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読書記録_本

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読書(漫画以外)の記録。 名前が覚えられないため、外国の本があまり読めない。まほろ市出身。 Instagramにも載せています。 https://www.instagram.co… もっと読む
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#エッセイ

『しんがりで寝ています』三浦しをん

『しんがりで寝ています』三浦しをん

ブフ、と前書きで吹き出してしまったので私の負け。本屋を徘徊していて好物の三浦しをんのエッセイを見つけたものの、値段に逡巡していた。でも前書きだけで私を笑わせるとは。やっぱり三浦しをんのエッセイは別格だ。精神安定剤、この世界を生き延びるための必需品だもの、とも思ってレジへ持っていった。

生理用ナプキンの袋をどう開けるのかをネイリストさんと話し合ったり、タクシーの運転手さんと新しい元号を予想したり(

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『しあわせしりとり』益田ミリ

『しあわせしりとり』益田ミリ

白湯のように、しんみりおいしくて、自分にするする入っていって、温めてくれた。益田ミリさんのエッセイ。

夜の新大阪から東京行きの新幹線。一人暮らしの家に粗大ごみを持ち帰ったこと。一人カラオケのこと。新宿でお笑いライブを見て、帰りに九段下の桜を見に行く話。大きな出来事ではないが、死ぬ前の走馬灯で幸せな場面として出てきそう。

益田さんはよく妄想をする。私は妄想よりひたすら分析をするタイプなので、他の

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『ご飯の島の美味しい話』 飯島奈美

『ご飯の島の美味しい話』 飯島奈美

料理・食べ物系のエッセイは心地よい。久しぶりに途中から読んでも登場人物やストーリーがわからなくなることはないし、たいていおいしいものについて書かれていて想像するとよい気分になる。つまらなかったとして無害、だいたいは有益だ。

『かもめ食堂』などのフードスタイリスト飯島奈美さんのエッセイ。撮影では役者さんの演技に合わせて揚げ物をあげまくること、「普通」の食器を見つけるのが意外と難しいこと、梅酢を商品

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『そして誰もゆとらなくなった』 朝井リョウ

『そして誰もゆとらなくなった』 朝井リョウ

『桐島、部活やめるってよ』で新人賞を受賞、現在、日本経済新聞でも小説を連載している朝井リョウ。彼のエッセイやラジオが本当にくだらなくて、私は大好きだ。

『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』に続くエッセイの三作目。今回はウンコの話が多い。朝井さんは大変にお腹が弱い。(整腸剤メーカーがスポンサーになって、腹よわの星野源氏と対談などをしてほしい)私も幼少期から頻尿でトイレの場所を視界の片隅でいつも

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『炉辺の風おと』 梨木香歩

『炉辺の風おと』 梨木香歩

私が信頼を置いている(読者として一方的に、だが)梨木香歩さんの最近のエッセイ。毎日新聞の週次連載だったらしい。

八ヶ岳に購った(「あがなう」という言葉を初めて使った。とても綺麗な言葉だ)山小屋についてのエピソード、コロナ禍における世の中の状況や政治、そしてお父さんの看取り。

梨木さんといえば、植物と鳥。本エッセイでも、「キクイタダキ」が彼のお気に入りの「ヤエガワカンバ」の枝にエサを運ぶ、といっ

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『僕の献立 今日もお疲れさまでした』麻生要一郎

『僕の献立 今日もお疲れさまでした』麻生要一郎

麻生さんのInstagramでお弁当やごはんを見るたびに「なんておいしそうなんだ…」と思い続けてきた。

表紙のお弁当をじっくり見てみる。唐揚げは白い衣がからっとあがっているし、照り照りの焼き魚はご飯と合わないわけがないし、切り干しもがんもも、じゅわっと味が染みているだろう。この卵焼きは甘いのか、しょっぱいのかドキドキしながら口に運ぼう。どっちでも彼が作るならおいしいに違いない。みょうがと瓜の塩漬

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『延長戦に入りました』 奥田英朗

『延長戦に入りました』 奥田英朗

「レスリングのタイツはどうして乳首を隠さないのか」「スポーツにおける大きな顔の影響」「子供の頃の足の速さがその後の人格形成に及ぼすこと」などスポーツや運動に関するエッセイ。「面白いから」と友人に渡された。

