KooKumi

障がいのある彼らと私の話/緘黙症だった私

KooKumi

障がいのある彼らと私の話/緘黙症だった私

マガジン

  • 障がいのある彼らと私

    障がいのある人たちとの日々。支援する側の私と彼らの日常を、エッセイのように、あるときは詩のようなもので書いています。

  • 緘黙症だったわたし

    物心ついたころから場面緘黙症であった私。あの頃の自分、年齢を重ねるにつれて薄れていった緘黙症のこと。

  • 西アフリカの音楽とダンス

    とても趣深い西アフリカ(マンディング)の伝統的な文化、演奏やダンスについて考えていること。

最近の記事

  • 固定された記事

ことの発端/ profile

22歳の時 大学の作業療法学科を 3年生で中退して しばらくフラフラしていた。 それから虚しくなって 「人と本当に関わり合いたい」 そう感じて思いついたのが 知的障がい者の通所施設で 働くことだった。 それが "障がいのある彼ら"と 出会い始めた最初。 それからの仕事は とてもハードであったように思う。 まいにち全力疾走したみたいに クタクタになってよく眠った。 思い切り 泣いたり笑ったり考えたり 話し合ったりした。 私のメーターは 毎日 あらゆる方向に振り切っていた

    • エピソード :話せない=話がわからないわけではない

      あるとき 担当の利用者Aさんを通所先に迎えに行ったら 手首に大きな打ち身みたいのがあり 記録を読んだところ その日の朝の欄に " 赤みがあるが本人気にしていないので観察。" と書いてあっただけだった。 ビックリした。 割と大きな怪我に見えるけど それだけ?と。 上司に連絡も相談もなく次の担当者に引き継ぎもない。 1日経っても消えない赤み 若干腫れもありそうな打ち身に見えた。 Aさんは話ができないので 指差しと簡単なジェスチャーで 自分の意思を伝えているのだけど だいたいの場

      • それってタイミングの問題なんだ/自閉症のブルー episode3

        私はその人をブルーと呼んでいる。 自閉症のブルー。 さて 事件が起きたのは土曜日。 私たちは 前の日の夜から一緒にいた。 寝て起きておはようって言って 朝食を食べてから 散歩に出かけた。 しかし 帰ってきたら なんと ブルーは颯爽と部屋のカーテンを閉め お風呂に入るっていうのだ。 驚いた。 AM11:00の出来事である。 どうやらブルーは思っているらしい 私と帰ってきたら お風呂に入るものだ、と。 ブルーには 時間という概念があまりなく 順番でスケジュールを理解して

        • 達観 / 自閉症のブルー episode2

          自閉症のブルーは話すことができない。 そんなブルーに時々 乱暴な声をかける人もいる。 「おい!ブルー!」と。 彼らは 自分の弱さを認めているようなものだと 私は思う。 何も言えないブルーに対して 自分の力を誇示しているかのように見えるから。 そういうときブルーは 一瞬ふと立ち止まって耳を傾けたあと 何事もなかったかのように 自分の日常に戻る。 私は 飄々と淡々としているあの子を とても素敵だと思う。 おこがましくも 我が子か弟妹のようにかわいく思えるブルーを 誇らしく感

        • 固定された記事

        ことの発端/ profile

        マガジン

        • 障がいのある彼らと私
          9本
        • 緘黙症だったわたし
          3本
        • 西アフリカの音楽とダンス
          1本

        記事

          sweet blue/自閉症のブルー episode1

          私はその人をブルーと呼んでいる。 優しさの青、ブルー。 ある日の夕方 いつものように 自閉症のブルーを迎えに行く。 時々帰りに一緒に買い物するから ブルーは私に訊いた 「買い物に行くの?」と。 ブルーは話すことができないのだけど よくジェスチャーで質問をするのだ。 そのくらいの簡単な会話は 私たちの間では成り立っている。 いつもなら返事は 「うん、買い物に行こう」か 「帰るよ」のどちらかだ。 でも 私はそのとき少し複雑な返事をした。 「買い物のメモを忘れてきたから 一旦

          sweet blue/自閉症のブルー episode1

          自分の見ている世界は真実とは限らない、真実ではなくてもいい

          東田直樹さんの本を2冊読んで 自分の価値観に 改めてハテナを投げかけている。 会話のできない重度の自閉症である彼が 本を書いてくれてることによって "自閉症の彼らが 自分とは全然違う世界を見ている可能性" が浮上したからだ。 最も印象的なことは 東田さんは 幼い頃に 自身を人間ではなく自然の一部だと思っていたこと。 壊れたロボットを操縦しているような感覚でいること。 それは私にはとてもショッキングだった。 そうとは知らずに彼らと接してきた自分。 それと同時に 自分の見

          自分の見ている世界は真実とは限らない、真実ではなくてもいい

          続・風になれ/ダンスする episode2

          前述の話から もう少し踏み込んで話せば こうだ。 ダラマン(私の師匠でマリ人、伝統音楽継承者) が側にいたとき 小さな鍵穴の中からマリの風景が見えていた。 自分がなんとかその鍵穴を覗いて マリの風を感じていることで 自分を媒体として みんなにもそれを感じてもらいたい と思っていた。 ところが 師匠ダラマンは 昨年10月 突然母国マリへ帰ってしまい 状況は一変。 私は ある意味では心の拠り所を失ったけれども そのときにスッと 鍵穴を覗くのをやめた。 アフリカの断片を 自分

