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『リスペクト』ブレイディみかこ

生活に不満があるとして。それが行政や政治に大きな原因があるとして。私なら、そして日本に住む多くの人たちは、どうするだろう?おそらく仲間うちで愚痴を言い合ったり、SNSに不満をぶちまけるだけだろう。せめて、選挙で「ちゃんと」投票するくらいなんじゃないか。でも、この本に出てくるシングルマザーたちは、行動を起こした。

2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件を元にした小説。2012年のロンドンオリンピックを機に裕福ではない人たちが住む東ロンドンの再開発が進み、地価が高騰していく。主人公は東ロンドンにある、立ち退きを宣告されたホームレスシェルターに住むシングルマザーたちだ。そもそも働いていたって、このエリアの家賃は高すぎて払うことができないのに、子どもを抱えた母親にはどうすることもできない。彼女たちは子どもを連れて路上でスピーチを始める。周りを見渡せば、人が住んでいない公営住宅はたくさんあるのに、開発、転売のために締め切られたままである。彼女たちはこの公営住宅に無断で潜入、占拠し、コミュニティを作っていく。食べ物や資金を寄付する人、手弁当で住宅を修理する人…と賛同者が広がり、マスコミにも取り上げられ、彼女たちの活動は次第に大きくなっていく。

この本にはたくさんの要素が詰めこまれている。登場人物の一人一人はドラマがたくさんありそうな魅力的な人たち。現代と1980年代の活動家、イギリスと日本、貧困や時代錯誤の日本企業、恋や情熱、それから、それから…。どの要素にも配慮があるが、それぞれをもっと深く読みたかったな、と思った。

『リスペクト』ブレイディみかこ

#小説 #本 #読書感想文

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