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ノウタシリーズ

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『の詩』と付くやつは全部こっち。たぶん俺が死ぬまでシリーズの更新は継続。
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修道女の詩

修道女の詩

今以上に 優しく あれるように
要らないものを 選び棄てて
余ったもので 織った 羽衣(はごろも) 纏う
大空を 翔(と)べるくらい 軽く
空気よりも 遥かに 軽く
でもそれだと 誰かの 重荷 背負えない
軽々しく 優しさを 揮(ふる)うだけの
〝 裸の女神 〟
進んで 手を 差し伸べても
握ってきた その手は 滑り抜けた
想いばかりでは 何も 変えられない
誰ひとり 救えない
識(し)らずに あ

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沙羅双樹の詩

沙羅双樹の詩

双(ふた)りには都のそぞろ寒さは
いと耐え難かったの
地(じ)深く根を下ろした私達に
まほろば到る旅支度は適(かな)わず
鐘の音(ね)届かぬ遠方(おちかた)は
深山(みやま)が隠す
さぞ是(こ)れ愉快だった事でしょう
奔放気儘(きまま)な根無し草で在れたのなら

傍(かたわ)ら並んで芽吹いたのに
季節の移ろい見送る毎(ごと)に
内なる暦(こよみ)を異(こと)にする
誰しもが常(とこ)しえで居られる

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ルナシーの詩

ルナシーの詩

くたばり損ね
まるで囚われに服す達磨(だるま)
月の満ち欠け数えては
まどろみの妖精に血を吸わせ
幻肢痛を飼い慣らす
在りもしない肥料
草叢(くさむら)に放ってはせせら笑うのだ
癒えてしまえよ何もかも
傷と呼べるあらゆる痛みの源(みなもと)

なぜおまえはまだ生きている?
草陰に潜む幽世(かくりよ)の使者は問う
誰だって過去に生かされてる
嘘だって人を救いもする
己(おれ)だって答えを探してる

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只者の詩

只者の詩

物憂い昼下がり
下がりきって沈んだ
胸の高鳴り
互いの座標が偶然重なった朝
雑踏にふわり舞う薄浅葱のカーディガン
忘れえない横顔を見つけた
結んでは解(ほど)ける肖像に
拐(さら)われた点と線
この惚(ほう)けた図の中に帰ってこない
どうしたものか
勿忘草(わすれなぐさ)に訊(き)いても
答えは返ってこない
どうしよう

憧れと諦めの撹拌(かくはん)
何者かによる何某(なにがし)かの
ロールプレイ

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野良猫の詩/♀猫Ver.

野良猫の詩/♀猫Ver.

美しさの意味わかんない教えてよ
お気に入りの枯れ草の寝床
あげるから

夜の空気この毛皮(からだ)に染みすぎて
真昼の街が未(いま)だ馴れないの
完璧に成れっこない連中のコロニー
取るに足らないありふれたで溢れ返って
度しがたいったらない
あたしを見倣(みなら)って
そのくだらない装飾剥ぎなって
絢爛も豪華も意味は知ってるって
舐めるのは自分達の毛皮だけになさい

人いきれ漂うアーケード
迷いこん

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エイプリルフールの詩

エイプリルフールの詩

消えないように足跡残した
パン屑の代わりにと大地を踏みしめ
出来損ないの僕らが残せる物は
ごく限られてる
問答無用で連続する日々から
逃げおおせるなんて思っちゃいない
それでも有限と云(い)うなら
その分わずかくらい欲張らせてほしい

春風が咲(わら)う
見返りなどいらない
朽ちた矛と盾を携え
なんだっていいどうだっていいを
嘘っぱちと綯(な)い交ぜにして
この小さな器に盛りつけよう

四月の実り

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未亡人の詩

未亡人の詩

水面(みなも)を伝う哀しい波紋
また幾千もの人の縁が断ち切られていく
卑怯な私は
耳障(ざわ)りなニュースの聴こえない
深い水底で息を止めた
Asphyxia(アスフィクシア=仮死)
神様お願い
滞って淀んだ時間に浸っていさせて
地上から四つの季節が失われるまで

「自分には何も無い」
可哀相な呪文を唱える人たち
世界中の悲劇を知らずにいても
みんなの幸せの量は変わらない
仄かに蜜の味のする逆さま

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不登校児の詩

不登校児の詩

夏の終わりを報せる旋律
朝に弱い僕は
大切じゃないモノしか集めることができない
早いモノ勝ち
あの子は1等賞のアイツを好きになった

輪の外へ逃げたはずが
そこは弱い蛞蝓(なめくじ)のための牢屋
この痒さ憎たらしい
いっそ痛いくらいでいいのに
心とかいう架空の臓器
ソイツを凍りつかせていれば
大丈夫でいられる
僕は無敵でいられる

インスタントな薬草の在り処(ありか)
さ迷う掌(てのひら)の社交場

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RTA走者の詩

RTA走者の詩

いつからか箱庭の中に居た
重力の不自由さを感じない世界で走る
同化してるw
すべてを履き違えたまま靴を鳴らす
二周目のつもりの人生
次は上手くやる
嗚呼(ああ)そうさ
走り去った日々に感想はいらない
必要なのは完走しきる躰(からだ)

指先から漏れ出る幽体に追い越され
背中に焦燥の体当たり
時間が解決してくれる?莫迦(ばか)言うなw
一刻を争ってんだ
刹那で生きてんだ

チックタック四苦八苦
疾駆

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VTuberの詩

VTuberの詩

そこだけ鮮やかな
朱(あか)い絨毯(じゅうたん)を歩んでゆく
一面
蚕(かいこ)を口無しにした生き物の群れ
差し出された花束
色とりどりの色彩はどこへ?

演じるは不死身の織姫
あの薫り高い時じくの木の実を食べたの
切ない味のする綺麗事ばかり食べたの

ねえ
ほんとに笑ってる?

敷かれた屍(しかばね)を踏み越えていっても穢(けが)れたことにならない
訳(わけ)知り顔の赤頭巾はそう言ってた
欲に塗

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