kyokota(きょこた)

本と手しごと、植物を愛する東京在住者。 「末長く、毎日たのしく過ごしたい。もちろん今日…

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本と手しごと、植物を愛する東京在住者。 「末長く、毎日たのしく過ごしたい。もちろん今日も。」 http://kyokota.net/ 子宮筋腫体験記録はこちらのURLに移動しました。 http://kyokota.net/category/others/we/

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『きのう何食べた?』23巻 よしながふみ

とてもよい 余計なことは書かない 『きのう何食べた?』23巻 よしながふみ

    • 『カーシェアグルメドライブ』ごめたん

      友人たちとドライブに行って楽しい時間を過ごせたのも、膝の調子が良くない母を車に乗せて送れたのもこの人のおかげだ。ごめたん氏、ありがとう。 これは39才で免許を取った、芸人の五明氏がシェアカーで各地の美味しいものを食べに行くマンガである。おいしそうな食べ物(私はGoogleマップに全ての店をマークした)、ドライブ中に流れる音楽の選曲、惹きつけられる絵、エピソードが相まってテンポよく読めて非常に面白い。布教のため貸した友人は食事の席で読み出し、話が切れる頃合いを見てはまた読み始

      • 『照子と瑠衣』 井上荒野

        『テルマ&ルイーズ』のオマージュ小説だという本作。私は観ていないが、その映画が女2人の逃走劇だということは知っている。なんだか面白そう。 主人公は優等生タイプの照子と、奔放タイプの瑠衣、70歳の女性2人による逃走劇。彼女たちは何から逃げるのか。逃走生活なんて精神的に相当きつそうなのに、それでも彼女たちは元いた場所には戻らない。逃走先で身元を明かさずに築く人間関係も、次第に温かみを帯びてくる。でもいつかは離れなければならなくて…ここにあらすじ、ネタバレを書くともったいないので

        • 『夢の回想録 髙田賢三自伝』髙田賢三 『高田賢三と私』鈴木三月

          「素敵。きれいな色っていいな」と純粋に思えたのは、初台で行われている「髙田賢三 夢をかける」展でのことだった。作品の鮮やかさと、展覧会で放映されていた動画での髙田さんの穏やかな語り口が結びつかなくて、どんな人か興味がわいた。複数の切り口から彼の姿を見たくて、本人による回想録と、『髙田賢三と私』を手に取る。 1939年に姫路の花街で「浪花楼」という待合を営む実家に生まれる。戦争で疎開。実家はほぼ消失してしまう。神戸市外国語大学に進んだ彼は、広告で文化服装学院が男子の洋裁学生を

        『きのう何食べた?』23巻 よしながふみ

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          『成瀬は天下を取りにいく』 宮島未奈

          本屋にポスターが貼られていて、評判のよい成瀬が、私の元にもやってきた。 「人にに変に思われる」とか余計なことを気にせず、自分の気持ちや好奇心に素直に生きていく滋賀のティーンネイジャー成瀬あかり。「大衆」みたいなぼんやりとしたものはもちろん、特定の人に嫌悪や好意を持たれても、彼女は一貫して成瀬である。人を気にしないかと思いきや、人間味もある。 その姿がかっこよくて魅力的。実際の付き合いだけではなくて、SNSまでも気にするような昨今、そんな彼女が眩しくて人気なのがよくわかる。 お

          『成瀬は天下を取りにいく』 宮島未奈

          梅干し作り

          梅干しを漬けるのは5回目くらいだ。「丁寧な暮らし」を気取って始め、今は必要に迫られて作っている。私にとっておばあちゃんが作ってくれた梅干しが最上であり、シンプルなそのタイプは、なかなか売っていない。カツオ梅やはちみつ梅も味として好きだけれど、おばあちゃんの梅干しが家に無いと不安になる。玉子入りおじやには何を入れればいいんだ、正統派おにぎりを食べたい時はどうすれば? 梅干しの作り方は難しくない。梅の実のおへそを取って洗い、水気をとって塩に漬ける。次第に梅酢が上がってくる。この

          アーバン

          「どうしても住んでみたかったから」と友人が、道行くはイケメンと美人ばかりというオシャレな街へ引っ越して行った。そんな友人を私たちは「アーバンだ」と評する。 私にとっての「アーバン」は、夜、六本木から渋谷にバスで移動すること。西麻布、青山も通るあの辺りは外国みたいに見える。夏の夜なんかは、店が開け放たれていて外で飲んでいる人たちもいて良い。 去年の夏、友人夫妻と国立新美術館の夜展示を見て、飲んでそのまま気持ちよくなって渋谷まで歩いた。六本木から赤坂の御所前に出て、そのまま青

          笑点のルール

          最近、「私は間違っていたな」というか「早く気づけばよかったな」ということがあった。それは「笑点では座布団をとることが目的ではない」ということだ。 笑点には「良い回答をすると座布団がもらえ、この枚数が一番多かった人が勝ち」というルールがある。でも、よく考えると、回答者も番組のプロデューサーも「面白いことを言って視聴者に楽しんでもらう」ことを目的としている。視聴者も座布団を沢山とる人ではなくて、面白い人が好きだ。だから、座布団を没収されて0枚でも面白い人が好まれる。私も座布団の

