
とてつもなくハンバーガーを
半分だけ食べたい。

それが今の僕の願望って奴。
そしてそれが今の僕の全て。
僕もまさかとは思ったけど、
でも本当、それが今の僕の全て。

まぁでも、
そこのところの話しは、
お話は、
今は突き放すとして、
真面目な目でマジマジと真面目にマジ、
異物が混じってないかを見

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ショートショート 高所

なんの問題もない僕に、
「高い所から色んな物を投げ落としている」
という疑惑が持ち上がったみたいだけど、
はっきり言って、
はつきりと言つて、
僕はそんなことしないよ。

誰がそんなことを言ってるんだ。
酷い話だ。
証拠として、僕らしき人物が高い所から色んな物を投げ落としている動画があったけど、
見たけど、
確かめたけど、
この目でしつかりと見せてもらつたけど、
あの動画を見た僕の感想は、
「確か

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ショートショート 後ろろ

「お前のせいで全部台無しだ!」
と言われた、気分の悪いお昼時。

それを言われた僕は、
とてもとても
本当にとても
イラッとしたのだけど、
そこはとりあえず、
「その通りです。
おっしゃる通りであり、言われた通りです。
なんと言うか、この通りです」
と大人の対応で謝り、
その人との衝突を避けた。

そして今僕は、
とてもイライラしながら
お昼のご飯を食べている。

なんだよもう、確かに悪いのは僕だ

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ショートショート 君のいない世界

君のいない世界でボクは
七並べチャンピオンになったし、
アイスクリーム屋さんになったし、
黒い球体を集めるようになったよ。

まさか君のいない世界が
こんなにも楽しいとは思わなかった。
こんなこと言っちゃ可哀想だけれど、
君のいない世界、最高!

君がいなくなったあの日は、
中々立ち直れなかったけれど、
でも、その日だけだったね。
その翌日からは普通に楽しかった。

ボクは君しか友達がいないと思っ

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ショートショート お悩み

君の深刻な悩みに対して、
僕は秒で、
「やめてやめて、僕にそんなこと話さないで」
と返し、
「いやだるいって。だるいだるい。
君の悩みなんかどうでもいいよ。
僕、こういう時がもし来たら突き放すって決めてたんだ。
だから遠く遠く、ただただ遠くへ突き放す。
ただ突き放すだけじゃない突き放し方をする人とかいるみたいだけど、僕の場合はもう完全に突き放す。
完全なる拒絶。
突き放しすぎて最悪、君が見えなくな

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ショートショート 嘆き劇

今日も
ストーカーからの無言電話で起きた朝は、
いつもと同じようにまず、
水槽にいる死んだ金魚に挨拶をし、
いつものように
監禁している鳩にエサを与えた。

と、
そんないつもの朝だけど、
あー疲れたー。
もう疲れた。
始まって間もない朝だけど、
もう嫌になるくらい疲れた。
マジで人生ここまでにしたい。
このあとプリンを食おうと思うけど、
それが済んだら終わらせてほしい。
ねぇ神様、聞いてますかー

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ショートショート よっぽど

「スッキリしない天気が続きますね」
とスッキリした髪型をした近所のおばあさんに話し掛けられた僕は、
おばあさんのスッキリした頭を触りながら、
「そうですねぇ」
と同意した。

そして僕はそのまま、
「天気予報も天気予報士も
明日は晴れるって毎日言っているのに、
この天気ですからね。
意味分かりませんよ。
泣きそうです僕は。
この天気が続くことによって、
僕が何か困るってことはないんですけど、
なぜ

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ラス蟹

蟹を食べてからの冬彦くんはと言うと、
春彦くんに対しては二度と謝らない
ってな姿勢になり、
夏彦くんに対しては、
どんなことでもまず最初に、
「ごめんね」
と前置きするようになった。
ただ、秋彦くんに対しては、
以前と変わらない接し方をしていて、
今は秋彦くんと仲良くしりとりをしている。

その様子を夏彦くんが静かに見つめていたので、それに気付いた冬彦くんは咄嗟に、
「ごめんね」
と言い、
「夏彦

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蟹Ⅲ

蟹を食べてからの私はと言うと、
動体視力が頗る良くなった。
目の前を通りすぎようとする鳥なんて鷲掴みにできる。
だから私は今、
家の前で鳥を鷲掴みにし、
光沢の表情を浮かべてるって訳さ。
凄いだろ私は。

って、
そんな凄いことをしていたら、
「鳥が可哀想だよ」
なんて言ってくる人が現れやがって、
「やめてあげて」
だとか言ってきやがって、
「バカ」
だとかも言ってきやがって、
最終的には、
「バ

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蟹Ⅱ

いやー
蟹を食べてからの僕ときたら
半端なく体の調子が良くってさ、
急な坂道なんか
しなやかなステップで
軽やかに進んでいけるよ。

蟹を食べてからというもの
毎日が朗らかで健やかだ。
でも心の部分は、
蟹を食べたからってなんら変わりはない。
道を尋ねられても相変わらず、
「ここの者じゃないんで」
って言って、
ここの者なのに分からないふりをしてしまう。
そんな自分を心底憂うよ。
マジ憂う。
半端

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蟹Ⅰ

蟹を食べてからの君は、
どこか儚げで美しかった。
蟹を食べてからの君は、
道徳心とか人間的な深み
みたいなものが増した気がする。
絶対、蟹だよね。
蟹を食べてからの君は変わったと思う。
蟹を食べてからの君は、
「屈辱まみれのこの人生」
って言わなくなったよね。
口癖のように言っていたから、
言わなくなったことに関しては、
少しさみしさを感じるなぁ。

まさか蟹を食べただけで
こんな劇的急激に変わっ

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ショートショート Inochigoi

家に帰ったら家政婦アンドロイドが
部屋を綺麗にすることもなく、
なんだかダラダラと過ごしていたので、
僕は家政婦アンドロイドに向かって、
「もうキミ、返品するから」
と言い放った。

すると家政婦アンドロイドは、
「そんな! 待ってください!」
と慌ててきて、
「何度も言っているように
私はそもそも安物の家政婦アンドロイドで、
尚且つ、不良品なんです!
そんな完璧な家政婦アンドロイドじゃないんです

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ショートショート 誰かが

人混みの中を
飛び蹴りしながら突き進んでいる奴が、
もう僕の近くまで来ているので、
僕は蹴られないように必死に人混みを掻き分け、なんとか無事、人混みを抜けた。

あー恐かった。
なんだあの重量級の男は。
あんな奴の飛び蹴りを喰らったら
間違いなくケガをする。
確実に、今日一日が台無しになる。
一気に嫌な人生になる。
しかしなんとか、
それは避けられたので良かった。

でも被害者、結構出てるな。

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