小説家という人は普段こんなに面白いことやどうでもいいことを考えているのか、と「プププ」と吹き出しそうになりながら戦慄を覚える。奥田英朗さんは『空中ブランコ』を以前読んだことがあるくらいで、まだ

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『のっけから失礼します』 三浦しをん

『のっけから失礼します』 三浦しをん

コロナで週末外出自粛要請が出てから、ガラっと気分が変わった。私の町の図書館も閉まってしまった。Beforeコロナ時に選んだ本が家にあるけれど、今それが読みたい気分じゃない。在宅仕事でなまった体にマスクを装着して本屋に出かけた。ああ、これだよ、今求めている本は。

三浦しをんのエッセイは「約束されている」。何が?面白さが、彼女ならではの独特な世界が。私は彼女のエッセイが大好きで、図書館で読んでいない

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『佐野洋子の「なに食ってんだ」』 佐野洋子 オフィス・ジロチョー

『佐野洋子の「なに食ってんだ」』 佐野洋子 オフィス・ジロチョー

『100万回生きたねこ』を小さい頃に読んでいなくて、私の知る佐野洋子は『ヨーコさんの言葉』や『死ぬ気まんまん』で、その場に迎合するのではなくて、自分の感じたことや考えたことをスバっという豪快な人、という印象。彼女の絵本や小説、エッセイに出てくる食についての本。

中国で暮らしていた時の食べ物、銀座のお寿司、念入りにつくったおせち、おいなりさんといった食べ物だけでなく、石やセーターなど食べ物ではない

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『パスタぎらい』ヤマザキマリ

『パスタぎらい』ヤマザキマリ

イタリアに暮らし始めて35年。イタリア留学のほか、世界各地を旅したり、住んだりしている『テルマエ・ロマエ』の漫画家ヤマザキマリによる食エッセイ。彼女は貧乏時代にパスタを食べすぎたせいか、パスタが嫌いだという。

彼女が死ぬときに口に突っ込んでもらうよう息子に依頼している(そのくらいおいしい)ポルチーニ茸やイタリアのお義母さんが「今日は寿司にするから食べに来い」と言った時に出てきた寿司の様子、コンビ

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『悲しくてかっこいい人』 イ・ラン

『悲しくてかっこいい人』 イ・ラン

この本を買ったのは、吉祥寺の「百年」。同じ著者のイラストエッセイみたいな本があって、パラパラとめくっていたら面白かったのだ。いつもと同じように「絵ばっかりの本では、すぐ読み終わってしまってコスパが悪い!」と思い、読むのにもう少し時間がかかる彼女のエッセイをレジに持っていった。すぐに口の中で溶けてなくなるチョコレートではなくって、キオスクで売っているのど飴みたいに飴のセロファンをめくっては口に入れて

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『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』 村上春樹

『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』 村上春樹

読んだことのあるエッセイが入っていた。大学生の頃、ananに連載されていたらしいから、何かの特集で買ったときに読んだんだろう。そんな再会もあるんだな。発行は2011年。

村上春樹のエッセイを積極的に読んだことがなかったが、Twitterで「村上春樹のつぶやき」というエッセイの一文を紹介するようなbotをフォローしていて、読んでみたいと思ったのだ。軽快だし、着眼点が私とは違って面白い。ギリシアとか

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『よなかの散歩』角田光代

『よなかの散歩』角田光代

私は料理は得意ではないが、食べることは相当好きで、それを人と分かち合うのが大好き。食いしん坊の文章を読むのも大好き。素晴らしい着眼点と感性、そして表現力をもつ作家によって紡がれる食べ物話の素晴らしさよ。この本は「料理がめっぽう好き」な角田光代さんによる『オレンジページ』連載のエッセイ。

角田さんの食べ物愛に「そうそう」と激しく同意したり、「こ、この人すごいな・・・」とちょっと引いてみたり。人でも

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『いくつになっても、旅する人は美しい』桐島洋子

『いくつになっても、旅する人は美しい』桐島洋子

私は旅人属性の人に会うと安心する。旅人は新しいものを体験することに心を開いていて、適度にフレンドリーな気がする。そうでないと旅なんてしないし、旅先でやっていけない。そして自分の常識が場所によっては「アウェイ」であることを知っているから、他人に同調を強いたりしないし、「変わってるね」とか安易に言わない気がする。旅人属性にも度合があるけれど、桐島洋子さんは相当だ。

1937年東京生まれの桐島さんは、

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