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ヘロヘロになる。
この意味を今日初めて知った僕は肩で息をする。
いつもは素っ気ない君が珍しく「会いたい」なんて言うものだから。
親を起こさないように家を抜け出し、街灯が主役の丑三つ時を自転車で走る。
山を1つ越えた所に住む君の顔を見たい、その一心で熱を帯びる太腿を過剰運動させる。
もうヘロヘロだ。
ひ
氷点下を知らせる幹線道路沿いの気温計。
いつもは見るのも疲れるぐらい色うるさい街が、白と街灯のオレンジだけで統一される。
1台も車が走っていないのは、都市部のドライバーの運転が下手で事故が起こるからなんだと冷めた事を考える。
何とも言えない足音がクセになり、頭と肩を白くしながら家の前を往復する。
数分前の私の軌跡は消えていく。
私の生きた証もこんなものなんだろうか。
の
呑気に鼻歌を唄いながら洗濯物を干すあなた。
いつもの時間である事を確かめ、自分の感覚時計を微修正する。
階段を上り、ドアに手をかける。
足音を忍ばせながらリビングに向かう。
籠にはまだ半分以上洗濯物がある。
気づかれないように身を隠す。
ドッキリに弱いあなたの心臓が心配。
と
トマトジュースが顔にかかった。指
で拭って舐めると鉄の味がする。
手と顔を洗い、着ていた服はゴミ袋に入れて口を絞める。
洗面台にあった名前の分からない香水を吹きかけ、クローゼットから色あせたTシャツと穴の空いたジーンズを着る。
今日は古紙・衣類の回収日。サ
ンタみたいにゴミ袋を担ぎ家を出る。
ヨギボーを刺しただけなのに、なんでトマトジュースが出たんだろう?