ショートショート 君のいない世界

君のいない世界でボクは
七並べチャンピオンになったし、
アイスクリーム屋さんになったし、
黒い球体を集めるようになったよ。

まさか君のいない世界が
こんなにも楽しいとは思わなかった。
こんなこと言っちゃ可哀想だけれど、
君のいない世界、最高!

君がいなくなったあの日は、
中々立ち直れなかったけれど、
でも、その日だけだったね。
その翌日からは普通に楽しかった。

ボクは君しか友達がいないと思っていたけれど、どうやらそんなことはなかったみたい。
結構いた。
てか、君がいなくなってから、
だいぶ友達増えたなって思う。
いや参ったね。
いやほんと、いや笑っちゃうよ。
君がいなくなってから、
人間としての幅が広がった気がする。

まぁ、なんと言うか、
今君に言えることは、
いなくなってくれて、ありがとう。
かな。

勿論、寂しいよ。
寂しいけれど、
君がいなくなってからの世界のほうが楽しいんだから、そこはありがとうしかないよ。
だから、ありがとう。

君がいなくなったあの日。
君がなんか禍々まがまがしい空間から出てきた大量の手に引きずり込まれていったあの日、
そう、あの日以降、
ボクはファッションを楽しむようになったし、
花を育てるようになったし、
黒猫を飼うことになったよ。
あとなんか、
見える景色が少し、
少しだけ、
トロッ……となったよ。

うまく表現できないんだけど、
なんかトロッ……となったんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?