KooKumi

障がいのある彼らと私の話/緘黙症だった私

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障がいのある彼らと私の話/緘黙症だった私

マガジン

  • 障がいのある彼らと私

    障がいのある人たちとの日々。支援する側の私と彼らの日常を、エッセイのように、あるときは詩のようなもので書いています。

  • 緘黙症だったわたし

    物心ついたころから場面緘黙症であった私。あの頃の自分、年齢を重ねるにつれて薄れていった緘黙症のこと。

  • 西アフリカの音楽とダンス

    とても趣深い西アフリカ(マンディング)の伝統的な文化、演奏やダンスについて考えていること。

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固定された記事

ことの発端/ profile

22歳の時 大学の作業療法学科を 3年生で中退して しばらくフラフラしていた。 それから虚しくなって 「人と本当に関わり合いたい」 そう感じて思いついたのが 知的障がい…

KooKumi
3年前
18

エピソード :話せない=話がわからないわけではない

あるとき 担当の利用者Aさんを通所先に迎えに行ったら 手首に大きな打ち身みたいのがあり 記録を読んだところ その日の朝の欄に " 赤みがあるが本人気にしていないので観察…

KooKumi
5か月前
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それってタイミングの問題なんだ/自閉症のブルー episode3

私はその人をブルーと呼んでいる。 自閉症のブルー。 さて 事件が起きたのは土曜日。 私たちは 前の日の夜から一緒にいた。 寝て起きておはようって言って 朝食を食べて…

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達観 / 自閉症のブルー episode2

自閉症のブルーは話すことができない。 そんなブルーに時々 乱暴な声をかける人もいる。 「おい!ブルー!」と。 彼らは 自分の弱さを認めているようなものだと 私は思う…

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sweet blue/自閉症のブルー episode1

私はその人をブルーと呼んでいる。 優しさの青、ブルー。 ある日の夕方 いつものように 自閉症のブルーを迎えに行く。 時々帰りに一緒に買い物するから ブルーは私に訊い…

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自分の見ている世界は真実とは限らない、真実ではなくてもいい

東田直樹さんの本を2冊読んで 自分の価値観に 改めてハテナを投げかけている。 会話のできない重度の自閉症である彼が 本を書いてくれてることによって "自閉症の彼らが …

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続・風になれ/ダンスする episode2

前述の話から もう少し踏み込んで話せば こうだ。 ダラマン(私の師匠でマリ人、伝統音楽継承者) が側にいたとき 小さな鍵穴の中からマリの風景が見えていた。 自分がなん…

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星の下で

ただただ 星の下で眠るように 生きよう ワクワクすることは何? 踊る 音楽を聴く 文章を書く 本を読む 美術館に行く 飛行機で旅行に行く かわいい人に会う 好きなものを好…

KooKumi
3年前
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フライデー

私が今日 あの子に言わないといけないニュースは 明日金曜日だけど 自宅に帰らないということ。 かわいいあの子は カレンダーを指差して 私に言った。 「明日おうちに帰る…

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それは 誰かの心の中に 君が灯したあかりの話 想像してみて 足元にひとつひとつ 等間隔に 淡いあかりが灯って ずっと続いていく景色を それを とても君らしいと僕は思う …

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3年前
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クリスマスなんて

かわいいあの子は カレンダーの12/23を指差して わたしに聞いた。 「明日はなんの日?」 「あのね、クリスマスパーティーだよ」 私がそれを言い終わる前に 堰を切ったよう…

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3年前
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episode3 革命のあと/緘黙症だった子どもの私

今から2〜3年ほど前 私は 自分以外の「話せない子」に 生まれて初めて遭遇した。 そういえば 私の"話せないちゃん"は? というと 本人からも すっかり忘れ去られていたの…

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3年前
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episode2 強烈先生、現る/緘黙症だった子どもの私

あの革命のあとも 人と喋れないことが まだ私の人生を覆っていた。 重たい霧のように 何枚も重なった薄いベールのように。 そんな私に 第2の革命は訪れた。 それは小学校…

KooKumi
3年前
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episode1 お母さん革命/ 緘黙症だった子どもの私

物心ついたときには 既にこう思っていた。 "自分なんかがおしゃべりをしても 誰も面白くない" と。 思い出せる1番昔の感情がそれなので それ以前に一体何があって そう思…

