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『オズの魔法使い』ライアン・フランク・ボウム

YouTubeである歌を聞いたら、涙が出てきて嗚咽しだした。人生が八方塞がりの時に、聞いていた曲だった。どうした?完全に忘れていたのに、今は事態はよくなっているのに、自分の内側にあの時の気持ちが残っているらしい。

なぜこの曲を聞いたかというと、ミュージカル『Wicked』が映画化されるニュースを見たからだ。『Wicked』はサブスクなんてない頃、イギリス留学時にミュージカル好きの友達からファイル共有でiTunesにインポートして聞いていたサントラである。何曲か欠けていたかもしれない。日本に帰りたくないけれどビザもお金もない伝手もない。人生で一番がんばったことは実を結ばない。どうすることもできないってこういうことか。帰国したらリーマンショックで仕事にありつけない、彼氏とは別れた、日本社会になじめない、この気持ちをわかってくれる人もいない(気がした)という最悪の状況だった。そんな時に聞いて、歌っていたのが、「Defying gravity(直訳:重力に抗う)」という曲。

そんな思い入れはあるものの、英語だからミュージカルのあらすじも歌詞もよくわかっていないところがあり(留学しても私の英語力はそんなものだ)映画を見る前に予習をしようと思って読み始めたのが『Wicked』の世界観を元にした『オズの魔法使い』。まずはここから予習しようと思ったのだ。長い導入で申し訳ない。

ハリケーンで異世界に飛ばされて、かかしや勇気のないライオンと女の子が旅をする話、というぼんやりとした認識で読み始めた。著者によるまえがきによると、道徳教育は抜きにして楽しむだけを目的とした子どもたちへの本を書いた、とのこと。その考え好きよ、と読み進める。肉食のライオンと食事中距離をおきながら、ねずみを守るために山猫を殺したり、カラスの首をちぎったりする登場人物たちの価値基準が私にはよくわからない。私は悪人と善人が分かれている話にどうもなじめない。悪人にも善意が、善人も悪意を持つのでは、それが人間なのでは?と思ってしまう。さておき。かの地では、中央にオズが住むエメラルドシティがあり、東西南北に良い魔女と悪い魔女がいる。主人公は竜巻に巻き込まれてカンザスから飛んできた少女ドロシー。動物やかかし、ブリキの木こりとは言葉で意思疎通ができ、「マンチキン」など色々な種族が住む。『オズの魔法使い』の世界観は把握することができたので目標を達成した。ちなみに私が読んだのは江國香織さん訳。

『オズの魔法使い』ライアン・フランク・ボウム

#オズの魔法使い #小説 #読書感想文

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