          『くもをさがす』西加奈子

          この人のこと、好きだ。この本は夫と小さな息子と暮らす、小説家の西さんがコロナ禍のカナダで乳がんになって治療する話である。内容は、帯の「カナダで、がんになった。あなたにこれを読んでほしいと思った。」これに尽きる。シンプル、でも奥深い本。 どうやってがんに気づいたか、気持ちがどう動いていくかという西さんの暮らしや体調、心境が綴られる。カナダでは両乳房切除でも日帰り手術なので日本とは全然違う。そんなカナダの医療や医療従事者事情とは。移民の多いかの地では、医師との面談に通訳がつくこ

          『くもをさがす』西加奈子

          『しんがりで寝ています』三浦しをん

          ブフ、と前書きで吹き出してしまったので私の負け。本屋を徘徊していて好物の三浦しをんのエッセイを見つけたものの、値段に逡巡していた。でも前書きだけで私を笑わせるとは。やっぱり三浦しをんのエッセイは別格だ。精神安定剤、この世界を生き延びるための必需品だもの、とも思ってレジへ持っていった。 生理用ナプキンの袋をどう開けるのかをネイリストさんと話し合ったり、タクシーの運転手さんと新しい元号を予想したり(「タピオカ元年」はどうか)、といったどうでもいい、だけど彼女のエッセイからでしか

          『しんがりで寝ています』三浦しをん

          『オズの魔法使い』ライアン・フランク・ボウム

          YouTubeである歌を聞いたら、涙が出てきて嗚咽しだした。人生が八方塞がりの時に、聞いていた曲だった。どうした?完全に忘れていたのに、今は事態はよくなっているのに、自分の内側にあの時の気持ちが残っているらしい。 なぜこの曲を聞いたかというと、ミュージカル『Wicked』が映画化されるニュースを見たからだ。『Wicked』はサブスクなんてない頃、イギリス留学時にミュージカル好きの友達からファイル共有でiTunesにインポートして聞いていたサントラである。何曲か欠けていたかも

          『オズの魔法使い』ライアン・フランク・ボウム

          モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語』内田洋子

          段ボールに本を詰めたらすごい重さになって驚く。イタリアの山深い村には本の行商を生業とする人たちがいたという。今のように文庫本がない時代は、さらに重かろう。 貧しく、売るものがなかったから、村人たちは石を売りにでかけた。そして軽くなった荷には本をいれて売り歩くようになった。大きな町の真ん中に露店を開き、町から町へ、本を売り歩く。客の要望を聞き、本を届ける彼らは、客や出版社の信頼を集める。識字率の向上にも貢献する。時に禁書を忍ばせ、思想を運んだこともあったという。彼らの子孫はそ

          モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語』内田洋子

          『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ

          女と美容師の会話。 私、今つまらない本を読んでいて。読み進めるか、止めるか迷っていて。 面白いね、人生みたい。 1/3読んだところで気づいたんです。この本、愚痴ばっかりだってことに。半分まで読んでもそうで。主人公はチャイ屋の息子で父親に殴られながら、学校に行かずスパイスをすりつぶして暮らす。ひょんなことから教育を受ける機会に恵まれて、その後替え玉受験のビジネスを始める。今回のクライアントもバカ息子で、要は幼少期も今もくそったれ、っていうことがずっと書いてある。本の半分あ

          『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ

          『リスペクト』ブレイディみかこ

          生活に不満があるとして。それが行政や政治に大きな原因があるとして。私なら、そして日本に住む多くの人たちは、どうするだろう?おそらく仲間うちで愚痴を言い合ったり、SNSに不満をぶちまけるだけだろう。せめて、選挙で「ちゃんと」投票するくらいなんじゃないか。でも、この本に出てくるシングルマザーたちは、行動を起こした。 2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件を元にした小説。2012年のロンドンオリンピックを機に裕福ではない人たちが住む東ロンドンの再開発が進み、地価が高騰していく

          『リスペクト』ブレイディみかこ

          『3月のライオン』17 羽海野チカ

          彼らが、幸せでありますように。健やかで楽しい時間が1秒でも多くありますように。登場人物や作者である羽海野チカ先生に心から思う。これは祈りだ。私は神ではなく、『3月のライオン』関係者に混じり気のない気持ちを捧げる。 部屋を片付けていたら見つかった16巻。つい読み返して涙を浮かべて、そういえば新しい巻が出ていたような、とスマホに巻数をメモして笑顔いっぱいの零と二階堂くんの表紙を本屋で見つける。大丈夫、巻は飛んでいない。 どんなに努力して、犠牲を払っても、全員が勝てるわけではな

          『3月のライオン』17 羽海野チカ

          『正欲』朝井リョウ

          朝井リョウのエッセイとラジオが大好きだ。へなちょこで、くだらなくて、下世話な彼。そういえば彼の小説をちゃんと読んだことがない。友達が「今『正欲』を読んでいる」っていっていたっけ。 これは、私にとってすごい小説だった。とてもお勧めなので、これから読む人の邪魔にならないよう、極力あらすじには触れない。朝井リョウ、お腹弱くてアメリカでもトイレを詰まらせていたのに、あんた、すごいよ!!!心から賛美する。 小説の序盤で、ある犯罪により成人男性3人が逮捕されるニュースが引用される。私

          『正欲』朝井リョウ