KooKumi
3年前
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ヴァージニアの月

https://youtu.be/fGSzPwUXees 1番好きな星さ、天国みたいな そこにいて ソフトでブルーなヴァージニアムーン 今夜待ってるよ 今日を2つにわけるような 甘い誘いに呼ばれ…

KooKumi
3年前
3
ことの発端/ profile

ことの発端/ profile

22歳の時
大学の作業療法学科を
3年生で中退して
しばらくフラフラしていた。

それから虚しくなって
「人と本当に関わり合いたい」
そう感じて思いついたのが
知的障がい者の通所施設で
働くことだった。

それが
"障がいのある彼ら"と
出会い始めた最初。

それからの仕事は
とてもハードであったように思う。
まいにち全力疾走したみたいに
クタクタになってよく眠った。

思い切り
泣いたり笑ったり

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エピソード :話せない=話がわからないわけではない

エピソード :話せない=話がわからないわけではない

あるとき
担当の利用者Aさんを通所先に迎えに行ったら
手首に大きな打ち身みたいのがあり
記録を読んだところ
その日の朝の欄に
" 赤みがあるが本人気にしていないので観察。"
と書いてあっただけだった。
ビックリした。
割と大きな怪我に見えるけど
それだけ?と。
上司に連絡も相談もなく次の担当者に引き継ぎもない。
1日経っても消えない赤み
若干腫れもありそうな打ち身に見えた。

Aさんは話ができない

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それってタイミングの問題なんだ/自閉症のブルー episode3

それってタイミングの問題なんだ/自閉症のブルー episode3

私はその人をブルーと呼んでいる。
自閉症のブルー。

さて
事件が起きたのは土曜日。

私たちは
前の日の夜から一緒にいた。
寝て起きておはようって言って
朝食を食べてから
散歩に出かけた。

しかし
帰ってきたら
なんと
ブルーは颯爽と部屋のカーテンを閉め
お風呂に入るっていうのだ。
驚いた。
AM11:00の出来事である。

どうやらブルーは思っているらしい
私と帰ってきたら
お風呂に入るもの

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達観 / 自閉症のブルー episode2

達観 / 自閉症のブルー episode2

自閉症のブルーは話すことができない。
そんなブルーに時々
乱暴な声をかける人もいる。
「おい!ブルー!」と。

彼らは
自分の弱さを認めているようなものだと
私は思う。
何も言えないブルーに対して
自分の力を誇示しているかのように見えるから。

そういうときブルーは
一瞬ふと立ち止まって耳を傾けたあと
何事もなかったかのように
自分の日常に戻る。

私は
飄々と淡々としているあの子を
とても素敵だ

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sweet blue/自閉症のブルー episode1

sweet blue/自閉症のブルー episode1

私はその人をブルーと呼んでいる。
優しさの青、ブルー。

ある日の夕方
いつものように
自閉症のブルーを迎えに行く。

時々帰りに一緒に買い物するから
ブルーは私に訊いた
「買い物に行くの?」と。
ブルーは話すことができないのだけど
よくジェスチャーで質問をするのだ。
そのくらいの簡単な会話は
私たちの間では成り立っている。
いつもなら返事は
「うん、買い物に行こう」か
「帰るよ」のどちらかだ。

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自分の見ている世界は真実とは限らない、真実ではなくてもいい

自分の見ている世界は真実とは限らない、真実ではなくてもいい

東田直樹さんの本を2冊読んで
自分の価値観に
改めてハテナを投げかけている。

会話のできない重度の自閉症である彼が
本を書いてくれてることによって
"自閉症の彼らが
自分とは全然違う世界を見ている可能性"
が浮上したからだ。

最も印象的なことは
東田さんは
幼い頃に
自身を人間ではなく自然の一部だと思っていたこと。
壊れたロボットを操縦しているような感覚でいること。

それは私にはとてもショッ

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続・風になれ/ダンスする episode2

続・風になれ/ダンスする episode2

前述の話から
もう少し踏み込んで話せば
こうだ。

ダラマン(私の師匠でマリ人、伝統音楽継承者)
が側にいたとき
小さな鍵穴の中からマリの風景が見えていた。
自分がなんとかその鍵穴を覗いて
マリの風を感じていることで
自分を媒体として
みんなにもそれを感じてもらいたい
と思っていた。