          続・風になれ/ダンスする episode2

          星の下で

          ただただ 星の下で眠るように 生きよう ワクワクすることは何? 踊る 音楽を聴く 文章を書く 本を読む 美術館に行く 飛行機で旅行に行く かわいい人に会う 好きなものを好きなときに食べて フラッと出かける 誰かといる 1人でいる 淡々と 笑ったり つまらなかったりする日も あっていい それが全てなのだ 深い意味は 特に求めなくてもいい 想像しすぎず 見えてるものだけに惑わされず 思い切り身体を伸ばしたら 研ぎ澄まされた気分になる 確信を掴んだら いくらでも歩ける

          星の下で

          フライデー

          私が今日 あの子に言わないといけないニュースは 明日金曜日だけど 自宅に帰らないということ。 かわいいあの子は カレンダーを指差して 私に言った。 「明日おうちに帰る」って。 そうだね いつもなら金曜の夜は自宅に帰る。 でも明日は帰らない。 ドキドキしながら 私は答えた。 「明日は家に帰らないよ  ここに戻ってきてね」 ガッカリしちゃうかな ルーティーン大事にしてるあの子は 困ってしまうかな って心配した。 ところが あの子はこう言った。 「スパゲティミートソース」

          フライデー

          それは 誰かの心の中に 君が灯したあかりの話 想像してみて 足元にひとつひとつ 等間隔に 淡いあかりが灯って ずっと続いていく景色を それを とても君らしいと僕は思う ただ淡々と 淡々と並ぶその様子 僕もつられて淡々と たどって歩いていくと それは確かな道になっていた そして その道の先の先 はるか彼方に 小さな光が見えて来る 辿り着くべき場所が そこにはきっと あるんだろう 君にも見えてるのかな? 光がここまで細く差し込んで 道標みたいに見えるよ それは この

          クリスマスなんて

          かわいいあの子は カレンダーの12/23を指差して わたしに聞いた。 「明日はなんの日?」 「あのね、クリスマスパーティーだよ」 私がそれを言い終わる前に 堰を切ったように あの子はこう言った ほとんど一息で。 「クリスマス フライドチキン ポテト  コカコーラ  ケーキ  イチゴののったケーキ  明治神宮  はつもうで!」 ストップストップ 最後のはずいぶん 大事なところとばして 行き過ぎちゃった まだクリスマスだよ 落ち着いて 落ち着いて 深呼吸しよう

          クリスマスなんて

          episode3 革命のあと/緘黙症だった子どもの私

          今から2〜3年ほど前 私は 自分以外の「話せない子」に 生まれて初めて遭遇した。 そういえば 私の"話せないちゃん"は? というと 本人からも すっかり忘れ去られていたのだ。 そのとき 25歳くらいだった"話せない"彼女は (私よりひと回りほど若い) 私と一緒に働いてた。 7歳のときの私ととても似ていた。 違うのは 家族も先生もフォローしてはくれないこと。 仕事をしなければならないということ。 共通点は 挨拶ができなくて 誰かに話しかけることもできないこと。 誰かに何か

          episode3 革命のあと/緘黙症だった子どもの私

          episode2 強烈先生、現る/緘黙症だった子どもの私

          あの革命のあとも 人と喋れないことが まだ私の人生を覆っていた。 重たい霧のように 何枚も重なった薄いベールのように。 そんな私に 第2の革命は訪れた。 それは小学校3年生のときの 担任の先生。 先生の決まりはこう。 ・何か言われたら必ず大きな声で「ハイ」と返事 ・文末には「です」をつける (場合によっては"です"にはならないけど、3年生にわかりやすいようにそう言ったのだろう) ・先生に質問されたら誰よりも先に手をあげる ・たくさん発言する子がいい生徒 (間違えてもいい

          episode2 強烈先生、現る/緘黙症だった子どもの私

          episode1 お母さん革命/ 緘黙症だった子どもの私

          物心ついたときには 既にこう思っていた。 "自分なんかがおしゃべりをしても 誰も面白くない" と。 思い出せる1番昔の感情がそれなので それ以前に一体何があって そう思うに至ったのかは謎。 とにかく強くそう信じていた。 原因は本当にわからない。 だって 私の家族はとても私に優しかったから。 誰もそんなことを言うはずもない そう思わせるようなことをするはずもない 優しい人たち。 そういうわけで 母親以外の誰かと話をすることが 全然出来なかった。 いつも話そうとすると 冒

          episode1 お母さん革命/ 緘黙症だった子どもの私

          ヴァージニアの月

          https://youtu.be/fGSzPwUXees 1番好きな星さ、天国みたいな そこにいて ソフトでブルーなヴァージニアムーン 今夜待ってるよ 今日を2つにわけるような 甘い誘いに呼ばれて 僕は今こうしていたい ヴァージニアムーン 今夜待ってるよ その光が僕らの影をうつす 朝の風が吹き抜け 明日が君を連れてったら 僕は言う、グッドナイト その魅力は秘密なんだ 小さなささやき声で 君を呼ぶよ、聞こえるかな? ヴァージニアムーン 今夜待ってるよ その光が僕らの影

          ヴァージニアの月