ところが
師匠ダラマンは
昨年10月
突然母国マリへ帰ってしまい
状況は一変。

私は
ある意味では心の拠り所を

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星の下で

星の下で

ただただ
星の下で眠るように
生きよう

ワクワクすることは何?
踊る
音楽を聴く
文章を書く
本を読む
美術館に行く
飛行機で旅行に行く
かわいい人に会う
好きなものを好きなときに食べて
フラッと出かける

誰かといる
1人でいる
淡々と
笑ったり
つまらなかったりする日も
あっていい

それが全てなのだ

深い意味は
特に求めなくてもいい

想像しすぎず
見えてるものだけに惑わされず
思い切り

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フライデー

フライデー

私が今日
あの子に言わないといけないニュースは
明日金曜日だけど
自宅に帰らないということ。

かわいいあの子は
カレンダーを指差して
私に言った。
「明日おうちに帰る」って。

そうだね
いつもなら金曜の夜は自宅に帰る。
でも明日は帰らない。

ドキドキしながら
私は答えた。
「明日は家に帰らないよ
 ここに戻ってきてね」

ガッカリしちゃうかな
ルーティーン大事にしてるあの子は
困ってしまうか

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光

それは
誰かの心の中に
君が灯したあかりの話

想像してみて
足元にひとつひとつ
等間隔に
淡いあかりが灯って
ずっと続いていく景色を

それを
とても君らしいと僕は思う
ただ淡々と
淡々と並ぶその様子

僕もつられて淡々と
たどって歩いていくと
それは確かな道になっていた

そして
その道の先の先
はるか彼方に
小さな光が見えて来る

辿り着くべき場所が
そこにはきっと
あるんだろう
君にも見え

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クリスマスなんて

クリスマスなんて

かわいいあの子は
カレンダーの12/23を指差して
わたしに聞いた。
「明日はなんの日?」

「あのね、クリスマスパーティーだよ」
私がそれを言い終わる前に
堰を切ったように
あの子はこう言った
ほとんど一息で。

「クリスマス
フライドチキン
ポテト
 コカコーラ
 ケーキ
 イチゴののったケーキ
 明治神宮
 はつもうで!」

ストップストップ
最後のはずいぶん
大事なところとば

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episode3  革命のあと/緘黙症だった子どもの私

episode3 革命のあと/緘黙症だった子どもの私

今から2〜3年ほど前
私は
自分以外の「話せない子」に
生まれて初めて遭遇した。

そういえば
私の"話せないちゃん"は?
というと
本人からも
すっかり忘れ去られていたのだ。

そのとき
25歳くらいだった"話せない"彼女は
(私よりひと回りほど若い)
私と一緒に働いてた。
7歳のときの私ととても似ていた。
違うのは
家族も先生もフォローしてはくれないこと。
仕事をしなければならないということ。

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episode2  強烈先生、現る/緘黙症だった子どもの私

episode2 強烈先生、現る/緘黙症だった子どもの私

あの革命のあとも
人と喋れないことが
まだ私の人生を覆っていた。
重たい霧のように
何枚も重なった薄いベールのように。

そんな私に
第2の革命は訪れた。

それは小学校3年生のときの
担任の先生。

先生の決まりはこう。
・何か言われたら必ず大きな声で「ハイ」と返事
・文末には「です」をつける
(場合によっては"です"にはならないけど、3年生にわかりやすいようにそう言ったのだろう)
・先生に質問

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episode1  お母さん革命/ 緘黙症だった子どもの私

episode1 お母さん革命/ 緘黙症だった子どもの私

物心ついたときには
既にこう思っていた。
"自分なんかがおしゃべりをしても
誰も面白くない"
と。

思い出せる1番昔の感情がそれなので
それ以前に一体何があって
そう思うに至ったのかは謎。

とにかく強くそう信じていた。

原因は本当にわからない。
だって
私の家族はとても私に優しかったから。
誰もそんなことを言うはずもない
そう思わせるようなことをするはずもない
優しい人たち。

そういうわけ

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ヴァージニアの月

ヴァージニアの月

https://youtu.be/fGSzPwUXees

1番好きな星さ、天国みたいな
そこにいて
ソフトでブルーなヴァージニアムーン
今夜待ってるよ

今日を2つにわけるような
甘い誘いに呼ばれて
僕は今こうしていたい
ヴァージニアムーン
今夜待ってるよ

その光が僕らの影をうつす
朝の風が吹き抜け
明日が君を連れてったら
僕は言う、グッドナイト

その魅力は秘密なんだ
小さなささやき声で

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